働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
あなたは大丈夫?育児休暇や時短勤務が適用されないケースに要注意
更新日:2023年3月22日
育児休暇や時短勤務制度は、子どもを育てながら働く女性が企業に請求できる権利です。しかし、利用するには一定の条件が満たされなければならず、場合によっては適用対象外になることも。そこで、「入社後すぐに適用される?」といった疑問も含め、これらの制度が適用されないケースや改正された育児・介護休業法のポイントについて詳しく解説します。
育児支援が受けられないケース
育児中に受けられる支援制度には、「育児休業」「短時間勤務制度」「看護休暇」があります。どの制度も仕事と育児を両立させるために重要で、日雇い労働者を除く正社員・派遣社員・パートタイムの区別なく利用できますが、支援を受けるためには一定の条件を満たさなければなりません。
育児支援を利用できるかどうかは、育児・介護休業法という法律と、企業と従業員の過半数が同意して定められた労使協定の2つで判断します。つまり、法律では適用されても労使協定に当てはまらないケースもあるので、この2つの条件を理解することが重要です。そこで、育児支援が受けられないケースを、法律と労使協定に分けて、詳しく見ていきましょう。
育児休業を取得できないケース
2021年の法改正により、育児休業が男女それぞれ分割して2回取得できるようになりました。もし、保育園などの待機で時間が必要な場合は、2歳になる前日まで期間の延長が可能です。加えて、途中交代で休業を取得できるようにもなりました。
ただし、対象者でも以下の条件に当てはまると育児休業を取得できません。
【法律により取得できないケース】
有期契約の場合において、
・有期契約の場合において、子どもが1歳6カ月になる日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである
【労使協定により取得できないケース】
・雇用期間が1年未満
・申し出から1年以内に雇用関係が終了する
・週の所定労働日数が2日以下
短時間勤務が認められないケース
時短勤務制度は、子どもが3歳を迎えるまでの期間に労働時間を減らし、家事と育児の両立をしやすくするための制度です。最も手がかかる乳幼児期にはとくに重要な制度になるでしょう。
【法律により取得できないケース】
・1日の所定労働時間が6時間以下である
【労使協定により取得できないケース】
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
・勤務内容からみて、短時間勤務が難しい
子どもの看護休暇を取得できないケース
子どもの看護休暇は、未就学児(小学校入学前)の子どもが病気やけがをしたとき、通院・看病のために休暇が取れる制度です。育児・介護休養法では、未就学児が1人のときは年に5日、2人以上なら年に10日を申請できると定められています。
一方、労使協定で取得できない条件が定められているため、事前に就業規則などを確かめるようにしてください。
【労使協定により取得できないケース】
・1つの事業主に連続して雇用された期間が6カ月未満
・週の所定労働日数が2日以下
もう一つ注意しなければならないのが1日の労働時間です。労働基準法では1日の労働時間の上限を8時間としており、半日であれば4時間が看護休暇となります。しかし、1日の労働時間を4時間以下で契約している場合、半日の取得はできないことになっているので、この場合は看護休暇を1日単位で取得するようにしましょう。
※法改正により、2021年1月1日からは時間単位の取得が可能になっています
母性保護規定が適用されないケース
母性保護規定とは、妊娠中から産後1年未満の働く女性や、3歳未満の子どもを育てている人に対し、労働基準法、育児・介護休業法に基づいて適用される保護規定です。とりわけ、妊娠中の女性の検診や子育てに必要な時間を確保するため、残業や時間外勤務の免除といった面で大変役立ちます。
しかし母性保護規定にも適用外になるケースがあり、申請する前にはよく確認しなければなりません。こちらも具体的に確認していきましょう。
所定外労働の免除が認められないケース
所定外労働の免除とは、簡単にいうと残業が免除される制度です。育児・介護休業法は、子どもの3歳の誕生日前日まで残業の免除を認めるよう定めており、適用外の具体的な規制はありません。ただし労使協定では以下の規制がありますので、現在の状況をよく確認してから申請するようにしましょう。
【労使協定により所定外労働の免除が認められないケース】
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
また、一度所定外労働が免除されても、以下の状態になった場合には自身の意思にかかわらず免除が終了することがあるので、注意してください。
【所定外労働の免除が終了するケース】
・子どもが3歳以上になった
・子どもを養育しないことになった
時間外労働の制限が認められないケース
時間外労働の制限では、残業する時間に制限をかけられます。未就学児の子どもを育てている人は1月に24時間まで、1年なら150時間まで残業時間を減らせるので、小さい子どもを育てている人には大きなメリットです。
【法律により時間外労働の制限が認められないケース】
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
また、一度時間外労働の制限が認められても、子どもが小学校に入学した場合は制限が終了することもあります。
ただ、家庭の事情や現在の状況を細かく勤務先に伝え、話し合いで残業時間が減らせることもあります。まずは自分が対象外かよく確認したうえで、どうしても必要であれば事業主とともに勤務形態を考えるようにしましょう。
深夜業の制限が認められないケース
深夜業の制限とは、22時から5時までの勤務を免除してもらうことです。子どものことも心配ですから、夜間業務が免除されると非常に助かるでしょう。
【法律により深夜業の制限が認められないケース】
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
・深夜帯でも子どもの面倒をみてくれる同居人がいる
・所定勤務時間のすべてが22時から5時の間にある
また、一度深夜業の制限が認められても、子どもの面倒をみる同居人が増えた場合には制限が終了することもあります。
育児・介護休業法で定められている育児支援制度には、育児休業制度、短時間勤務制度などさまざまなものがありますが、それぞれの制度には利用対象の条件が設定されています。雇用期間の長さや所定労働時間数など、制度が利用できないケースがありますので注意が必要です。
例えば育児休業制度は、契約社員など期間雇用者が制度利用を申し出た際に、 子どもが1歳になった後もその職場で働く見込みがない場合は、対象外となります(育児・介護休業法第2条、第5条第1項)。また社員の過半数と会社との同意である「労使協定」があれば、その職場での勤務が1年に満たない正社員を対象外とすることも法律で認められています(育児・介護休業法第6条第1項、育介法則第7条)。入社後1年未満の方が育児休業制度を利用できるかどうかは、会社によって状況が違います。
同様に、短時間勤務制度も、1日の所定労働時間が6時間以下である場合は利用の対象外となるほか、労使協定によって「勤続1年未満の労働者」「週の所定労働日数が2日以下の労働者」を対象外とすることも認められています(育児・介護休業法第23条第1項)。これから転職を目指す方や、育児支援制度の利用を考えている方は、その会社の制度運用がどのような状況にあるのかを確認しましょう。
育児・介護休業法の改正で変わる育休
出産・育児による従業員の離職を防ぎ、希望に応じて男女とも仕事と育児を両立できることを目的に、「育児・介護休業法」が2021年に大きく改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3段階で施行されています。法改正によって育休のどのような点が変わったのか押さえておきましょう。
育児休業の分割取得
従来の法制度では、育児休業は子どもが1歳になるまで原則1回しか取得することができませんでした。今回の法改正によって、男女ともに育児休業をそれぞれ2回まで分割して取得することが可能になりました。このような分割取得が可能になることで、業務の都合や会社の状況に応じて休業を設定できるため、柔軟な育児休暇を計画しやすくなります。特に、共働き世帯の場合は、女性の職場復帰などのタイミングを勘案した休暇取得も可能です。また、取得の方法によっては、女性が仕事に出て、その間男性が育児休業を取るなど、夫婦が交代で育児休業を取得することができるため、多様な働き方にも対応できるでしょう。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
従来の「パパ休暇」を廃止して新たに創設されたのが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。子どもの出生後8週間以内に育休とは別に最長4週間まで休業できるだけでなく、2回に分割して休暇を取得することもできるようになりました。これにより、家事や育児といった身体的サポートが必要となる時期に、男性が柔軟に休暇を取得できるので、男性の家事・育児の参加促進につながることが期待されています。
国や企業の育児支援は、仕事と育児を両立させるためにぜひ利用したい制度です。しかし、所定労働時間が短かったり、勤務日数が足りなかったりすると適用対象外になってしまいます。適用対象外になる条件やケースをよく確認して、働き方を改善しながらうまく育児支援を利用していきましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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