働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
出産前に押さえておきたい「産休」の取得方法と仕組み
更新日:2021年5月31日
仕事を続けながら取得できる「産休」には、産前休暇と産後休暇があります。それぞれの取得方法や休暇期間、さらには夫の扶養に入るべきか否かなど、気になるお金の知識についても解説します。
労働基準法で定められている「産休」とは
産休には、出産前の産前休暇と出産後の産後休暇があり、働く女性の母体を保護するため労働基準法第65条でそれぞれの基準が定められています。
産前休暇と産後休暇
【産前休暇とは】
出産前の産前休暇は事業主に申請して取得します。原則として、出産予定日の6週間前(42日間)から、双子以上の場合は14週間前(98日間)から取得可能です。本人の申請によって取得する休暇なので、希望すれば出産直前まで働くことも可能です。出産日が予定日より早まった場合、産前休暇は短くなりますが、予定日より遅くなった場合でも出産日までは産前休暇に含まれます。
【産後休暇とは】
産後休暇は出産翌日から8週間取得できます。出産の翌日から適用されるため、予定日より遅れた場合でも、出産日を基準として同じ期間の取得が可能です。原則として出産翌日から8週間は就業が禁止されていますが、産後6週間を経過したあと本人が希望し、医師が認めれば就業できます。
産前・産後休暇の期間とその後の30日間、事業主による解雇は労働基準法第19条で禁止されています。
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、休めます。(労働基準法第65条)
出産の翌日から8週間は、働くことが禁止されています。ただし産後6週間を過ぎて、本人が希望し、医師も認めた場合は職場復帰できます。(労働基準法第65条)
- 出産予定日が1週間延びてしまいました。
産前休業期間の6週間を超えて休んだらどうなるの? - 予定日よりも遅れて出産した場合、予定日から出産当日の間も産前休業期間に含まれます。実際の出産が予定日より遅れて産前休業が延びたとしても、産後休業は8週間取ることができます。
産休と育休は続けて取得できる?
育休を取得できる期間は、原則として子どもが1歳になるまでの間で、会社に申し出れば産後休暇取得後にそのまま続けて育休を取得できます。ただし、期間契約の場合には育休を取得するためにいくつか条件があります。
<育休取得の条件>
期間契約の場合において、
・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
・子どもが1歳6カ月になる日まで(育休期間を1歳6カ月から2歳まで再延長する場合は、2歳になる日まで)に労働契約の期間が満了しており、かつ、雇用契約が更新されないことが明らかでない
また、以下の場合は育休を取得できません。
※対象外とする労使協定がある場合に限る
<育休を取得できないケース>
・雇用された期間が1年未満
・申し出の日から1年以内に雇用関係が終了する
・週の所定労働日数が2日以下
【育休の延長】
保育園が見つからないなど特別な事情がある場合、育休を延長できます。延長期間は、子どもが1歳6カ月になるまで。それでも難しい場合は、2歳になるまで再延長が可能です。
【さまざまな育休制度】
育休は男女関係なく取得できます。「パパ・ママ育休プラス」「パパ休暇」などの制度もあるので、条件を確認して、出産前に夫婦で話し合っておきましょう。
産休を取得するまでの流れ
妊娠中は、身体の変化に伴って心身ともにストレスがたまりやすくなります。安心して出産を迎えられるように、産休を取得するまでにいつ、何をすればよいか確認し、準備しておきましょう。
【妊娠が判明したら、会社に早めに報告をする】
産休を取得する際、会社は妊婦に対して特別な配慮や措置を講じる必要があります。妊娠が分かり次第、すみやかに会社に報告しましょう。上司や担当者に報告する前に就業規則を確認しておくと、スムーズに話を進められるでしょう。
妊婦に禁止されている業務に携わっている場合の軽易業務への転換はもちろん、妊婦検査時間の確保、医師の指導を受けた際に可能となる時差出勤など、疑問や不安などはしっかりと確認して解消しておきましょう。「出産後も仕事を続ける」という意思をしっかり伝えることも重要です。
【休暇取得の申請をする】
出産予定日をもとに会社に申請をします。産休申請の書式が用意されている会社もあるので、確認しましょう。
育休取得の際は、基本的に育休開始の1カ月前まで(出産が早まった場合は育休開始の1週間前まで)に「育児休業申出書」の提出が必要となります。必ず期限までに提出しましょう。
産休中に給与はもらえるの?
労働基準法では、産休・育休期間中に事業者が給料を支払う義務はなく、一般的に一部の企業を除いて給料は支払われません。ただし、産休開始の翌日から2年以内に申請すれば、産休前の給料の3分の2※にあたる出産手当金を受け取れます。
※支給開始日以前の12カ月間の標準報酬月額平均÷30日×3分の2
社会保険料など税金の支払いはどうなる?
健康保険料、厚生年金保険料は「産前産後休業取得者申出書」の提出※により免除されます。また、産休中に給与の支給がない場合には雇用保険と所得税は発生しませんが、前年1年間の所得に対して発生する住民税の支払いは必要となります。
住民税の納付方法は、自分で行うほか、産休中の給与・ボーナスからの天引き、会社に立て替えてもらい後払いするなど会社によって異なるため、産休前に確認しておきましょう。
※育休中は「育児休業取得者申出書」を提出
産休中は夫の扶養に入るべき?
産休の取得は復職が前提のため、社会保険上は夫の扶養に入る必要はありません。しかし、税金の計算については、配偶者控除等を利用することで家庭全体の負担を抑えられる可能性があります。
控除の目安となるのは、産休前の個人所得と、配偶者控除の対象となる金額です。妻の年間合計所得が38万円以下(令和2年以降は48万円以下)の場合は配偶者控除の対象となり、妻の年間合計所得が38万円から123万円(令和2年以降は48万円超、133万円以下)の場合は配偶者特別控除の対象となります。
出産時期に左右されますが、産休と育休を続けて取得した場合の年収を計算し、個人所得が配偶者控除の範囲内であれば、夫の税金を減らすことが可能です。
また、上記に加えて出産一時金の制度もあるので、ぜひ活用しましょう。
転職活動中に妊娠したら
転職活動中に妊娠が判明すると、うれしい反面、転職活動を続けるべきか悩むことも。自身のキャリアや体調、転職先の企業のことも考えて慎重に行動しましょう。
転職活動は続けるべき?
まだ内定をもらっていない場合、一時中断をおすすめします。担当業務の変更、仕事を覚えるまでの教育スケジュールの変更など会社の負担が大きくなることも考慮しましょう。
内定をもらっている場合は、すみやかに会社に報告しましょう。男女雇用機会均等法では、妊娠を理由に解雇などの不利益な扱いをしてはならないと定められていますので、会社の人事担当者と、産休・育休後の復職時の業務内容についてしっかりと話し合いましょう。
入社直後に産休の取得は可能?
転職直後でも産休の取得は可能です。ただし、会社によっては労使協定により入社して1年を経過しないと育休を取得できない場合もあるため、面接時に確認しておきましょう。
産前休暇、産後休暇、育休にはそれぞれ条件や期間が定められています。仕事を続けながら健やかに妊娠生活を送るためにも、妊娠が分かったらすみやかに会社に報告し、今後の予定を話し合いましょう。休暇の日数だけでなく、給付金に必要な申請書類の確認も忘れずに。
転職活動中に妊娠が判明した場合は、体調を考慮しながら無理のない範囲で転職活動を行ってください。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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