働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
時短勤務はいつまで可能?育休明けも制度を使いこなそう!
更新日:2024年4月26日
フルタイムで働きながらの子育ては、時間の余裕だけでなく心の余裕もなくなりがちです。そんなとき、短時間勤務制度(時短勤務)は、仕事と育児を両立させたい産休・育休明けの人の強い味方になります。そこで今回は、時短勤務制度の内容やいつまでが対象になるかといった適用条件、メリットやデメリットなどについて詳しく紹介します。
時短勤務で育児と仕事が両立しやすくなる
短時間勤務制度(以下「時短勤務制度」)は、育児や家族の介護を理由に退職する人を減らし、労働人口の減少を食い止めるために育児・介護休業法により制定された制度です。
妊娠・出産しても仕事を続けていくため、産休・育休を終えて職場に復帰する際に、時短勤務制度を利用することができます。
時短勤務制度を利用すると仕事と育児のバランスが取りやすくなり、どちらかをあきらめることなく生活基盤を整えやすくなるでしょう。
勤務時間とお子さんと過ごす時間の兼ね合いが難しいと悩んでいる人にとって、時短勤務制度は欠かせない存在といえます。
時短勤務はいつまでが対象?
時短勤務制度が利用できるのはいつまでなのか。具体的に見ていきましょう(※1)。
基本は子どもが3歳未満の人が対象
時短勤務制度の対象となるのは、3歳未満の子どもを養育している男女の従業員です。子どもが3歳以上になると法律が定めた対象期間からは外れてしまいます。
小学校入学まで可能な場合もある
法律では、子どもが小学校に入学するまで時短勤務を続けられるよう努力することが企業に義務づけられているため、会社によっては小学校入学前まで続けられます。
ただし、これはあくまで努力義務で、「企業が自主的に定めるもの」という位置づけです。
勤務先の就業規則に3歳以上の子どもを持つ従業員の時短勤務制度が規定されていなければ、子どもが3歳の誕生日を迎えるのと同時にフルタイム勤務に復帰しなければなりません。
就業規則に規定されていなかったとしても、上司や職場の理解を得て3歳以降も時短勤務を続けられるケースがあります。
まずは勤め先の就業規則を確認し、もし3歳以降の時短勤務に関する規定がないのであれば、上司や担当部署に相談してみるとよいでしょう。
また、3歳以降の時短勤務ができない会社に勤めている人の中には、将来的なフルタイムへの復帰を念頭に置いて「短時間正社員」になる人もいます。
「短時間正社員」が気になる人は、以下のリンク先をご覧ください。
3歳未満の子どもを育てる会社員は男女を問わず以下の制度を利用できます。
- 原則、1日6時間までの短時間勤務制度(時短勤務制度)
- 所定外労働(残業)の免除
なお、所定外労働の免除は、勤務先の就業規則に定められていなかったとしても、請求すれば利用できる制度です。
このほかに、以下の制度を勤務先が導入している場合は利用できます。
- 始業・終業時間の繰り上げ、繰り下げ
- フレックスタイム制
- 託児施設の設置運営、これに準ずる待遇の提供(例:ベビーシッターの費用を勤務先が負担する)
時短勤務制度の対象となる条件
時短勤務制度の対象となるのは、以下の条件を満たしている人です(※1)。
ただし、これらの条件をすべて満たしていても、就業規則によっては対象から外れることもあります。事前によく就業規則を確認しておきましょう。
【養育している子どもの年齢が3歳未満】
前述のとおり、時短勤務は3歳未満の子どもを養育している人が対象となります。
子どもの人数は関係なく、きょうだいのうち一人でも3歳未満の子どもがいる場合には時短勤務制度の申請ができます。
【本来の勤務時間が6時間以下ではない】
労働基準法で定められている勤務時間は1日8時間まで。時短勤務制度は、これを1日6時間に短縮する制度です。
そのため、時短勤務を利用する前の勤務時間が1日6時間以下の場合は対象外となります。
【日雇いの契約ではない】
日雇い契約は継続雇用にならないため、時短勤務制度の対象になりません。
日雇いでなければ、契約社員・派遣社員・アルバイト・パートタイマーなどの非正規社員でも、時短勤務制度を利用できます。
【適用期間内に育児休業を取得していない】
育児休業中は時短勤務制度の対象から外れます。
時短勤務制度が適用されるのは子どもが3歳になるまでですが、この期間内に育児休業と時短勤務は同時に利用できません。
時短勤務制度の対象から外れるケース
企業には、時短勤務制度を導入するよう義務づけられています。したがって、雇用している従業員から勤務時間の短縮を申し入れられた場合、企業は拒否できません。
しかし、前述の条件を満たしていたとしても、以下のケースでは労使協定により対象外になることがあります。
【雇用期間が1年未満】
雇用期間が1年未満の人は、時短勤務制度の対象にならないことがあります。
これは契約社員・派遣社員・アルバイト・パートタイマーなど非正規社員の場合も同様です。
【勤務日数が週2日以下】
勤務日数が週2日以下の場合、労働基準法で定められた労働時間(1日8時間)で計算しても1週間で最大16時間です。
これを週5日勤務に換算すると、1日当たりの労働時間は約3時間。前述の「本来の勤務時間が6時間以下ではない」という条件から外れてしまいます。
そのため、時短勤務制度の対象にならないことがあります。
【業務内容が時短勤務に適していない】
会社によっては、時短勤務にすると業務の遂行に支障が出る職種については対象外となるケースがあります。
ただ、時短勤務制度の対象からは外れても、相談すれば時短勤務に代わる制度を利用できる可能性もあります。
まずは対象となるかどうかを確かめて、対象から外れる場合には勤務先と相談するようにしましょう。
時短勤務のメリットと留意点
時短勤務はフルタイムと違う勤務形態になるため、得られるメリットとデメリットをよく比較して検討しなければなりません。
実際に時短勤務を利用した場合にどうなるのか、具体的な内容を紹介します。
メリット
時短勤務を利用して働き続けることで、以下のようなメリットが得られます。
- 時間に余裕が生まれるので、育児と仕事を両立しやすい
- 給与が下がっても、特例により将来の年金受給額が減らない(※2)
時短勤務で得られるメリットは「生活の充実」ともいえるでしょう。精神的に充実した生活を送るため、多くの人が時短勤務制度を利用しています。
留意点
時短勤務の利用で得られるものが多い一方、知っておいたほうがいいこともあります。
例えば、実際に時短勤務を利用した人の中には、以下のような悩みを抱えている人も少なくありません。
- 給料やボーナスが減った
- 時短勤務を利用したことで職場の人間関係がギクシャクした
- 勤務時間が短いため、思ったように仕事がはかどらなかった
こうした点を考慮して、仕事と育児の両立がしやすい職場環境がある企業に転職する人もいます。
時短勤務制度は従業員の権利ですが、このような影響も把握しておきましょう。
時短勤務の申請方法
時短勤務制度を利用するときは、勤務先に申し出て申請書を取得しなければなりません。
ただし、いきなり時短勤務を申し出ると会社側の準備が間に合わないこともあるので、上司や人事部と事前に話し合っておいたほうが安心です。
少なくとも「いつから始めるか」「いつまで続けるか」「時短勤務中の具体的な働き方」の3点は話し合ってください。
時短勤務制度の相談は、遅くとも希望時期の1~2カ月前には始めるようにしましょう。
申請書は各企業の就業規則にあわせて作成されるので、勤務先の人事部から受け取ります。
時短勤務を申請する理由や期間などを記載し、ほかに必要書類がある場合は添付して提出することになります。
時短勤務を申請して不当な扱いを受けたら
時短勤務制度を申請した人に不利益が起こらないよう、企業には「不利益な取り扱いの禁止」が定められています(※1)。
例えば、時短勤務の申請を理由にした解雇や極端な労働時間の短縮、そのほかのハラスメント行為などはすべて違法行為です。
万が一、時短勤務制度を申請したことで不当な扱いを受けたら、最寄りの労働局に相談しましょう。
時短勤務制度の使用例
実際に時短勤務制度はどのように利用されているのでしょうか。使用例を紹介します。
【10時から17時勤務のスタンダード型】
保育園の送り迎えを考えて、朝と夕方の勤務時間を減らす方法です。
保育園は送り迎えの時間が決まっているので、そのスケジュールにあわせて勤務時間を変えています。
【週3日は8時間勤務、残り2日を休みにするメリハリ型】
接客業や営業職の場合、都合によりどうしてもフルタイム勤務の必要が生じる場合があります。
このようなケースでは毎日時短勤務をするのではなく、フルタイム出勤日を設け、残りの日を休みにする人もいます。
【リモートワークを併用したフレキシブル型】
リモートワークと時短勤務を併用する人もいます。
例えば、毎日4時間だけ出勤して業務の打ち合わせをしたあと、自宅に戻って仕事を進めるというパターンです。
リモートワークができるかは業務内容や勤務先の方針にもよりますが、パソコン作業がメインの業務であれば、上司に相談してみるのもよいでしょう。
時短勤務制度の導入が企業に義務化されて以降、多くの人が利用し、仕事と育児の二者択一ではないライフプランを築いてきました。
仕事と育児の両立に不安を抱える人にとって、時短勤務制度は大きな手助けになります。自分にとって最適なワーク・ライフ・バランスを整えて、仕事も育児も充実させていきましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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