働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度


夫婦二人で育児休暇を取るために「パパ・ママ育休プラス」を利用しよう
更新日:2022年1月31日
「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦がともに育児休業を取得することで期間を延長できる制度です。申請には一定の条件がありますが、育休のタイミングを自ら決められるので、夫婦そろっての育児も可能になります。今回は、パパ・ママ育休プラスの申請条件や育児休業給付金の受給資格、また、父親が2回育休を取得できる「パパ休暇」も紹介します。さらに、2022年10月に新設が決まった「男性版産休」についてもあわせて解説しています。
夫婦二人での育休取得を支援する「パパ・ママ育休プラス」
パパ・ママ育休プラスとはどのような制度なのか、概要や取得方法、申請条件について見ていきましょう。
パパ・ママ育休プラスとは
パパ・ママ育休プラスは、父親の育児休業の取得を促し、夫婦が協力して育児を行うことを目的として、2010年に制定されました。
育児休業期間は原則、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで(母親の育休は、出産から8週間の産後休業を含め、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで)となっていますが、パパ・ママ育休プラスは、夫婦とも育休を取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで延長して休業を取得※できる制度です。一定の条件を満たせば、家庭の事情に合わせて夫婦で別々の期間に取得することもできます。
※育休が取得できる期間自体は、延長前と同じく最大で1年間
【例1:母親の職場復帰に合わせ、交代で取得】
母親が出産から8週間の産休を取得したあと、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで育休を取得し、復職するタイミングで父親が育休を2カ月間取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで夫婦どちらかが育休を取得できます。
【例2:夫婦の休暇時期を合わせて取得】
母親の育休期間中に父親も同時に育休を取得することで、子どもに手がかかる時期に夫婦で協力して子育てすることができます。夫婦の育休期間を同じ時期に合わせて取得するほか、育休終了期限の最後の2カ月は夫のみ取得するなど、一部をずらして取得することもできます。
パパ・ママ育休プラスの申請条件
パパ・ママ育休プラスは、法律上の配偶者のほか事実婚の場合でも取得できます。いずれの場合でも、取得するためには条件があります。
<取得条件>
・夫婦ともに育児休業を取得すること
・配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育児休業を取得していること
・子どもの1歳の誕生日前に育児休業開始予定日が設定してあること
・パパ・ママ育休プラス取得者の育児休業開始予定日が、配偶者の取得した育児休業開始の初日以降になっていること
子どもが1歳を超えてパパ・ママ育休プラスの期限である1歳2カ月になるまで育休を利用できるのは、育休をあとから取得した配偶者のみ※となります。母親が先に育休を取得した場合、1歳2カ月まで育休を取得できるのは父親となり、逆に父親が先に育休を取得した場合は、母親が1歳2カ月まで育休を取得できます。
※父親が産後8週までに育休を取得してから母親がパパ・ママ育休プラスを取得、そのあとに父親がパパ休暇(後述)を取得するケースを除く
また、パパ・ママ育休プラスは夫婦ともに育休を取得することが条件となっているため、夫婦どちらかが専業主婦(夫)の場合は申請できません。育休取得者が入社1年未満、育休取得者の雇用期間が育休申請日から1年以内に終了する場合、労使協定により取得ができない旨が定められていると同じく申請はできません。
育児休業給付金は受け取れる?
「パパ・ママ育休プラス」制度を利用した場合についても育児休業給付金を受け取れます。この場合の給付金額は、育休開始日から180日間は月額給与の67%、181日目から支給終了日までは50%で、通常の育児休業給付金と同様です。また、育休開始から180日までの間に父親が育休を取得した場合も同様に、月額給与の67%を受け取れます。
保育所が見つからないなどの事情があり、育休を延長した場合、育児休業給付金も延長になりますが、申込期限や待機児童証明書などの書類が必要になるので注意しましょう。
子どもの1歳の誕生日前日まで取得できる育児休業は、女性、男性のどちらか一方だけが取るのではなく、「パパ・ママ育休プラス」制度を利用して夫婦それぞれが取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで育児休業期間の延長ができるという優遇措置が受けられます。加えて、育児休業は「連続した期間で1回しか取れない」という原則がありますが、夫が妻の産後8週間以内に取った場合は、合計期間が1年を超えない範囲で再度、育児休業を取ることができます(育児・介護休業法第9条第2項)。
また夫婦で育児休業を180日ずつ取得すると、夫も妻もそれぞれの休業期間中、月給の67%の育児休業給付金を受け取ることができます(雇用保険法附則第12条)。そして、育児休業期間中にどうしても出勤が必要となる場合は、就業日数が月10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であれば給付金は支給されますので、夫婦で調整しながら育児と仕事を両立することで制度利用のメリットを最大限に得られるでしょう。
なお、「パパ・ママ育休プラス」として育児休業を取得している場合でも、一定の要件を満たせば、通常の育児休業と同様に最長で子どもが2歳になるまで延長が可能となります。






"育てる男"のための制度「パパ休暇」
「パパ休暇」とは、父親が育休を2回取得できる制度です。その仕組みや取得条件について紹介します。
パパ休暇とは
育休の取得は、原則として子ども1人につき1回のみとなりますが、父親が子どもの誕生後8週間以内に育休を取得した場合に、一定期間を空けてから再度育休を取得できる「パパ休暇」という制度があります。
子どもの誕生から8週間というのは、母親の産後休業期間に当たります。この時期に父親がパパ休暇を取得することで、出産直後の母親のサポートが可能になります。また、一定の期間を空けて再度休暇を取得することで、母親の負担を減らし、職場復帰の手助けをすることもできます。
父親が育休を2回取得するための条件は、子どもの誕生から8週間以内に育休を取得していること、および子どもの誕生から8週間以内に育休を終了していることです。
パパ休暇の育休期間は、出産予定日より前に子どもが誕生した場合は出産予定日の8週間後まで、出産予定日より後に子どもが誕生した場合は出生日の8週間後までと定められています。
パパ休暇にまつわるお金のあれこれ
【育児休業給付金】
パパ休暇の間も、月額給与の67%にあたる育児休業給付金を受け取れます。ただし、実際に子どもが誕生した日からが支給対象となり、出産予定日に育休を開始したものの出産日が遅れた場合、育休開始日から出産日までの間、育児休業給付金は支給されません。
【社会保険料】
パパ休暇期間の社会保険料は免除されます。ただし、対象は育休を終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間となるため、育休を開始した同月内に復職した場合、保険料は免除されません。
育児・介護休業法の改正で男性の育休取得推進へ
2021年6月に、男性の育児休業取得制度の新設(2022年10月1日施行)を柱とする育児・介護休業法の改正案が可決されました。男性の育児休業に関しては、すでに「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」といった仕組みがありますが、この法改正によって具体的に何が変わることになるのか見ていきましょう。
「男性版産休」の新設
今回の法改正の目玉は、これまで女性だけに限られていた産後休暇(出産から8週間)の取得が男性も可能になることです(産後パパ育休)。原則として、休業をする2週間前までに申し出れば取得できることになり、現行法の1カ月前から大幅に短縮されました。
産後パパ育休は4週間までの取得が可能で、2回に分割することもできるようになりました。これまで特例として存在していた「パパ休暇」は、産後パパ育休制度に置き換わることになります。
なお、これらの実施はいずれも2022年10月1日と予定されています。
男女ともに育休の分割が可能に
これまでは、原則「パパ休暇」を除いて育児休業の分割取得はできませんでしたが、今回の法改正によって、男性だけでなく女性も育児休業を2回に分割することが可能になりました。これは産後休暇とは別に取れるものなので、合計で、女性は最大で3回、男性は最大4回までの休暇が取得できるようになります。
また、育児休業を延長する場合、育休開始日が「1歳から1歳半」「1歳半から2歳」の期間の初日に限られているため、これらの開始時点でしか夫婦の交代は認められませんでした。しかし今回の改正で、各期間の途中でも取得人の変更が可能になります。
当項目の実施も2022年10月1日と予定されています。
企業に対する義務付け
これらの制度の新設・変更のほかに、企業を対象とした従業員への周知などの義務も追加されました。
- ・妊娠や出産を申し出た従業員(男女問わず)に対して、育児休業が取得できる旨と、その内容の周知や取得の意思確認義務(2022年4月1日から)
- ・従業員が1,000人を超える企業を対象とした、育児休業取得状況の公表義務(2023年4月から)
そのほか、2022年4月1日には、有期雇用労働者に対して「事業主に雇用された期間を1年以上」とする現行の育児・介護休業取得要件の廃止も予定されています。
「パパ・ママ育休プラス」や「パパ休暇」は、父親の育休取得を促進するために作られた制度です。育休期間が延長できることに加えて、夫婦で同時期に育休を取得することで母親の負担が減ることや、夫婦がそろって子育てできる大きなメリットがあります。
それぞれの家庭の事情に合わせて取得できるので、自分たちにとっていちばんよい形で育児休業を取得できるよう、事前に夫婦で話し合っておきましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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