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Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜

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掲載日:2016年10月31日
更新日:2020年8月24日

過去4社での経験を糧に「フルグラ」の事業戦略に尽力
大切なのは、悩んで考え抜いたその先にアクションを起こすこと

長らく30億円台で頭打ちが続いていた「フルグラ」の年間売り上げを直近の3年間で200億円へと急成長させた立役者であり、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」では「ベストマーケッター賞」を受賞した、フルグラ事業部の事業部長、藤原かおりさん。そんな藤原さんが、マーケティングのスペシャリストとしてキャリアを築くべく最初の転職を決断したころから、4度の転職を経てカルビーへ入社するまでの道のりについて語っていただきました。

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カルビー株式会社 マーケティング本部 フルグラ事業部 事業部長藤原 かおりさん

1974年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、旭硝子株式会社に入社。新商材のビジネスデベロップメント業務に従事。2001年に外資系広告代理店の株式会社マッキャンエリクソンに転職し、ストラテジックプランナーとしてBtoCのブランディングに関わる。その後、株式会社電通の契約社員を経て、07年にダノンウォーターズオブジャパン株式会社に入社し、飲料ブランドのブランドマネジャーを担当。2011年カルビー株式会社に転職。12年より「フルグラ」のマーケティングに携わり、14年4月より現職。15年12月に日経WOMAN(株式会社日経BP社)主催「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」において、「ベストマーケッター賞」を受賞。

~28歳の時~ マーケティングを究めようと選んだ初めての転職
センスがものをいう広告の世界で奮闘

マーケティングという仕事に出会ったのは、新卒で旭硝子に入って2年目、本社のビジネスデベロップメント部に配属になった時です。ガラスの技術を使ってエレクトロニクスの分野で新たなビジネスを開拓する部署で、私はMBAを持つ上司の下で、広い意味でのBtoBマーケティングに携わりました。その上司の仕事のプロセスを見ていると、どんなに複雑にもつれ合った問題も、まるで知恵の輪を解くようにスルスルとほどけていくのです。マーケティングとは、今ある課題を解決することで世の中に良い影響を与えていける仕事だと感じ、そこに面白さを見いだしました。入社5年で転職を選んだのは、この先ジョブローテーションでいろいろな仕事を経験するよりも、マーケティングという分野でスペシャリストを目指したいと考えたからです。

身近なBtoCの分野でマーケティングの経験を積みたいと思い、外資系広告代理店のマッキャンエリクソンに転職しました。入社1年目は勉強することが膨大にあり、日々新しいことを学べる充実感に満ちていました。ところが2年目、いざ学んできたことを活かして成果を出すべき段階になって、仕事の厳しさに直面し苦しみました。自社製品があるメーカーとは違い、広告代理店は人が考え出す「アイデア」が売り物。それも、顧客が思い付かないような斬新なアイデアを提案することが常に求められます。努力した分だけ良い案が浮かぶというものではなく、どんなに頑張っても、私は人より優れたものを生み出すことはできないと痛感しました。自分で納得のいく仕事がなかなかできず、フラストレーションを抱えてばかり。もっと自分らしい仕事があるはず、という思いが募っていきました。それが28歳のころです。

この時たまたま幸運なことに、人事の部署にコーチングを勉強している人がいて、私は練習台として、個人的にコーチングを受けることになったのです。「次までに、自分が5年後どうなっていたいかを考えてきて」などと毎週課題が出され、それに対して一つひとつじっくりと考えて答えるうちに、自分の頭の中が整理されていくのを感じました。私はこの先どうなりたいのか、そのために何をすべきなのかがどんどんクリアになっていったのです。自分自身の将来像を具体的に描いたのは初めてのことで、とても良い経験になりました。

「コーチングを受けた際、10年後はマーケティングのスペシャリストとして、こんな人とこんな環境で働いていたい、と具体的に思い描きました。ちょうど10年後の38歳でフルグラの事業に携わり、『あの時、描いた未来にかなり近い!』と実感したのを覚えています」

~28歳から今~ 広告業界の視点、消費者側の視点
さまざまな立場を経験したことが今に活きている

再び事業会社で働きたいと、32歳の時にダノンウォーターズオブジャパンに転職しました。広告代理店からメーカーに移ることは一般的にハードルがかなり高いため、この時の転職活動はかなり苦戦しました。偶然マッキャンエリクソン時代の顧客がダノンウォーターズオブジャパンにいて、その方が「あの時はよくやってくれていたね」と私を覚えていてくださり、採用につながりました。思えば28歳のころ、なかなか満足のいく仕事ができず、毎日深夜まで無我夢中で働いていた日々が、思わぬ形で実を結ぶことになったわけです。

事業会社でコンシューマーマーケティングに携わるのは初めての経験で、いろいろな人に教えを請いながら学びに学びました。Webサイトを手掛けたり、キャンペーン用のノベルティの仕様を細かく決めたりと、広告代理店にいた時には想像もつかなかったほど業務は多岐にわたりました。本国に報告するためにレポートや調査データはすべて英訳する必要があり、それも大変でしたね。4年間にわたって経験を積む中で次第に、本国での規定がかっちりと決められた外資系ブランドのマーケティングから一歩踏み出して、日本の企業で、もっと自分の思い描く通りのマーケティングに挑戦してみたいと思うようになりました。そして2011年、4度目となる転職を経て入社したのがカルビーです。

朝食市場をターゲットに 「フルグラ」急成長の背景

当時カルビーは新しい栄養調整食品を手掛けていて、私はそのブランドマネジャーとして採用されました。ところが担当商品は1年で販売終了となってしまい、意気込んで転職したはずが社内で"無職"の状態に。そんな時に声を掛けられて加わったのが、「フルグラ」のプロジェクトでした。長らく30億円台で伸び悩んでいた年間売り上げを、最低でも100億円に伸ばすことがプロジェクトの使命。そこで、マーケティングのやり方をそれまでとは大きく変え、250億円のシリアル市場ではなく、17兆円の朝食市場をターゲットに据え、そこに「グラノーラ」という新しいカテゴリーを作り上げる戦略をとったところ、売り上げはどんどん拡大していきました。営業担当者にも意識改革を働きかけ、カルビーにとって「朝食」は、スナックと並ぶ第2の柱だという認識が社内に浸透していったことも大きかったと思います。

メーカーに身を置いていると、自分たちのものづくりに一生懸命になるあまり、消費者の視点をついつい忘れがちです。私はその点で、広告代理店時代に消費者インサイトの重要さを徹底的に学んだ経験がとても役に立っていて、自社製品を常に客観的に見られることは強みの一つだと思っています。

カルビーの看板商品の一つに成長した「フルグラ」。大がかりな広告宣伝を打つのではなく、全国のスーパーで試食会を開いたり、ヨーグルトとの組み合わせを提案したりと、知恵を凝らしたマーケティングを展開してきた。

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 悩んで悩んで考え抜いたなら、まずは動いてみる
「ありたい自分」に向かって一歩を踏み出す大切さ

2014年4月からフルグラ事業部の事業部長を務めていますが、打診された際はかなり迷いました。私の一番の望みはマーケティングのスペシャリストとして歩むこと。組織のマネジメントに時間をとられることなく、自分の好きなことだけに専念していたいと思ったのです。ただ、よくよく考えてみると、その「自分の好きなこと」をするためには、意思決定の権限が必要で、それを手に入れるにはマネジメントのポジションに就くことは避けては通れない。だったら、自分の好きなことを追求するためにも、引き受けようと決めました。

マネジメントの立場にいる今、見える世界は大きく広がり、以前よりもずっと仕事が面白いと感じています。メンバーそれぞれの個性や強みを活かしながらチーム一丸で目標に向かうプロセスは想像以上に楽しく、味わえる達成感も、1人で仕事に取り組んでいた時とは比較にならないほど大きいですね。メンバーとは常に双方向のコミュニケーションを心掛け、私も含め、チームの全員がハッピーに楽しく仕事ができる環境を整えることを意識しています。

私自身もそうでしたが、28歳前後はキャリアに悩みやすい時期だと思います。ただ、悩んで終わってしまう、という人も多いのではないでしょうか。私の場合は幸いにもコーチングを受けたことで、「ありたい自分」に向かって一歩を踏み出すことができました。悩んで悩んで考え抜いたなら、その先にアクションを起こすことはとても大切だと思います。もしかすると、そのアクションは望むような結果を生まないかもしれません。でも、たとえ失敗しても軌道修正は必ず利きます。4回の転職経験から、それは実感を込めて言えます。

人と会って話すことで伝わる感触があるはず

かつての私のように、「もっと自分に合う仕事があるはず」と模索している人には、いろいろな人に会って話を聞くことをおすすめします。関心のある分野のセミナーに出てみるのも良いですし、この人に会いたいと思ったら、ぜひ勇気を出してアポを取ってみてください。実際に会って話をしてみれば、その人がどんなふうに仕事に向き合っているのか、自分がその業界に向いていそうかなど、見えてくるものがあるはずです。転職活動も同じで、興味のある業界のドアをトントンとノックして中をのぞいてみる、という気持ちで話を聞きに行けばよいと思います。本やネットの情報ではなかなか分からない、「自分の肌で感じるもの」を確かめるためにも、アクションを起こすことを大切にしてほしいですね。

仕事をする上で一貫して持ち続けているのは「世の中のためになることをしたい」という思い。「カルビーの仕事を通して、ゆくゆくは世界の貧困や健康の問題を少しでも解決に導けるような仕組みを立ち上げられればと考えています」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

20代の私は周囲の声に流されやすく、「何歳までにこれをしないと」「何歳だからこれはもうできない」と、根拠のない年齢制限のようなものに惑わされていました。なんとなく20代のうちに転職しなければと焦り、いつも肩に力が入ってストレスも多く、今振り返るとかわいそうな気もします。本当は焦る必要など全然なくて、30代に入ってからも自分の力をより発揮できる仕事を求めて転職を実現できました。焦っていた私に「自分の価値観と自分のペースで、本当に望む人生を歩めばいいんじゃない?」と言ってあげたいですね。

編集後記

広告業界で力不足を痛感しながらも奮闘していた28歳の日々が、後に思わぬところで転職の後押しになったというお話が心に残りました。目の前の仕事にこつこつと地道に取り組んでいれば必ずどこかで見ている人はいる、というお話を取材で耳にすることが多いのですが、それを如実に物語るエピソードだと感じます。

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