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働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度

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育児と仕事の両立:

時短勤務で給与は変わる? 残業代や年金の算出方法も詳しく解説

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更新日:2023年3月22日

妊娠・出産後も仕事を続ける女性が増加し、働き方が多様化しています。中でも時短勤務は、育児と仕事の両立や負担の軽減などメリットが大きい半面、基本給や残業代などの収入が減ることで家計への影響が発生します。そこで今回は、時短勤務で給与がどのように変わるのかなど、金銭面に関して詳しく解説します。

時短勤務とは?

時短勤務は、2009年の育児・介護休業法の改正により定められた「育児短時間勤務制度」のことで、以下のように定義されています。

「3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならない」(厚生労働省 育児・介護休業制度ガイドブック

この制度は、企業規模にかかわらず事業主に導入が義務づけられており、対象となる条件を満たせば、子どもが3歳の誕生日を迎える前日まで利用が可能です。これまで保育園のお迎えなど時間的な制限があり仕事の継続が難しかった会社員も、時短勤務によって子育てとの両立ができるようになりました。

また、体力面での負担が軽減され、子どもと過ごす時間が長くとれることで親子関係を育む機会が以前より確保できるようになるなど、子育て中の会社員にとって時短勤務には大きなメリットがあります。

時短勤務が注目されている背景

近年、時短勤務は注目を集めており、その背景には少子高齢化による労働人口の減少があります。優秀な人材を確保するためには、会社としては働きやすい環境を整えることが不可欠です。出産・育児といったライフイベント時でも、時短勤務であれば家庭と仕事を両立できる可能性が高まります。また、2021年に厚生労働省が育児・介護休業法を大きく改正したことも、理由のひとつとして挙げられるでしょう。

時短勤務の対象となるのは?

「育児短時間勤務制度」の対象となるのは、3歳未満の子どもを養育している労働者です。パートやアルバイトなど雇用期間の定めがある方も一定の要件を満たせば利用できます。

時短勤務を利用できない人

様々な要件により「育児短時間勤務制度」が適用外となる場合もあります。

<育児短時間勤務制度の対象外となる要件>
・養育している子どもが3歳以上である。
・1日の所定労働時間が6時間未満。
・時短勤務制度の適用期間に、産前・産後休業、育児休業、産後パパ育休または介護休業を受けている。
・日々雇用される労働者である。
・労使協定による適用除外とされている。

労使協定の適用除外になるのは「継続して雇用された期間が1年に満たない」ことや「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者である」などの条件が定められています。制度を利用できるかわからない場合は勤め先の会社に確認してみるとよいでしょう。

時短勤務とフレックスタイム制の違い

フレックスタイム制度と、「育児短時間勤務制度」による時短勤務制度とは似ているようで大きな違いがあります。

フレックスタイム制度は勤務時間を自分で決められる制度のことです。例えば、1週間の労働がトータル30時間と定められている場合、月曜日は5時間、火曜日は7時間などと勤務時間を変えられます。始業や終業時刻は自分で決められますが、出勤必須となる時間帯「コアタイム」の時間帯が設けられている場合もあるでしょう。

一方、「育児短時間勤務制度」による時短勤務では、1日の勤務時間は固定になっています。会社にもよりますが、基本的には勤務時間は1日6時間です。

フレックスタイム制度と時短勤務は、勤め先の会社がどちらも導入しているなら併用することもできます。

時短勤務の給与の計算方法

時短勤務で給料は減る?

時短勤務の選択で労働時間が短くなる分、気になるのが受け取れる給与の変化など金銭的な面です。実際にどのくらい変わるのでしょうか。

時短勤務で給与は減る?

給与支払いはノーワーク・ノーペイが原則です。一般的に、労働時間に応じて給与が支払われる会社では、時短分の給与は減給されることが多くなっています。一方で歩合制や裁量労働制を採用している会社では、労働時間ではなく出来高などによって給与が決定されるため、時短勤務の場合でも給与が変わらない場合もあります。

時短勤務そのものは法律上の制度として義務づけられていますが、給与の減額等についてはそれぞれの会社の就業規則により定められているため、対応は異なります。例えば、出産前まで1日8時間フルタイムで働いていた社員が制度を利用して6時間の勤務となった場合、1日当たり2時間分の労働時間が短縮され、基本給は出産前の75%になります。具体的にどのくらい減額になるかはこちらの計算式で算出することができます。

<時短勤務による給与変化の試算式>
基本給×実労働時間÷所定労働時間=時短勤務時の給与額

それでは、実際に計算をしてみましょう。

<条件例>
基本給25万円でフルタイム勤務をしていた社員(手当無し)が、1日6時間の時短勤務に変更して、月に20日出勤した場合(会社の所定労働時間は8時間、所定労働日数は20日)

・時短勤務での1日の労働時間:6時間
・時短勤務での出勤日数:20日
 →社員の実労働時間は6時間×20日=120時間
・1日の会社の所定労働時間: 8時間
・月当たりの所定労働日数:20日
 →会社の所定労働時間は8時間×20日=160時間

計算式を当てはめると、
・基本給(250,000円)×実労働時間(120時間)÷所定労働時間(160時間)=187,500円

計算してみると、基本給は時短勤務前と比べておおよそ25%カットになることがわかります。

この金額は時短勤務の基本給で、ここから所得税や住民税、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険料)を控除された額が支払額となります。

将来受け取れる年金に影響はある?

時短勤務を選択した場合、給与が減給されるため社会保険料の等級も下がり、月々に天引きされる社会保険料は安くなります。

ここで心配なのが、将来受け取れる年金への影響です。通常、社会保険料は基本給に応じて変動するため、社会保険料が減額されると将来受け取れる年金も少なくなってしまいます。

この影響を解消するために「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」と呼ばれる年金の特例措置制度が設けられており、子どもが3歳までの間に時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合でも、出産前の標準報酬月額にそって年金額を計算できます。そのため、将来受け取れる厚生年金額は影響を受けません。
この措置は会社を経由して「(厚生年金保険) 養育期間標準報酬月額特例申出書」という書類を提出することで適用されるので、復職までに人事部などに確認しておきましょう。

時短勤務などで給与が減っても、将来受け取れる年金額をキープ

育休明けのママの場合、時短勤務や残業できないなどの理由で、出産前よりも給与が下がるケースが多くあります。給与が下がった分だけ天引きされる健康保険料・厚生年金保険料も下がりますが、その分将来もらえる年金も低額になってしまいます。
このように子育てによる将来の年金額低下を防止するため、2005年4月から始まったのが「3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」です(厚生年金保険法26条)。子どもが3歳未満の間だけ、給与が下がる前の月収を使って年金額を計算するという特例措置です。

しかも、天引きされる保険料の計算には下がった後の月収が使われます。つまり、もともとは月収30万円だった方が、時短勤務のため給与が下がって月収が26万円になった場合、特例措置の手続きをすることで、将来の年金額計算には30万円が使われますが、給与から天引きされる保険料は26万円に料率をかけた金額になります。

同様に、短時間勤務制度も、1日の所定労働時間が6時間以下である場合は利用の対象外となるほか、労使協定によって「勤続1年未満の労働者」「週の所定労働日数が2日以下の労働者」を対象外とすることも認められています(育児・介護休業法第23条第1項)。これから転職を目指す方や、育児支援制度の利用を考えている方は、その会社の制度運用がどのような状況にあるのかを確認しましょう。

こんなときはどうする?
  • 短時間勤務制度を利用すると、その間の給与はどうなるの?
  • 短時間勤務利用時の給与については、勤務先により異なります。就業規則を確認しましょう。2005年度の厚生労働省調べによると、制度を導入している企業のうち短縮した時間についての賃金を「有給」または、「一部有給」にしているのは計19.3%です。

時短勤務になると給与の手取り金額はさらに少なくなることも

前述した計算式で基本給の減額が25%程度であっても、実際に受け取る手取り金額はそこからさらに少なくなります。その理由としては次のようなものが挙げられます。

残業代などの手当がなくなる

時短勤務中は原則として残業が制限されるため残業代が0円になります。また、管理職などの役職に就いていた場合は、職責が変わるので役職手当がなくなったり減給されたりすることもあるので注意しましょう。

時短勤務前の社会保険料が適用されている

実際の給与は社会保険料などが引かれてから支払われます。社会保険料は前年の4~6月の給与をもとに算出されるため、適切な手続きをしないと時短勤務後も制度利用前の社会保険料が適用されてしまいます。つまり、給与が減っているのに社会保険料は高いままということになってしまうのです。

時短勤務になるとボーナス(賞与)は減ることが多い

大前提として、ボーナスは必ず支払うことが法律で定められているわけではありません。時短勤務時のボーナスの有無、支給額などについては会社によって基準が異なるため、事前に確認しておきましょう。時短勤務時のボーナスは給与額にあわせて減給されることが多く、例えば基本給を基準としている場合、短くなった勤務時間に合わせて支給されます。

時短勤務中に残業は可能?

時短勤務を実施すると、これまでよりさらに限られた時間内で業務をこなさなければならなくなり、日々時間に追われながら仕事を進めることになります。

どうしても業務の都合で残業が必要な場合や慢性的に残業が多い会社ではどのように対応すればよいのか、押さえておきましょう。

時短勤務中なのに残業はできる?

基本的に、時短勤務中でも必要に応じて残業をすることは可能です。育児・介護休業法には「3歳に満たない子を養育する労働者が子を養育するために請求した場合には、事業主は所定労働時間(原則6時間)を超えて労働させてはならない」ことが明記されています。このため、社員から請求がなければ、会社側から社員に対して残業を依頼することも問題はありません。

しかし、社員から時間外労働の免除を会社に請求した場合、残業を会社から指示することはできなくなります。

ただし、この制度はあくまでも「労働者が請求した場合」に限られるため、保育園のお迎えなど時間に制限がある際は、あらかじめ会社に相談・申請しておきましょう。

残業をした場合、給与はどうなる?

時短勤務中に残業をした場合には、勤務した時間分の給与が支払われます。

ここで、残業には「法定外時間外労働」と「法定内時間外労働」の2種類があります。「法定外時間外労働」においては、1日8時間または1週40時間を超えて働くと25%の割増賃金の支払いが労働基準法で義務づけられています。しかし一方の「法定内時間外労働」は、労働時間が8時間以内のケースを指し、賃金の割増については任意となります。

そのため、例えば6時間の時短勤務を実施している社員が1時間だけ残業した場合は「法定内時間外労働」に該当し、会社に割増賃金の支払い義務はなく、多くの場合、時間単価で算出された1時間当たりの賃金が支払われることになります。

時短勤務でも給与を減らさないための方法

家計を考えると、時短勤務となっても一定の収入はキープしたいものです。時短勤務前よりも給与額を減らさないためには次のような方法があります。

社会保険料を見直す

社会保険料は4~6月の給与額をもとに算出され、その年の9月~翌年8月まで同金額が徴収されます。時短勤務でも同様ですが、育児休業から復職後そのまま時短勤務に変えた場合に限り、社会保険料の減額措置があります。この措置を利用するには「育児休業終了時報酬月額変更届」を会社経由で提出する手続きが必要です。手続きを忘れず、速やかに行うようにしましょう。

フレックスタイム制度やリモートワークの活用

フレックスタイム制とは、1カ月の総労働時間をあらかじめ決め、その中で労働者側が働く時間帯を自由に決められる制度のことです。子どもの保育園の送迎や発熱時の対応などで始業時間をずらすことも可能になるため、自分の生活にあわせてうまく活用できるとよいでしょう。

また、リモートワークなら通勤の移動時間もカットできる分、育児をしながらもなるべく勤務時間を減らさず対応することができるでしょう。働きながら子どもの様子を近くで見られる安心感はもちろん、すきま時間に家事もできます。今後、在宅勤務ができる仕事を探してみたいという方は、転職活動の際に最新のクラウドソーシングを使った職種を視野に入れてみたり、その旨を転職エージェントに相談してみたりしましょう。

時短勤務でも給与が減らない会社へ転職する

同じ勤務時間で比べた時、給与額がより高い会社へ転職するという方法もひとつの手です。例えば、成果主義や歩合制を採用している会社なら、仕事量や成果に合わせて給与が支給されるので、1日6時間勤務でも給与減額を避けられるケースがあります。この先の育児を見据え、時短勤務で働くことを前提に転職先を探すのもよいでしょう。

また、有給休暇を時間単位で取得することができる「時間単位休制度」を導入している会社も、育児中の急な要件に対応しやすく魅力的です。

時短勤務は、子育てと仕事を両立させる社員にとって多くのメリットがあります。これを理由に不利益な取り扱いを受けることは法律でも禁止されているため、給与面などで不安に感じることは会社に相談や確認をしながら、時短勤務を上手に活用してみてはいかがでしょうか。


監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)

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