働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
幼児教育・保育の無償化の適用条件は? よくある疑問も解説
更新日:2021年5月31日
少子化対策の一つとして、2019年10月から開始された「3~5歳児クラスの幼児教育・保育の無償化」。共働きの夫婦や育児をしながら働く女性にはうれしい制度ですが、その内容や適用条件が気になるところです。幼児教育・保育の無償化とはどのような制度なのか、よくある疑問や適用条件について詳しく解説します。
「幼児教育・保育の無償化」がスタート
幼児教育・保育の無償化は、今まで家計を圧迫していた保育料を無料にして「働きやすい環境」「子育てしやすい社会」を作り、少子化問題に歯止めをかけることを目的とした政策です。その背景にあるのは、「子育てをするだけの経済的余裕がない」「教育にお金がかかるから子どもは1人でいい」という子育て世代の意見でした。
たしかに、働いても高額な保育料がかかれば共働きでも家計は苦しいですし、所得に合わせて保育料も上がれば自然と働く時間を減らすケースも出るでしょう。幼児教育・保育の無償化が目指すのは、子育て世代の経済的な不安を取り除き、安心して子育てと仕事を両立させられる社会です。
無償化の対象となる施設
幼児教育・保育の無償化は、満3歳になったあとの4月1日から小学校入学前までの3年間にわたって適用されますが、対象となるのは以下の施設です。
【幼稚園】
幼稚園は文部科学省が管轄する施設で、小学校の進学に備えた教育基礎を行うのが主な目的です。3~5歳児クラスが無償化の対象ですが、「子ども・子育て支援新制度」に基づく幼稚園に移行していない幼稚園は、保育料が月額最大25,700円減額※される形になります。
なお、保育料は無償化あるいは負担額が軽減されますが、送迎バスの利用料・給食費・入園料・入園準備費・道具類の費用は対象になりません。
※入園初年度は在籍月数で分割した入園料も計算に含む
【認可保育所】
認可保育所は厚生労働省が管轄する児童福祉施設で、子どもを安全に保護して預かることを目的としています。幼稚園と同様に3~5歳児クラスが無償化の対象で、住民税の非課税世帯については、子どもが0歳から満3歳までの場合にも無償となります。
なお、無償となるのは保育料のみで、給食費や副食費、そのほかの必要な経費については対象になりません。さらに、延長保育料も無償化の対象外になるので注意が必要です。
【認定こども園】
こども園とは、簡単にいうと「幼稚園の教育要素」と「保育園のお預かり要素」を併せ持った施設です。内閣府の管轄にあるものの、文部科学省や厚生労働省とも連携し、必要とされる教育や長時間の保育も実施します。認定こども園も認可保育所と同じく3~5歳児クラスが無償化の対象で、住民税の非課税世帯は子どもが0歳から満3歳であれば無償化の対象となります。
また、ここでも無償になるのは保育料のみで、給食費や副食費、そのほかの必要な経費については対象になりません。さらに延長保育料も対象外となります。
【地域型保育事業】
地域型保育事業は、国の認可基準を参考にして各自治体が定めた保育施設です。地域型保育事業には「小規模保育事業」「事業所内保育事業」「家庭的保育事業」「居宅訪問型保育事業」の4種類があり、保育者の目がより子どもに行き届くよう細かな規定があります。地域型保育事業も無償化の対象で、条件は認可保育所と同じです。
【障害児通園施設】
何らかの障害を抱えている子どもの支援を行う施設も、3歳児クラスから小学校入学前まで無償です。支援を居宅で受ける場合も対象になりますので、利用する際にはよく内容を確認しましょう。
幼稚園の預かり保育
「幼稚園の預かり保育」とは、基本の預かり時間以外に行われる保育のことです。例えば、本来なら夏休みで幼稚園が休みの期間中に子どもを預ける、あるいは、9時から13時の基本時間のあとに延長して預かってもらうケースがこれにあたります。
幼稚園の預かり保育は無償化の対象外ですが、住民税非課税世帯の場合、満3歳児(年少クラス)で月額最大16,300円、年中から年長クラスの子どもは、所得の制限なく月額最大11,300円が減額になります。ただし、利用するためには「保育の必要性」の認定を受けなければなりませんので、事前に幼稚園や該当する施設へ問い合わせましょう。
認可外保育施設等
認可外保育施設とは、施設の広さや職員数などが国の基準を満たしていないという理由で認可を受けていない保育所のことです。認可を受けていない分、保護者のニーズに合わせた多様性をもつ施設も多く、認可保育園に入れなかった人が利用することも少なくありません。
認可外保育施設は認可保育園のように完全無償化にはなりませんが、0歳児から満3歳児で住民税非課税世帯なら月額最大42,000円が軽減、3歳児から小学校入学前までの子どもを預ける場合は、すべての世帯で月額最大37,000円が軽減されます。
さらに、保育施設でなくても一時預かり事業やファミリーサポートセンター、ベビーシッターの利用も軽減対象となりますので、必要に応じて各自治体の保健福祉課や保育課に問い合わせてみましょう。
無償化が適用となる子どもの条件
多くの幼稚園や保育施設で保育料の無償化が適用されることが分かりましたが、無償化は子どもの年齢によっても異なり、場合によっては適用されないこともあります。そこで、無償化が適用される子どもの条件について年齢別に確認していきましょう。
3~5歳児クラスの子ども
3~5歳児クラス(4月1日時点で3歳から5歳まで)の子どもは、全世帯が無償化の対象です。ただし、利用する施設によっては完全無償化にならないため、事前に施設へ問い合わせる必要があります。
【3~5歳児クラスの子どもの無償化の条件】
認定保育園・認定こども園を保育園として利用・地域型保育事業 | 認可外保育事業・一時預かり業・ベビーシッターなど | 「子ども・子育て支援新制度」に基づく幼稚園・認定こども園を幼稚園として利用 | 「子ども・子育て支援新制度」に移行していない幼稚園 | |
---|---|---|---|---|
「保育の必要性」の認定申請 | あり | あり | なし | なし |
金額 | 無償 | 月額最大37,000円の軽減 | 無償 | 月額最大25,700円の軽減 ※入園初年度は在籍月数で分割した入園料も計算に含む |
0~2歳児クラスの子ども
0歳から2歳までの子どもはどうしても手が掛かるので、3歳から5歳の子どもに比べると無償化の条件も厳しくなります。
【0~2歳児クラスの子どもの無償化の条件】
認定保育園・認定こども園を保育園として利用・地域型保育事業 | 認可外保育事業・一時預かり業・ベビーシッター等 | |
---|---|---|
「保育の必要性」の認定申請 | あり | あり |
金額 | 住民税非課税世帯のみ無償 | 住民税非課税世帯のみ月額最大42,000円軽減 |
「幼児教育・保育の無償化」のよくある疑問
「幼児教育・保育の無償化」は、経済的な不安を抱える人にとって非常に心強い制度です。しかし、その内容が複雑で分かりにくい部分も多くあります。ここでは、幼児教育・保育の無償化について特に多い疑問点を取り上げます。
2人目以降の子どもは無償化を受けられないの?
「幼児教育・保育の無償化」が適用される以前は、きょうだいで幼稚園・保育園を利用した場合、2人目が半額、3人目が無料でした。しかし3歳児以上が無償化されたため、「2人目以降の金額が増加するのでは?」と心配する声が出ています。
そこで、世帯収入別の多子カウント方法が設けられており、収入状況に対して育児費用の負担が大きくなりすぎないような対策が取られています。
幼児教育・保育が無償化されましたが、これまでの「2人目半額、3人目無料」は継続して実施されます。きょうだいで利用する場合、1号認定(幼稚園、認定こども園)の場合には、小学校4年生以上あるいは2歳以下、2号・3号認定(保育所、認定こども園、地域型保育)の場合には、小学校1年生以上の子どもが人数としてカウントされません。
なお、年収360万円未満相当の世帯の場合、1号・2号・3号認定共通で、小学校1年生以上の子どもに関しても人数にカウントしてよいことになっています。
また、独自の多子カウント方法を採用していたり、追加の予算を設けて対象施設を広げたりしている市区町村もありますから、ご利用の際にはお住まいの地域の制度をご確認ください。
市区町村の異なる保育所に通う場合でも無償化の対象になるの?
通勤の利便性を考えて、住んでいる地域と異なる市区町村の保育所に子どもを通わせるケースも多いですが、その場合も無償化は適用されるため心配する必要はありません。認可保育施設はもちろんですが、認可外の保育施設でも無償化の対象になります。
ただし、住んでいる市区町村で給付費の請求をしなければならないため、利用している施設から受け取った領収書などを住民票のある市区町村に提出し、必要な手続きを行いましょう。
幼稚園や保育施設の無償化は、経済的な不安を抱える人にとって大きな手助けになります。保育施設の特徴や必要経費、無償化の条件を調べて、理想的なライフプランが実現できるよう役立てましょう。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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