働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
育児休業給付金の支給条件や計算方法を知って育休期間をより安心に!
更新日:2022年1月31日
妊娠・出産後も仕事と育児を両立しながら共働きをする夫婦が増えています。今回は、出産後も仕事を辞めずに育児休業を取得する予定の人に向けて、育児休業給付金で押さえておきたい支給条件や支給時期、受取金額の計算方法などを詳しく解説します。
育休中の夫婦を助ける「育児休業給付金」
2017年の育児・介護休業法の改正で育児休業が2歳まで延長できるようになりました。しかし、この影響で保育所に子どもを預けづらくなったなど、かえって生活の不安が大きくなったという人もいます。そこで、自宅で育児をする際などに知っておきたいのが育児休業給付金です。
育児休業中の共働き夫婦にとって、育児休業給付金は家計の収入をサポートしてくれる心強い支援制度です。給付金をもらうためにはいくつかの条件があり、申請には手続きが必要です。
育児休業給付金とは
育児休業給付金は、原則1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合に支給される雇用保険の制度で、働くことができない社員に対して、加入している雇用保険から非課税の給付金が支給されます。この給付金で育児休業の取得が容易になり、従業員が収入面での不安を抱えず子育てに専念できるようになることが期待されています。
また、休業中の従業員が社会保険に加入している場合は、事業主も被保険者も育児休業期間中の社会保険料の負担が免除される仕組みになっています。
育児休業給付金をもらうための条件
育児休業給付金をもらうためには、雇用保険に加入していることが条件になります。これは給付金が雇用保険から支給されるためで、日雇い労働者や会社に雇われていない自営業者など雇用保険に加入していない場合は受給対象外となります。
また、「育児休業開始前の2年間に11日以上働いた月が12カ月以上あること※」という条件もあります。正社員は多くの場合で支給対象となりますが、契約社員やパートタイム勤務で就業日数が条件に満たない場合は受給できないケースがあるので、注意が必要です。
なお、育児休業は女性だけではなく男性も取得できるので、男性が申請して給付金を受け取ることもできます。
※これを満たさず、かつ育児休業の開始日が2020年8月1日以降の場合は、育児休業の開始日から1カ月ごとに区切った完全月で働いた時間が80時間以上の月を1カ月として取り扱う
育児休業給付金はいつ受け取れる?
育児休業給付金の支給は原則2カ月に1回で、支給決定日から約1週間で指定の口座に振り込まれます。
また、育児休業の開始から初回支給日まではおおよそ3カ月を想定しておく必要があります。出産翌日から8週間は産後休業期間で育児休業給付金の支給対象外になるほか、申請書類を提出後も、所轄のハローワークで賃金台帳や出勤簿などをもとに休業中の就業状況などの審査があり、この調査に15日前後を要するからです。
2回目以降も申請は2カ月ごとに1回で、2カ月間の育児休業期間が経過したあとにあらためて申請し、同様の手続きを経て支給される仕組みになっています。なお、育児休業給付金は育児休業期間にのみ支払われるものです。通常、産前産後休業とともに育児休業が取得される場合が多いですが、産前産後休業期間は支給の対象ではないので注意が必要です。
支給期間や支給額などについては、申請後に届く「育児休業給付金支給決定通知書」で具体的な情報が確認できますので、目を通すようにしてください。
受け取りに必要な申請書類
育児休業給付金の申請は、原則として勤務先を通して行います。勤務先に必要な書類を提出し、その事業所を管轄するハローワークで審査が行われてから本人に支給される流れとなります。
初回の申請には以下の書類が必要です。
- ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- ・育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 (以下「支給申請書」)
- ・賃金台帳、労働者名簿、出勤簿またはタイムカードなど
- ・母子手帳などの育児を行っている事実を確認できる書類
- ・振込先口座の通帳の写し(支給申請書に金融機関の確認印を受けた場合は不要)
このうち自身で用意するのは母子手帳と振込先口座の通帳の写しで、必要事項の記入が必要な支給申請書は会社から渡されます。そのほか賃金台帳なども会社が用意し、作成した申請書類とあわせ、ほとんどの場合で事業主からハローワークに提出されます。
また、支給申請書にはマイナンバー(個人番号)の記入欄があるので、マイナンバーカードを持っていない人は、あらかじめ取得手続きを済ませておくか、個人番号通知書またはマイナンバー付きの住民票を用意しておきましょう。
給付期間の延長条件
育児休業給付金の支給は原則1歳になるまでですが、以下に挙げた理由で育休を延長する場合、支給期間を2歳まで延長できます。
1歳から1歳6カ月まで延長する場合には1歳の誕生日の前日、1歳6カ月から最大2歳まで延長する場合には1歳6カ月になる日に本人あるいは配偶者が育児休業中である上で、
- ・保育所などへの入所を申請しているものの入所できない※
- ・育児予定だった配偶者が、死亡や病気、離婚などによって育児が難しくなった
- ・6週間以内(多胎妊娠の場合には14週間以内)に出産を予定している、または産後8週間を経過していない
※入所希望日は1歳の誕生日以前(1歳6カ月から最大2歳へ延長する場合は1歳6カ月以前)であることが必要
のいずれかを満たすことが給付期間の延長条件となります。なお、1歳から1歳6カ月まで、1歳6カ月から最大2歳までの延長が可能ですが、1歳の時点で2歳まで一気に延長することはできません。
パパ・ママ育休プラス制度での延長条件
以下のリンク記事にある「パパ・ママ育休プラス」制度を利用して夫婦で育休を取得するケースでは、下記の条件を満たすと支給期間を1歳2カ月まで延長できます。
- ・子どもの1歳の誕生日前日までに配偶者が育児休業を取得している
- ・子どもの1歳の誕生日より前に本人の育児休業開始予定日がある
- ・配偶者の育児休業の初日以降に本人の育児休業開始予定日がある
が給付期間の延長条件で、1歳から1歳6カ月まで、1歳6カ月から最大2歳までの延長のときのように「保育所への入所ができない」という条件を満たす必要はありません。
育児休業給付金の計算方法
1カ月当たりの育児休業給付金の支給額は「休業開始時賃金日額※1×支給日数※2の67%」ですが、育児休業の開始から6カ月を超えると、「休業開始時賃金日額×支給日数の50%」になります。
※1:育児休業開始前(産休を取った場合は産休開始前)6カ月間の賃金を180で割った額
※2:通常は30日
具体的な支給額を例に、算出方法を見てみましょう。
【育児休業開始前6カ月間の賃金月額が18万円だった場合】
休業開始時賃金日額:180,000円×6カ月÷180=6,000円
6,000円×30日×0.67=120,600円
上記の計算により、1カ月の支給額は12万600円になります。
また、6カ月経過後は、
6,000円×30日×0.5=90,000円
となり、1カ月当たり9万円が支給されます。
育児休業中は、基本的に給与は支給されませんが、会社経由で手続きすると雇用保険から給付金が支給(原則として子どもの1歳の誕生日の前々日まで)されます。金額は、育児休業開始から180日目までは休業開始時の賃金の67%、181日目以降は50%です。ただし、どんなに給与の高い方でも、1カ月の支給額は180日目までは305,721円、181日目以降は228,150円までとなります※。
なお、基準となる賃金月額の下限額は77,220円で、これを満たさない場合は下限額まで引き上げられます。つまり、180日目までの支給額の下限は51,737円、181日目以降は38,610円になります※。
※いずれも2020年8月1日現在
また2014年9月までは、支給単位期間(育児休業を開始してから1カ月)の間に11日以上就業した場合は支給の対象外となり、給付金を受け取ることができませんでしたが、現在は支給単位期間中に10日を超えて就業した場合でも、合計の就業時間が80時間以下の場合は給付金が支給されることになっています。
育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
また会社を通じて申請すれば育児休業期間中の社会保険料が免除になります。対象期間は「育児休業を開始した月」から、「育休終了日の翌日の前月」まで。例えば3月23日まで育休を取っている場合、2月までの社会保険料が免除になります。育休終了日が3月31日の場合は、3月までが免除期間となります。
転職・退職した場合、育児休業給付金はどうなる?
給付金の支給単位期間は1カ月ごとですが、やむを得ず退職することになった場合、退職日によって受け取れる給付金額が変わるので注意が必要です。
基本的には「退職日の支給単位期間の直前の期間」までが支給の対象になりますが、退職日が支給単位期間の末日の場合、「退職日を含む支給単位期間」までが支給対象に含まれます。
具体例で給付期間の違いを見てみましょう。
<育児休業開始日が8月10日の社員が10月に退職することになった場合>
【10月8日に退職する場合】
支給単位期間の「8/10~9/9」と「9/10~10/9」の2カ月分のうち「8/10~9/9」が直前の期間になるため、1カ月分の支給のみとなります。
【10月9日に退職する場合】
退職日が支給単位期間の末日のため、「8/10~9/9」と「9/10~10/9」の2カ月分が支給されます。
転職した場合
育児休業給付金の受給条件は、育児休業までの2年間に12カ月以上雇用保険の被保険者期間があることです。同一の就業先である必要はないため、前職でも転職先でも雇用保険に加入していれば期間を合算でき、転職しても申請すれば給付金を受け取れます。ただし、前職を辞めてから1年以内に転職していること、失業給付受給者として認定されていないことが条件となります。
なお、転職活動で雇用保険の加入に空白期間があると対象外になる可能性があるので、確認が必要です。
また、育児休業給付金の受給中に転職した場合、支給単位期間内に転職先で休業開始前の給与80%以上の賃金を受け取ったり10日以上出勤して80時間以上働いたりすると、給付金を受け取れなくなります。
退職した場合
育児休業給付金は、職場復帰を前提に働けない期間の家計をサポートするための制度で、働き続けるための支援策です。そのため、育児休業の当初から退職を予定していた場合には、給付金の受給ができません。
一方、復帰するつもりで育児休業に入ったものの家庭の事情などで退職する場合は、前述のとおり退職日から支給単位期間を算出し、適用期間分の給付金を受け取れます。また、すでに受給した育児休業給付を返金する必要はありません。
休業中の収入をサポートし、安心して子育てに専念するために心強い育児休業給付金ですが、申請には手続きが必要で初回受給までには時間もかかるので、出産までにしっかりと制度について理解し、スムーズに申請が行えるよう準備しておきましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)20の質問に回答するだけ
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