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パパ・ママ育休プラスとは?制度概要や取得条件・期間について図解付きで解説
更新日:2023年3月22日
「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦がともに育児休業を取得することで期間を延長できる制度です。申請には一定の条件がありますが、育休のタイミングを自ら決められるので、夫婦そろっての育児も可能になります。今回は、パパ・ママ育休プラスの申請条件や育児休業給付金の受給資格、さらに、2022年10月に新設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」について詳しく解説します。
夫婦での育休取得を支援する「パパ・ママ育休プラス」とは?
パパ・ママ育休プラスとはどのような制度なのか、概要や取得方法、申請条件について見ていきましょう。
パパ・ママ育休プラスとは
パパ・ママ育休プラスは、父親の育児休業の取得を促し、夫婦が協力して育児を行うことを目的として、2010年に制定されました。
育児休業期間は原則、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで(母親の育休は、出産から8週間の産後休業を含め、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで)となっていますが、パパ・ママ育休プラスは、夫婦とも育休を取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで延長して休業を取得※できる制度です。一定の条件を満たせば、家庭の事情に合わせて夫婦で別々の期間に取得することもできます。
さらに、パパ・ママ育休プラスは分割取得することもできます。詳細は後述しますが、2021年の育児・介護休業法の法改正によって、男女ともに育児休業を2回に分割して取得することが可能になったためです。
※育休が取得できる期間自体は、延長前と同じく最大で1年間
【例1:母親の職場復帰に合わせ、交代で取得】
母親が出産から8週間の産休を取得したあと、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで育休を取得し、復職するタイミングで父親が育休を2カ月間取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで夫婦どちらかが育休を取得できます。
【例2:夫婦の休暇時期を合わせて取得】
母親の育休期間中に父親も同時に育休を取得することで、子どもに手がかかる時期に夫婦で協力して子育てすることができます。夫婦の育休期間を同じ時期に合わせて取得するほか、育休終了期限の最後の2カ月は夫のみ取得するなど、一部をずらして取得することもできます。
パパ・ママ育休プラスの取得条件
パパ・ママ育休プラスは、法律上の配偶者のほか事実婚の場合でも取得できます。いずれの場合でも、取得するためには条件があります。
<取得条件>
・夫婦ともに育児休業を取得すること
・配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育児休業を取得していること
・子どもの1歳の誕生日前に育児休業開始予定日が設定してあること
・パパ・ママ育休プラス取得者の育児休業開始予定日が、配偶者の取得した育児休業開始の初日以降になっていること
子どもが1歳を超えてパパ・ママ育休プラスの期限である1歳2カ月になるまで育休を利用できるのは、育休をあとから取得した配偶者のみ※となります。母親が先に育休を取得した場合、1歳2カ月まで育休を取得できるのは父親となり、逆に父親が先に育休を取得した場合は、母親が1歳2カ月まで育休を取得できます。
※父親が産後8週までに育休を取得してから母親がパパ・ママ育休プラスを取得するケースを除く
また、パパ・ママ育休プラスは夫婦ともに育休を取得することが条件となっているため、夫婦どちらかが専業主婦(夫)の場合は申請できません。育休取得者が入社1年未満、育休取得者の雇用期間が育休申請日から1年以内に終了する場合、労使協定により取得ができない旨が定められていると同じく申請はできません。
育児休業給付金は受け取れる?
「パパ・ママ育休プラス」制度を利用した場合についても育児休業給付金を受け取れます。この場合の給付金額は、育休開始日から180日間は月額給与の67%、181日目から支給終了日までは50%で、通常の育児休業給付金と同様です。また、育休開始から180日までの間に父親が育休を取得した場合も同様に、月額給与の67%を受け取れます。
保育所が見つからないなどの事情があり、育休を延長した場合、育児休業給付金も延長になりますが、申込期限や待機児童証明書などの書類が必要になるので注意しましょう。
子どもの1歳の誕生日前日まで取得できる育児休業は、女性、男性のどちらか一方だけが取るのではなく、「パパ・ママ育休プラス」制度を利用して夫婦それぞれが取得することで、子どもが1歳2カ月になるまで育児休業期間の延長ができるという優遇措置が受けられます。加えて、育児休業は「連続した期間で1回しか取れない」という原則がありますが、夫が妻の産後8週間以内に取った場合は、合計期間が1年を超えない範囲で再度、育児休業を取ることができます(育児・介護休業法第9条第2項)。
また夫婦で育児休業を180日ずつ取得すると、夫も妻もそれぞれの休業期間中、月給の67%の育児休業給付金を受け取ることができます(雇用保険法附則第12条)。そして、育児休業期間中にどうしても出勤が必要となる場合は、就業日数が月10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であれば給付金は支給されますので、夫婦で調整しながら育児と仕事を両立することで制度利用のメリットを最大限に得られるでしょう。
なお、「パパ・ママ育休プラス」として育児休業を取得している場合でも、一定の要件を満たせば、通常の育児休業と同様に最長で子どもが2歳になるまで延長が可能となります。






"育てる男"のための制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」
従来の制度としてあった「パパ休暇」は、妻の産後8週間以内に夫が育児休暇を取得した場合、2回目の育児休暇を取得できるものでした。しかし、育休取得率の向上や、男性の家事・育児への参加促進、女性の社会復帰支援などを背景に、制度の見直しが行われました。これに伴いパパ休暇を廃止して、2021年に新設されたのが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは
産後パパ育休は2022年10月1日より施行されている制度で、最大の特徴は休暇の取得方法が選べるところです。前述のように最大4週間が取得可能日数となっていますが、まとめての取得や分割の取得が可能です。労使協定の締結によっては休業中の就業も可能で、業務の状況を勘案しながら柔軟に取得できるようになっています。
「パパ休暇」と「産後パパ育休」の違いとは
産後8週間以内を休暇の取得対象としている点は、従来のパパ休暇と変わりません。産後パパ育休では、この仕組みがより柔軟になり、取得可能日数を4週間として、2回に分割して取得することが可能となりました。
「産後パパ育休」と「育児休業」は別の休業制度
産後パパ育休は、出生時育児休業ともいわれているように、子どもが生まれたときに取得する休業です。それに対して育児休業は、子どもが1歳になるまで取得できる休業であり、産後パパ育休とは異なります。そのため、産後パパ育休と育児休業を組み合わせて、最大4分割で休暇を取得することも可能です。
産後パパ育休も要件を満たせば給付金はもらえる
産後パパ育休取得中は、下記の要件を満たすことで出生時育児休業給付金が支給されます。
・休業開始日前の2年間に、賃金の支払い基礎日数が11日以上の完全月が12カ月以上あること
・休業期間中の就業日数が、最大10日以下(10日を超える場合は80時間以内)であること
申請期間は、子どもの出生日から8週間経過した翌日から2カ月後の月末までです。
「産後パパ育休」以外の育児・介護休業法の改正ポイント
育児・介護休業法は、2021年に大きく改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3段階で施行されています。前述した「産後パパ育休」以外でどのような点が変わったのか押さえておきましょう。
男女ともに育休の分割が可能に
これまでは、原則「パパ休暇」を除いて育児休業の分割取得はできませんでしたが、今回の法改正によって、男性だけでなく女性も育児休業を2回に分割することが可能になりました。こちらも産後パパ育休と同じく、2022年10月1日から実施されています。これは産後休暇とは別に取れるものなので、合計で、女性は最大で3回、男性は最大4回までの休暇が取得できるようになります。
分割取得が可能になったことにより、一時的に復職し再び育休に入るという働き方も実現できるようになりました。従来同様、子どもが1歳になるまで、連続して取得してもかまいません。これによって連続的な休暇取得が難しい業務や、妻の復職や子の保育園入園準備など、さまざまな生活スタイルに柔軟に対応できるようになるでしょう。
また、育児休業を延長する場合、育休開始日が「1歳から1歳半」「1歳半から2歳」の期間の初日に限られているため、これらの開始時点でしか夫婦の交代は認められませんでした。しかし今回の改正で、各期間の途中でも取得人の変更が可能になりました。
企業に対する義務付け
さらに、育児・介護休業法の改正では、より休業の取得率を向上させることを目的に、事業所へ対し様々なことが義務付けられるようになりました。
雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
事業所は、育児休業に関する研修の実施や、相談体制の整備、情報収集の提供などを行わなければなりません。加えて、従業員本人や配偶者の妊娠や出産についての申し出があった場合は、制度についての提示や休業取得の意向を確認することが義務化され、申請をしないよう強要したり不利益をほのめかしたりすることが禁止されています。こちらは2022年4月1日から施行されています。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
子どもが「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない」場合は、雇用形態に関わらず、育休の取得が可能になります。ただし、申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実である場合や、会社が契約を更新しない旨を提示している場合は除きます。また、労使協定の締結によって、育児休業の適用が除外される場合があるので注意が必要です。こちらも2022年4月1日から施行されています。
育児休業取得状況の公表の義務化
常時雇用する従業員が1000人を超える企業の場合は、年1回、自社のホームページや厚生労働省が運営するwebサイトにおいて、育休取得状況を公表しなければなりません。公表内容は「男性の育児休暇等の取得率」または「育児休暇等と育児目的休暇の取得率」です。こちらは2023年4月1日から施行予定です。
出産育児一時金の制度改正にも注目
出産一時金とは子どもを出産した時に、加入している公的医療保険から受け取れる一時金です。出産費用が年々上昇していることに伴い、2023年度から従来の42万円から50万円に引き上げられることとなりました。出産にかかる費用の負担軽減とともに、受けられる医療の幅が広がるという点がメリットといえるでしょう。
「パパ・ママ育休プラス」や「産後パパ育休」は、父親の育休取得を促進するために作られた制度です。育休期間が延長できることに加えて、夫婦で同時期に育休を取得することで母親の負担が減ることや、夫婦がそろって子育てできる大きなメリットがあります。
それぞれの家庭の事情に合わせて取得できるので、自分たちにとっていちばんよい形で育児休業を取得できるよう、事前に夫婦で話し合っておきましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)
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