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Age28 ~28歳から、今の私につながるキャリア~

Age28 ~28歳から、今の私につながるキャリア~ Age28 ~28歳から、今の私につながるキャリア~
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掲載日:2017年3月6日
更新日:2020年8月24日

価値観や優先順位はみんな違って当たり前
「自分の物差しを持てているか」を問い続ける

国内トップシェアのグループウェア開発会社であり、多様な働き方を可能にするさまざまな取り組みでも知られるサイボウズ株式会社。執行役員を務める中根弓佳さんは、小学生のお子さん2人を育てるワーキングマザーとして、「100人いたら100通りの働き方」というサイボウズのワークスタイルをまさに体現するお一人です。20代半ばでITベンチャーへと挑戦の場を移した理由や、キャリアを積む過程で常に自身に問い掛けてきたことについて、お話を伺いました。

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サイボウズ株式会社 執行役員・事業支援本部長中根 弓佳さん

1977年和歌山県生まれ。1999年慶應義塾大学法学部を卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社。2001年、サイボウズ株式会社に転職し、知財法務部門にて経営法務、契約法務、M&A、知的財産管理などを担当。2007年に第1子を、2009年に第2子を出産し産休・育休を取得。その後、人事、財務経理へと職務を広げ、現在は事業支援本部長を務める。2014年8月から執行役員。子どもは現在、小4と小1。

~28歳の時~ ベンチャーならではの裁量ある環境にやりがい
M&Aに携わり充実感をかみしめていた28歳

新卒で入った関西の大手エネルギー会社を退職し、サイボウズに入社したのは24歳の時です。きっかけは、大学時代から付き合っていた今の夫との結婚を考え始めたことでした。結婚後も働き続けたいという思いが強くあり、結婚生活を送ることになる東京で仕事に就こうと考えたのです。実は最初、転職エージェントからサイボウズを紹介された時、「私には合わないだろうな」と思いました。当時盛り上がりを見せていたITベンチャーには短期的な理想を見ている会社もあり、よいイメージを持つことができなかったからです。でも実際に面接に行き、良い意味で想像は裏切られました。「ITを使って世の中を便利にしたい、コミュニケーションを変えたい、役立つサービスを安価に届けたい」と、真剣に、そして実直に仕事に取り組む思いを聞きました。何より、私とそれほど年齢が違わない人たちが会社を運営していることや、小さな会社の中にいろいろな機能が凝縮され、圧倒的なスピード感で動いている様子に魅了され、あまり興味のなかったIT業界、サイボウズという会社に興味共感を覚えたのです。

振り返れば、大学時代の就職活動では、「どんな企業で働きたいか」という自分の物差しをもちつつも、「どのような企業に就職するのが一般的に幸せといわれるのか」という世間の物差しに影響されたところも多分にあったように思います。そんな中でも魅力的だと思える会社とご縁をいただき、そこで働くことができたことは本当にラッキーだったと思いますし深く感謝もしています。でも、人生のステージが変わろうとしていたこの時の転職では、「こうあるべき」が吹っ切れて、自分の判断基準だけで決めることができた。それは私にとって大きな意味を持つ出来事でした。ベンチャーなのでこの先どうなるかは分からない。でも1度しかない人生、真に自分が心ひかれるものに時間を費やしたいと思ったのです。

サイボウズに入社後は知財法務の仕事に携わりました。まだ会社規模も小さく、その部署は私だけ。重要なことも、上司から「あなたが決めていいよ」と言われ、「ベンチャーで働くって、こういうことなんだ!」と気付き、それが楽しいと感じたのです。この自分自身が楽しいと思えることは何かという気付きは収穫でした。不安に駆られるようでは、ベンチャーではやっていけなかったかもしれませんね。失敗を許してくれる環境にも後押しされました。

28歳の時は伸び伸びと働いていました。M&Aの業務に携わり始め、日々新しいことを学びながら自分のスキルが目に見えて向上していくことがうれしくて仕方ありませんでした。将来的には意思決定に関わるような仕事をしたいと考えるようになったのもこのころです。私が充実感を味わいながら仕事に熱中していた一方で、社内の離職率は28%にまで上昇していました。積極的なM&Aで会社の規模や売り上げは急拡大した半面、社員の気持ちはばらばらになってしまっていたのです。私自身は仕事が楽しいのに、会社は日に日に混沌としていく。そんな時期でした。ただ、この違和感。当時私は視野が狭く、自分の目の前の仕事が面白いか、しか見えていなかったなと、今振り返れば思います。

M&Aの交渉相手の多くは、自ら会社を起こし、育ててきた人たち。「事業への思いや、従業員の幸せを真剣に考える姿勢、覚悟の強さ、そして同時にその失敗も含めて目の当たりにして、事業を経営するとはどういうことかと、教えていただきました。20代でそうした交渉の場に身を置けたことはとても貴重な経験でした」

~28歳から今~ 育休からの復帰を前にして募った不安
復職を後押しした社長、夫からの言葉

30歳で1人目を出産し育休に入りましたが、離職率が高い職場、その間も聞こえてくるのは、誰々が辞めたという話ばかり。復職を前に不安はどんどん募り、戻らないほうが良いのかもしれないと正直悩みました。そんな私に夫は「人からの伝聞で判断せずに、戻って自分の目で確かめてから決めたほうがいい」とアドバイスをくれました。社長の青野からも「僕は会社を変えていきたい。一緒にやろうよ」と声を掛けてもらい、それで心が決まり復職を選択しました。

サイボウズで取り組み続けるワークスタイルの変革

それ以降、サイボウズでは多様な働き方を実現するための仕組みや制度を拡充してきました。私も2度目の育休から復帰した2010年ごろから、人事部門にも業務の幅を広げ、ワークスタイルの変革に関わってきました。人事の仕事に携わる上で、過去にM&A業務で多くの経営者と接した経験や、私自身の子育ての経験も大きく影響していると感じます。中でも大きいのは、事業に関わる一人ひとりが、家族や周りの人たちに愛されて期待されて育ち、それぞれに人格や価値観を培ってきた大切な存在であると、心から感じられたこと。当たり前のようで忘れがちなその事実を心に刻んで人と接するようになりました。

サイボウズには今、働く場所や時間にとらわれない「ウルトラワーク」や、9つのパターンから働き方を自由に選択できる制度などがあり、私自身もこれらを活用して仕事を続けています。その一方で、大学でともに学び、大手企業に入社した優秀な女友達の中には、結婚や妊娠を機に、それまでのような働き方は続けられないと退職を選んだ人も少なくありません。その知らせを聞くたびに感じた言いようのない悔しさやもどかしさは強く胸に残っていて、それは今、ブランクのある女性の再就職を支援する「キャリアママインターン」や環境づくりなど、女性も含めたあらゆる人が活躍できる環境づくりに取り組む私自身の大きな原動力になっていると感じます。

日本橋にあるサイボウズのオフィス。「Park」と名付けられたエントランスを抜け、虹色の橋を渡った先に、ワークスペースやミーティングルームが並ぶユニークなつくり。異なるワークスタイルの社員同士がチームワークを発揮して仕事に取り組めるよう工夫されている。

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 何を・いつ実現したいのか
自分の物差しで選び取ることを大切に

転職なども含めて自分の物差しで決める経験を積めたのですが、その後再び、他人の物差しに影響されている自分に気付かされる場面がたびたびありました。「管理職とはこうあるべき」「母親とはこうあるべき」などと、仕事でもプライベートでも無意識のうちに固定観念に縛られているな、と。それを自覚してからは意識的に「私自身の物差しではどうだろう」と考えるようにし、他人の物差しや価値観を知りつつも、自分の決断は、自分の物差しで行えているかを意識するように。実は最近まで「理想の管理職像」にとらわれていたことにも気づきました。私の周囲には、尊敬できる経営者やマネジャーがいます。でも私はそのヒトにはなれない。でも私には私の強味がある。自分の強みを活かせるマネジメントスタイルを築いていくことが大事だと考えられるようになりました。

自分の物差しを持つことは、女性が働き続ける上でも大切だと思います。キャリアに悩みや不安を抱えているのであれば、仕事において自分が何を大切に思い、短期的・長期的に何を実現したいのかを、自分自身の物差しで一度整理してみることをおすすめします。キャリアアップや自己成長、ワーク・ライフ・バランス、一緒に働く仲間、金銭報酬、社会貢献など、何に重きを置くかは人によってみんな違います。自分は何が得られると幸せに生きられるのかを考えることで、次の選択肢は見えてくるのではないでしょうか。例えば、仕事と子育てを両立して働きたいけれど今の会社にその環境がなかった場合、短期的にはそれがどうしても大事なのであれば、会社を移ることが現実的かもしれません。でも、もしそれが長期的にかなえたい希望であるのなら、世の中の大きな流れを考えても、会社が変わる可能性にかけてみる価値は大いにあると思います。今の仕事や仲間に魅力を感じているのであればなおさらです。

価値観も優先順位も人それぞれで、正解を誰かが教えてくれるものではありません。仕事のどんなところに価値を感じ、どんな働き方をしていきたいのか。それを自分で考えて主体的に選択することが、自分らしいキャリアや自分らしい生き方にきっとつながっていくのだと思います。「こうあるべき」という考えに惑わされず、「私の物差しではどうだろう?」と自分に問い直すことをぜひ習慣付けてみてください。

社会人になってから今日まで、仕事に対して変わらず持っているのは「自分が楽しいと思うことをやるべき」という考え。「苦しいことがたくさんあっても、人から問われたときに『この仕事が楽しい。好き』と言えるかどうか。折に触れて自分の胸に尋ねています」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

伸び伸びと仕事を楽しんでいた時期で、正直なところ、周りが次々に辞めていくことについてあまり理解できなかった部分があります。自分のスキルアップを実感できることに大きな喜びを感じていましたが、今振り返ると、視点が低かったなと思います。あの場面で気づくべきだったのは、私のスキルを伸ばすこと以上に、皆で将来的に達成したいことを見据えてM&Aなど事業を進められているかということ。当時はまったく思い至りませんでした。自分の未熟さを恥ずかしく思うとともに、そのことに気付ける今、役割や立場が私を育ててくれたのだと実感します。

編集後記

執行役員として、そしてバックオフィスの責任者としてサイボウズのチームワーク向上に力を注ぐ中根さん。「自分の物差しで測れているか」「仕事を楽しいと言えるか」を折々に自問するというお話が心に残りました。シンプルでいて、本質を突くこの問い。迷ったときこそ思い起こして、自分に投げ掛けたいと思います。

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