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短時間正社員制度とは?時短勤務で仕事の負担を少しでも軽減

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更新日:2024年5月27日

正社員として働くことを希望しても、育児などの理由によりフルタイムでは働けない人がいます。そういった人が利用できる制度が「短時間正社員制度」です。今回は、正社員でありながら時短勤務が可能になる「短時間正社員制度」の条件やメリットについて紹介します。

短時間正社員制度とは

短時間正社員制度

短時間正社員制度とは、その名のとおり「労働時間を短く設定した上で正社員として雇用される制度」を指します。

正社員は1日8時間、週5日出勤するのが一般的ですが、短時間正社員は最初から短い労働時間で無期労働契約を結ぶ雇用形態です(※1)。

近年多くの企業が短時間正社員制度を取り入れており、新しい雇用形態として注目されています。

その背景には、正社員として働く意欲はあるものの育児や介護でフルタイムの勤務ができず、退職せざるを得ない人が増えたという事情があります。

短時間正社員制度と時短勤務の違いは?

短時間正社員制度と似たものに「短時間勤務制度(時短勤務)」があります。

これは、3歳未満の子どもを育てる場合や両親などに介護が必要となった場合に対象となる制度です(※2)。

しかし、短時間正社員制度にはこれらの条件がなく、幼い子どもの育児や介護以外の理由でも活用できます。

短時間正社員制度とパートタイマーの違いは?

短い労働時間という意味ではパートタイマーに似ていると思う人もいるかもしれません。

しかし、短時間正社員制度が期間の定めのない労働契約なのに対し、パートタイマーは期間の定めのある契約(有期労働契約)である点が大きく違います。

短時間正社員制度での労働条件

短時間正社員の雇用形態は文字どおり正社員ですが、そのほかの労働条件は以下のように定められています。

  • ・期間の定めがない無期労働契約
  • ・フルタイム正社員よりも1週間の所定労働時間が短い
  • ・時間当たりの基本給および賞与・退職金の算定方法がフルタイム正社員と同一
  • ・一定の条件下で社会保険も適用

雇用される側には、短時間勤務でも社会保険が適用されるというメリットがあります。

一方で、雇用する側(勤務先)にとっては、働き続けてほしい人材の流出を防げるというメリットがあります。

短時間正社員になるための条件

短時間正社員制度は多様性のある働き方を実現するための制度です。

利用するには「さまざまな理由によりフルタイム正社員になれない人」という条件を満たす必要があります。

具体的な利用例は以下のとおりです。

  • ・子育て期間中はフルタイムで働けないので、短時間正社員で雇用してもらう
  • ・親の介護でフルタイム勤務ができないので、短時間正社員の雇用形態に変えてもらう
  • ・体調不良が続きフルタイム勤務が難しくなったが、治療をしながら働き続けるために短時間正社員になった
  • ・定年退職後も無理なく働き続けるため、短時間正社員として再雇用してもらった
  • ・働きながら専門学校に通うので、将来的なフルタイム勤務を踏まえた上で短時間正社員になった

短時間正社員制度のメリット

短時間正社員制度を考えるとき、具体的なメリットを知っておくと働く姿がイメージしやすくなるでしょう。

メリット1:仕事と家庭のバランスが取りやすくなる

短時間正社員制度を利用する人の多くは、育児や介護と仕事のバランスが取れないという問題を抱えていることが多いようです。

どちらも大切なことだけに、なんとか両立させようと無理を重ねると、どちらかをあきらめざるを得なくなるかもしれません。

しかし、短時間正社員制度を利用すれば仕事と家庭のバランスが取りやすくなります。

どちらかを犠牲にしなくてもよい働き方ができるのは、短時間正社員制度の大きなメリットといえるでしょう。

メリット2:仕事のキャリアを維持できる

短時間正社員になって仕事を継続することで、これまで積み上げてきたキャリアが無駄にならないこともメリットの一つです。

とくに女性の場合、結婚や出産を機に働き方の変更を迫られる場合も多く、せっかく身につけたキャリアを手放さざるを得ないことがあります。

しかし、短時間正社員になれば、仕事内容や福利厚生面が変わることなく勤務時間だけが短くなるので、キャリアを活かして働き続けられます。

短時間正社員制度は働く女性の強い味方となることでしょう。

メリット3:多様性のある働き方を実現できる

短時間正社員はフルタイムで働くよりもプライベートの時間が増えます。

そのため、仕事をしながら資格の勉強をする、ボランティアで社会貢献をするといった活動に時間を割きやすくなるでしょう。

仕事もプライベートも充実させたい人にとって、これは魅力的なことだと思います。

短時間正社員制度は、仕事・家庭・ライフワークのバランスを取る手段として多くの人に役立っています。

短時間正社員の場合、社会保険と雇用保険はどうなる?

社会保険

短時間正社員には正社員と同様に社会保険・雇用保険が適用されますが、どちらも所定の条件を満たす必要があります。

具体的にどのような条件があるのか見ていきましょう。

社会保険の適用条件

そもそも社会保険には、「常時雇用者の労働時間・労働日数と比較して4分の3以上の時間で勤務している場合に社会保険が適用される」というルールがあります(※3)。

短時間正社員にもこのルールが適用されます。ただし、4分の3未満だとしても、以下の要件をすべて満たせば社会保険が適用されます(※4)。

  • ・週の所定労働時間が20時間以上
  • ・2カ月以上の雇用期間が見込まれる
  • ・月額賃金が8.8万円以上
  • ・学生でない
  • ・厚生年金の被保険者数が常時101人以上の法人・個人の特定適用事業所、および国または地方公共団体に属するすべての特定適用事業所に勤めている(101人未満の場合でも、労使合意に基づき申し出をした場合は、任意特定適用事業所となる。また、2024年10月以降は101人→51人へと対象が拡大される)

雇用保険の適用条件

雇用保険の目的は、従業員が失業したときの生活の安定・再就職の援助です。

従って、雇用形態にかかわらず一定の条件を満たしていれば、すべての従業員に雇用保険が適用されます。

雇用保険の適用条件は下記のとおりです(※5)。

  • ・労働契約期間に関して、以下のいずれかに当てはまる
    −期間の定めなく(無期限で)雇用されている
    −雇用期間が31日以上である
    −雇用契約に更新規定があり、31日未満の雇い止めが明示されていない
    −雇用契約の更新規定はないが、すでに同じ条件で雇用された人が31日以上雇用された実績がある
  • ・1週間の所定労働時間が20時間以上
  • ・昼間の学生ではない
  • ・他社で雇用保険に加入していない

短時間正社員制度についてよくある疑問

正社員から短時間正社員への変更に関して、社会保険や雇用保険以外にも不安になる点があると思います。

そこで、代表的な疑問について取り上げてみます。

待遇に差がある場合はどうすればいい?

雇用形態の違いによる不合理な待遇差は、「パートタイム・有期雇用労働法」によって禁止されています(※6)。

そのため、短時間正社員になる、あるいは短時間正社員として採用される際に正社員との待遇に差がある場合、まずはその理由について勤務先に説明を求めてください。

勤務先が待遇の違いについて合理的な説明ができない場合、労働者は待遇の改善を求めることができます。

時間外労働の扱いは?

短時間正社員が時間外労働をした場合、正社員と同様に割増賃金が発生します。

一方、役職手当などの職務関連手当は、その趣旨を踏まえて妥当な額に減額される可能性があります。

食事手当など一部の手当についても、勤務対象外の時間帯が食事時間にかかる場合などには減額されることがあります。

短時間正社員制度の利用を検討する際は、あらかじめ勤務先に確認しておくとよいでしょう。

短時間正社員制度を導入している求人を探す

短時間正社員になるためには、勤務先が短時間正社員制度を導入し、明確な規定を整えていなければなりません。

この新しい雇用形態に興味がある人は、短時間正社員制度を導入している企業の求人を求人サイトで探してみたり、転職エージェントに相談したりしてみましょう。

仕事と家庭の両立や充実したワーク・ライフ・バランスを実現するために、ぜひ利用したい短時間正社員制度。

現在のキャリアやライフスタイル、将来に向けたビジョンを整理し、一つの選択肢として検討してみてください。

参考
※1 厚生労働省「『短時間正社員制度』導入・運用支援マニュアル」
※2 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
※3 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
※4 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
※5 厚生労働省「第4章 被保険者について」
※6 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」

監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)

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