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Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜

Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜 Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜
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掲載日:2015年7月13日
更新日:2020年8月24日

まったく興味がなかった社長業が私にとって天職だった
無駄な経験はないと信じて、一歩を踏み出して

芸能プロダクション株式会社タイタンの社長で、爆笑問題・太田光さんの妻である太田光代さん。将来は専業主婦になる、というそれまでの人生設計に反して、自身でもまったく予想していなかった社長業に就くことになったのは28歳のころ。以降、社長兼マネジャーとして「爆笑問題」を大ブレークに導き、数々の人気タレントを抱える事務所へと成長させた手腕は周知の通りです。経験ゼロから始まった社長業の道のりと、仕事をする上で大切にしていることとは。

株式会社タイタン 代表取締役社長太田 光代さん

1964年、東京都生まれ。高校卒業後、雑誌モデルなどを経てタレントに。90年、同じプロダクションに所属していた「爆笑問題」の太田光さんと結婚。翌91年、芸能プロダクション「タイタン」を設立する。93年に法人化し、社長に就任。現在は社長として数多くのタレント、構成作家、社員を抱え多忙な日々を送る傍ら、ハーブ・アロマ専門店「ウィッチムーン」、トータルリラクゼーションスペース「キューピットハート」、フラワーショップ「アリエル」なども経営している。著書に『私が「にんぎょひめ」だったころ』(集英社インターナショナル)、『奥さまは社長』(文春文庫)、『女子社長の優雅で過激な毎日』(大和書房)、『独走』(キノブックス)などがある。

~28歳の時~ 自分がやるしかないという使命感から会社の設立を決意

芸能プロダクション「タイタン」を立ち上げたのは28歳になる直前です。その2年後、法人化とともに社長に就きました。 もともと経営に興味があったわけでも、社長になりたかったわけでも決してありません。爆笑問題というタレントをなんとか世に出したくて、追い込まれた末にその道を選んだというのが本当のところです。

爆笑問題の2人、太田光と田中裕二に初めて会ったのは、私がタレントをしていた24歳の時。同じ事務所に所属する同期でした。26歳で太田と結婚してすぐに、彼らは「自分たちで好きなことをやりたい」と事務所から一方的に独立していまい、仕事が激減する結果に。私がコンビニでアルバイトをしたりパチスロでお金を稼いだりして生活を支える日々が4年ほど続きました。「このままでは彼らの才能が埋もれたままになってしまう。私が何とかしなければ」という思いに駆られ、自分にできることを考えた末、行き着いた答えが、彼らをマネジメントするための会社をつくるという選択だったのです。

基本知識も何もないゼロからのスタート

私の年代は、男女雇用機会均等法の施行と前後して社会に出た世代に当たるのですが、私自身は、自分がバリバリと仕事をすることや、ましてや経営者になることなんて考えてもみませんでした。将来は結婚して専業主婦になりたいとずっと思っていましたしね。会社を立ち上げると決めたもののOL経験すらない状態だったので、有限会社と株式会社の違いも知らず、ハウツー本を何冊も買って、基礎知識を仕入れるところから始めました。こんなことなら大学に行って経営や経済を勉強しておけば良かったと後悔しましたが、今思えば、ゼロから始めたことは結果的に良かった気がします。というのも芸能界は特殊な世界で、一般的な経営のノウハウにとらわれるとうまくいかない部分も多々あるからです。

例えばギャラの設定がそうです。普通、商品の価格というのはコストや利益、他社製品の価格などを精査した上で決定されます。ところが芸能プロダクションの場合は、タレント、つまり能力に対して金額をつけなければいけない。その方法はどんな本にも書かれていないし、おまけに芸能界で金額の話はタブーなので、誰かに聞くわけにもいきません。それまでのタレント業を通して得たわずかな情報を手掛かりに、現場で経験を重ねながら、適正金額の見極め方を自分なりに探っていきました。

マネジャーとしてもゼロからのスタート。「タレント時代にマネジャーの仕事を見ていたとはいえ、自分でやるとなると全然違う。過去にお世話になった方々に相談したりしながら、なんとか進めていった感じです」

〜28歳から今〜 「女だからラッキーだね」
努力が評価されず悔しい思いをしたことも

私がやるしかないと始めた社長業ですが、1週間が経つころから「私に向いているかも」と感じるようになりました。私は子どものころから何でも考え過ぎるところがあり、そんな自分の性格を苦しく感じていたのですが、社長になってみると、アイデアを具現化するにしても、リスク対策を立てるにしても、考え過ぎてダメということはまったくない。「これでいいんだ」とストレスがスッと消える感覚がありました。興味も縁もなかった経営の仕事だけどやってみたら天職だった、というのが実感です。

当時はまだ総合職の女性自体が少ない時代で、ましてや会社を起こす女性というのはもっと珍しい存在。女性社長ということでの取材も多く、会社のアピールになることは何でもやろうと積極的に受けました。結果的に広く知ってもらうきっかけになったので、その点で女性社長であることのメリットはあったと思います。その一方で、どんなに地道な営業活動や必死の努力を重ねても、「女だからいい思いができるんだろう」「ラッキーだね」と言われてしまう。いちいち気にしては身がもたないので聞き流すようにしていましたが、内心は「どれだけ努力しているかも知らないで」と悔しかったですね。

失敗を経験してこそチャンスは巡ってくる

失敗やピンチの経験も数え切れないほどあります。コンテンツ配信会社を立ち上げてインターネットでお笑いライブの生配信を始めた時には大失敗をしました。パソコンの小さな画面ではライブの魅力が十分に伝わらず、コンテンツがまったく売れなかったのです。失敗を失敗のままにはしたくないと考えた末に、「小さい映像がダメなら大きくすればいいんじゃないか」という逆転の発想から、映画館の大スクリーンを使ってお笑いライブを生中継してみたんです。これが大好評で、「タイタンシネマライブ」として2009年から現在も続く人気企画になっています。失敗やピンチに直面してこそ、新しいアイデアやチャンスは生まれる。今では、目の前に乗り越えるべき試練がないと、どこか物足りなく感じてしまうくらいです。

仕事をする上で大切にしているのは、寄せられる仕事の依頼や相談に対して、常にできるだけのことをすること。今すぐに応えるのが難しくても、頭の片隅に覚えておいて、どうすれば実現できるかを自分なりに考え続けます。そうやって仕事に向き合うことで、自分たちの活動の幅が広がり、新たなチャンスも巡ってくるんです。簡単に「できません」とは言いたくないですね。

ハーブ・アロマの専門店「ウィッチムーン」を阿佐ヶ谷で経営。「30代半ばであまりの忙しさから体調不良になり、仕事をしながら自分をケアできるものを探していて出会ったのがハーブでした。その延長線上でフラワーショップやリラクゼーションスペースの経営にもチャレンジしています」

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 悩んだり迷ったりするのは
踏み出したい気持ちがあるということ

私は何でも考え過ぎるタイプですが、決断に迷うことはありません。トップが決断しなければ会社は動けない。現状を変えたいという気持ちはあるけど、行動に移す決心がなかなかつかない人もいるかもしれません。でも悩んだり迷ったりしているということは、踏み出したい気持ちが心の中にあるということ。行動に移さないまま、「あの時こうすれば良かった」と後悔してしまったら、その先もずっと引きずってしまうかもしれません。後悔しないためにも、私は挑戦した方がいいと思います。

ただ、何かを新しく始める大変さは自分の経験からもよく分かるので、「何でもとにかくやってみるべきだ」と安易に背中を押すつもりはありません。大切なのは、「もし失敗しても後悔しない」と思えるところまでよく考えた上で決断すること。私自身、会社を立ち上げる時に「やれるところまでやって、それでダメなら後悔しない」と腹をくくれたからこそ、無我夢中で社長業に没頭し、結果につなげることができたのだと感じています。

成り行きで始まった社長業が私にとって天職だったように、自分には向いていないと思っていても、いざ始めてみたら合っていたということもあるはずです。たった一度きりの人生。無駄な経験はないと信じて、自分自身で決断し、一歩を踏み出してほしいと思います。

夢は、お笑いライブや映画を観ながら食事を楽しめるレストランシアターを開くこと。「今手掛けている事業をすべて統合する集大成として挑戦したいと考えています」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

右も左も分からず会社経営や営業活動に奔走していた時期。そのころの私が今もし目の前にいたら、痛々しくて見ていられないかもしれませんね。振り返れば、もっとうまく対処できたかもしれないと思うこともありますが、それはすべて、いくつも壁を乗り越えて経験値を積み上げてきた今の私だからこそ言えること。仮に当時の私に何かアドバイスできたとしても、経験値がない状態では、やっぱりうまくいかなかったと思うんです。毎日大変だし、30代はもっと忙しくなるけど、とにかく頑張れ私!と言うしかないですね。

編集後記

「人生は一度きり。悔いのない生き方を」と女性にエールを送りながら、「本当はもう少し女性が働きやすい社会だったら、挑戦する生き方をもっと自信を持って勧められるのだけど」と本音をのぞかせる場面も。さまざまな困難に直面しながらも自分自身の力で道を切り開いてきた太田さんならではの、率直で飾らない言葉が心に残りました。

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「自分らしいキャリアを生きる」先輩からのメッセージ

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