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働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度

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育児と仕事の両立:

時短勤務で給与は変わる? 残業代や年金の算出方法も詳しく解説

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更新日:2023年5月27日

妊娠・出産後も仕事を続ける女性が増え、働き方が多様化しています。中でも時短勤務は、育児と仕事の両立がしやすくなるなどメリットが大きい半面、基本給や残業代などの収入が減ることで家計への影響が発生します。そこで今回は、時短勤務で給与やボーナス、年金がどのように変わるかといった点に関して詳しく解説します。

時短勤務とは?

時短勤務

時短勤務は、2009年の育児・介護休業法の改正により定められた「短時間勤務制度」のことです。

3歳未満の子どもを養育する労働者が利用できる制度で、適用されると1日の所定労働時間が原則として6時間になります(※1)。

企業規模にかかわらず事業主に導入が義務づけられている制度で、対象となる条件を満たせば、子どもが3歳の誕生日を迎える前日まで利用が可能です。

これまで保育園のお迎えなど時間的な制限があり仕事の継続が難しかった会社員も、時短勤務を利用すると子育てと仕事の両立がしやすくなるでしょう。

また、子どもと過ごす時間を取りやすくなるため、親子関係を育む機会が以前より確保しやすくなることも期待できます。

このように、子育て中の会社員にとって時短勤務には大きなメリットがあります。

時短勤務の対象は?

時短勤務の対象となるのは、3歳未満の子どもを養育している労働者です。

パートやアルバイトなど雇用期間の定めがある労働者も一定の要件を満たせば利用できます。

時短勤務を利用できない人

以下のように、さまざまな要件により時短勤務が対象外となる場合もあります。

【時短勤務の対象外となる要件】

  • ・養育している子どもが3歳以上
  • ・1日の所定労働時間が6時間未満
  • ・時短勤務制度の適用期間に、産前・産後休業、育児休業、産後パパ育休または介護休業を取得している
  • ・日々雇用される労働者である
  • ・労使協定による適用除外とされている

労使協定の適用除外となるのは、「継続して雇用された期間が1年に満たない」「1週間の所定労働日数が2日以下」などのケースです。

詳しくは勤務先に確認してみるとよいでしょう。

時短勤務とフレックスタイムの違い

短時間勤務制度と似た制度に「フレックスタイム制度」があります。それぞれどのような制度なのでしょうか。

【フレックスタイム制度】

フレックスタイム制度は、1カ月の総労働時間をあらかじめ決め、その中で労働者側が働く時間帯を自由に決められる制度のことです。

例えば1カ月の労働がトータル160時間と定められている場合、それを守った上で月曜日は5時間、火曜日は7時間などと勤務時間を変えられます。

始業時刻や終業時刻は自分で決められますが、出勤必須となる時間帯「コアタイム」が設けられている場合もあります。

【時短勤務】

短時間勤務制度による時短勤務は、フレックスタイムとは異なり、1日の勤務時間は固定になっています。

会社にもよりますが、基本的に勤務時間は1日6時間です。

フレックスタイム制度と時短勤務は、勤務先がどちらも導入しているのであれば併用できます。

時短勤務が求められる背景

時短勤務が求められている背景には、少子高齢化による労働力人口の減少があります。

企業活動に必要な人材を確保するためには、会社としては働きやすい環境を整えることが不可欠です。

出産・育児といったライフイベントの際、時短勤務であれば家庭と仕事を両立しやすくなるので、人材確保につながると考えられています。

また、2021年に育児・介護休業法が大きく改正されたことも、理由の一つとして挙げられるでしょう。

時短勤務の給与の計算方法

時短勤務で労働時間が短くなるのは喜ばしいことですが、一方で気になるのが給与の変化ではないでしょうか。実際にどのくらい変わるのか説明します。

時短勤務で給与は減る?

時短勤務そのものは法律上の制度として義務づけられていますが、給与の減額については会社ごとの就業規則により定められているため、対応はさまざまです。

ただし、給与の支払いには「ノーワーク・ノーペイ(働かなかった分の賃金は支払う必要がない)」という原則があります。

そのため、労働時間に応じて給与が支払われる会社では、以下のような計算式を用いて時短分の給与が減給されることが多くなっています。

【時短勤務による給与変化の試算式】

時短勤務時の給与額=基本給×実労働時間÷所定労働時間

一方、歩合制や裁量労働制を採用している会社では、労働時間ではなく出来高などによって給与が決まるため、時短勤務でも給与が変わらないことがあります。

具体的な計算例

前述の「労働時間に応じて給与が支払われる会社」で時短勤務をした場合の給与額について、具体的に計算してみましょう。

例えば、1日の所定労働時間が8時間、ひと月当たりの所定労働日数が20日の会社で、基本給25万円でフルタイム勤務(8時間勤務)をしていた社員が、1日6時間の時短勤務に変更して、月に20日出勤した場合の計算は以下のようになります。

  • ・ひと月当たりの実労働時間:6時間×20日=120時間
  • ・ひと月当たりの所定労働時間:8時間×20日=160時間

これを前述の計算式に当てはめると以下のとおりです。

250,000円×120時間÷160時間=187,500円

つまり、時短勤務前と比べて25%減った額になります。

なお、これはあくまで基本給です。実際に受け取る金額は、ここから所得税や住民税、社会保険料を控除された額になります。

将来受け取れる年金に影響はある?

時短勤務を選択した場合、給与が減給されるため社会保険料の等級も下がり、毎月天引きされる社会保険料は安くなります。

ここで心配なのが、将来受け取れる年金への影響ではないでしょうか。

通常、社会保険料は基本給に応じて変動し、社会保険料が減額されると将来受け取れる年金も少なくなります。

この影響を解消するため、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」と呼ばれる年金の特例措置制度が設けられました(※2)。

これは、子どもが3歳になるまでの間に時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合でも、時短勤務前の標準報酬月額に沿って年金額を計算するという措置です。

つまり、時短勤務を選択しても将来受け取れる厚生年金額は変わりません。しかも、天引きされる保険料の計算には時短勤務時の月収が使われます。

例えば、月給30万円だった人が時短勤務で月給26万円になった場合、将来の年金額の計算には30万円が使われ、天引きされる保険料は26万円に料率を掛けた金額になるということです。

この措置は会社を経由して「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」という書類を提出することで適用されます。

時短勤務になると給与の手取り金額はさらに少なくなることも

時短勤務 給与

時短勤務による給与の減少は前述のとおりです。しかし実際には、以下のようなケースにより、受け取る金額がもっと少なくなることがあります。

残業代などの手当がなくなる

時短勤務中は原則として残業が制限されるため、残業代が0円になります。

また、管理職などの役職に就いていた場合は、職責が変わることで役職手当がなくなったり、減額されたりすることもあるので注意しましょう。

時短勤務前の社会保険料が適用されている

実際の給与は社会保険料などが引かれてから支払われますが、社会保険料は毎年4~6月の給与をもとに算出されます。

時短勤務を取得する際に適切な手続きをしないと、時短勤務をしているのに時短勤務前の社会保険料が適用されてしまうことがあります。

つまり、給与が減っているのに社会保険料は高いままということになってしまうのです。

時短勤務になるとボーナス(賞与)は減ることが多い

ボーナスは必ず支払うことが法律で定められているわけではありません。そのため、時短勤務時のボーナスの有無、支給額などについては会社ごとに異なります。

時短勤務時のボーナスは給与額に合わせて減給されることが多く、例えば基本給を基準としている場合、短くなった勤務時間に合わせて支給されます。

不利益な取り扱いは禁止

時短勤務によって基本給やボーナスなどが減る場合が多いことはこれまで見てきたとおりです。

しかし、勤務時間の減少に見合わない過度な(不合理な)減額は不当な取り扱いとして禁止されています(※1)。

これは、配置転換など給与面以外の処遇についても同様です。

就業規則に基づかない、または事前の十分な説明や同意なく不利益な取り扱いをされた場合は、労働基準監督署や弁護士への相談も検討してください。

時短勤務中に残業した場合の給与は?

時短勤務にすると、より限られた時間内で業務をこなさなければならなくなります。場合によっては残業が必要になるかもしれません。

では、時短勤務中に残業をしてもよいのでしょうか。残業をしたら給与はどうなるのでしょうか。詳しく説明します。

時短勤務中に残業はできる?

基本的に、時短勤務中でも必要に応じて残業をすることは可能です。

育児・介護休業法には「3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合には、事業主は所定労働時間(原則6時間)を超えて労働させてはならない」ことが明記されています(※1)。

このため、社員から請求がなければ、会社側から社員に対して残業を依頼することも問題はありません。

しかし、社員が時間外労働の免除を会社に請求した場合、残業を会社から指示することはできなくなります。

残業をした場合、給与はどうなる?

時短勤務中に残業をした場合は、勤務した時間分の給与が支払われます。

このとき、「法定外時間外労働」、つまり1日8時間または週40時間を超えた分の残業代は25%以上の割り増しとなります(※3)。

一方、労働時間が8時間以内である「法定内時間外労働」の場合、残業代が割り増しされるかは会社次第です。

例えば6時間の時短勤務を実施している社員が1時間だけ残業した場合は「法定内時間外労働」になります。

会社に割増賃金の支払い義務はなく、多くの場合、時間単価で算出された1時間当たりの賃金が支払われることになるでしょう。

時短勤務でも給与を減らさないための方法

方法

家計を考えると、時短勤務となっても一定の収入はキープしたいものです。時短勤務になっても給与額を減らさないためには次のような方法があります。

社会保険料の減額措置を申請する

社会保険料は4~6月の給与額をもとに算出され、その年の9月~翌年8月まで同じ金額が徴収されます。

育児休業から復職後そのまま時短勤務に変えた場合に限り、社会保険料の減額措置があります(※4)。

この措置を利用するには「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」を会社経由で提出する手続きが必要です。

手続きを忘れず、速やかに行うようにしましょう。

フレックスタイム制度やリモートワークを活用する

フレックスタイム制度であれば、始業・終業時間を柔軟に変更できるため、時短勤務を取らなくても済むかもしれません。

また、リモートワークなら今まで通勤に充てていた時間に働けるため、労働時間を極力減らさずに業務をこなせるようになるでしょう。

時短勤務でも給与が減らない会社へ転職する

給与額が今よりも高い会社へ転職するのも一つの手です。

また、成果主義や歩合制の会社なら、仕事量や成果に合わせて給与が支給されるので、1日6時間勤務でも給与が減らないケースがあります。

時短勤務でもできるだけ給与を減らしたくないのであれば、以上のような観点で転職先を検討してみてはいかがでしょうか。

時短勤務は、子育てと仕事の両立を目指す社員にとって多くのメリットがあります。

給与面で不安を感じるかもしれませんが、会社に相談しながら時短勤務を上手に活用してみてくださいね。

参考
※1 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
※2 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
※3 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
※4 厚生労働省「育児休業等終了後の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の特例」

監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)

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