Age28 ~28歳から、今の私につながるキャリア~
掲載日:2017年3月20日
更新日:2020年8月24日
どんな仕事にも「私が関わる意味」を刻み続けたい
その積み重ねが信頼やチャンスをもたらしてくれる
ウエディング業界の常識を覆す完全オーダーメイドのオリジナルウエディングを提供する「CRAZY WEDDING」。創設者の山川咲さんは、28歳の時に業界経験ゼロから起業。わずか1年足らずで人気ブランドに育て上げました。なぜ「人生をささげていた」という会社生活にピリオドを打って起業を選んだのか、業界で「絶対に無理」と言われ続けたオリジナルウエディングの実現へと自身を突き動かしたものは何だったのか。山川さんに語っていただきました。
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「CRAZY WEDDING」創設者山川 咲さん
1983年東京生まれ。大学卒業後、ベンチャーの人材コンサルティング会社へ入社。人事新卒採用担当責任者として人事に携わった後、採用系のコンサルタントを務める。5年間勤務した後に退職し、オーストラリアへの一人旅を経て、帰国後の2012年7月に株式会社CRAZYを創業。完全オーダーメイドウエディングのブランド「CRAZY WEDDING」を立ち上げ、1年足らずで人気ブランドへと成長させる。2016年に「CRAZY WEDDING」の代表の座を退き、現在は起業家として新たな世界に挑んでいる。2016年5月に毎日放送「情熱大陸」に出演。著書に『幸せをつくるシゴト』(講談社)がある。
~28歳の時~
わらをもつかむ思いで旅に出た海外で
見えてきた「本当に大切にしたい生き方」
新卒から勤めたコンサルティング会社を退職したのは27歳の時です。その会社はベンチャーだったこともあり、私は入社2年目から採用担当の総責任者に。寝る暇も惜しんで働きました。仕事も会社も大好きで、この会社に骨を埋めると決めて近くにマンションを買ったほど。自分が採用に関わった後輩社員がどんどん増え、その最後の一人が辞めるまでは会社に居続けようと心に決めていました。その思いが大きく変わったきっかけは、妊娠と流産を経験したことです。喪失感や罪悪感で心身ともぼろぼろの状態でも、当然ながら会社は会社の都合で動いていくという事実に直面して、私は一人の従業員に過ぎないのだと思い知らされることに。大好きな会社だったからこそ、心に生じた違和感を消すことができず退職を決めました。それから1週間もしないうちにオーストラリアに旅立ったのに深い理由はありません。このままでは自分がダメになる気がして、わらをもつかむ思いで、這うように出発した旅でした。
オーストラリアでの約20日間の一人旅は、人生を捉え直す大きな転機になりました。私はそれまで人材コンサルタントとして企業にアドバイスする立場を務めていたのに、海外に来たら、切符1枚買うにも苦労の連続。自分がちっぽけな人間だと気づかされました。その一方で、旅先で出会う人たちから「君の笑顔はすごくいいね!」と声をかけられ、すべてを失ったと思っていた私にも、誇れるものがちゃんとあるのだと感じることもできました。会社勤めをしていた5年間、私はずっとキャリアや給与が上がっていくことが正しいことだと信じて疑いませんでした。でも、いつもとまったく異なる旅先の環境に身をおいた時、私が本当に大切にしたい生き方は、もっと別のものだと気づいたのです。
さかのぼれば幼少期から、私は個性を消そうとして生きてきました。家族全員で日本中をワゴンカーで旅する暮らしをしたり、自然豊かな土地に住んで薪でお風呂を沸かすような生活を送ったりと、特殊な環境で育つ中で、「なぜ私はほかの子と違うんだろう」という葛藤がいつもありました。どうすればみんなと同じになれるのか、認めてもらえるのか、そればかりが気になり、だからこそ人一倍努力して結果を出そうと頑張り続けてきました。ところがオーストラリアでは「あなたのそのままの個性が素晴らしい」と言ってもらえる。長年にわたって葛藤と努力を続けてきたこれまでの自分を認めた上で、「これからは私にしか生きられない人生を生きよう」という気持ちが強く湧き上がってきました。「意志を持って生きる人を世の中に増やしたい」という思いから、帰国後に会社を起業。思いを実現するための方法として選んだのがウエディング事業だったのです。
「人生は何かのきっかけでいきなり変わるものではなく、それまでに積み重ねてきたものをきちんと整理できた時に、次のステップへとはじける瞬間がある。それが私にとって、28歳だったのだと思います」
~28歳から今~
「非効率」と正面から向き合うことが
自分を深く見つめ直す機会になる
「CRAZY WEDDING」では完全オーダーメイドのオリジナルウエディングをプロデュースしています。日本人は学校でも会社でも、決められた枠の中で行動することがほとんどなので、完全オーダーメイド、つまり「すべて自由」であることに戸惑うお客さまも少なくありません。ビジネスとして効率が悪いのも事実です。それでも、「意志を持って生きる人」を一人でも多く増やすことを理念とする私たちにとって、どんなに非効率でも、大変でも、この「制約なし」のスタイルを貫くことが重要なのです。
効率的が良しとされる世の中で「非効率」を貫く
効率的であることが良しとされる今の世の中で、効率を追求した結果、自分自身がどこに進みたいのか分からなくなって悩む人は多いように感じます。あえて非効率と正面から向き合うことで、自分を見つめ直したり、自分自身に問いをきちんと投げかけたりする機会が生まれます。そうやって時間をかけて、お互いに本音で対話を重ねながら、新郎新婦が自分たちらしさを表現できる結婚式をスタッフといっしょに実現していく。その体験や記憶は、新郎新婦にとって、この先の人生において新しいチャレンジへと踏み出す際の勇気につながると私は思っています。
2016年に「CRAZY WEDDING」の代表の座を退きましたが、今後もCRAZYのチームの一員として挑戦を続けます。起業時に「絶対に無理だ」「常識外れだ」と言われ続けた完全オーダーメイドのウエディングを軌道に乗せられたように、この先も、世の中から見ればクレイジーでも自分たちが理想だと信じていることに、正々堂々と挑んでいく場所がこのCRAZYだと考えています。妥協せず、あきらめず、信念を持ってやり通した先に、私たちがクレイジーだと言われなくなる世の中はきっと実現すると信じています。
墨田区内にある株式会社CRAZYのオフィスは、すべて自分たちの手でリノベーションした個性あふれる空間。1階にはカフェが併設され、地域の人々の憩いの場にもなっている。
~28歳の働く女性へのメッセージ~
意志のある生き方・働き方への第一歩は
今いる場所で存在価値を磨くこと
起業してからこれまで、泣いたことや悔しい思いをしたことは数え切れませんが、「失敗したことは?」と聞かれても一つも思い浮かばないんです。たとえうまく行かない時でも、立ち止まっている暇なんてなく、そこであきらめる気もなかったので、失敗をしたという感覚がまったくないからです。心から何かを強く願ってチャレンジをしたならば、結果が思い描いた通りでなくても、そこに後悔はないし、前に進むことをやめようとも思わない。逆に、最初から挑戦しなかったとしたら、それこそが失敗です。だから私には、挑戦しない理由がないのです。
意志のある生き方・働き方をかなえるために、私が大切だと考えているのは、どんな場所でも常に自分の存在価値を磨き続けること。つまり「特別な存在」になることです。それは必ずしも、大きな仕事を担うとか、重要なポストに就くといった意味ではありません。例えば何か書類を作成するにしても、あるいは飲み会を一つ企画するにしても、「あなたにお願いするとレベルの高いものに仕上がるよね」と思ってもらえるようなアウトプットを出せるかどうか。その積み重ねが、周りの人からの信頼を生み、次のチャンスに結びつくのだと自分の経験からも思います。
自分の人生を動かすのは自分自身
日々の積み重ねが未来につながるということは、見方を変えれば、今の自分に任された仕事や立場というのは、過去の自分がつくり上げた結果だということ。そう考えると「仕事が面白くない」なんて嘆いている場合じゃないですよね。目の前の小さな仕事にも「私が関わることの意味」を刻印し続けていくことで、やがてはそれが回り回って自分の背中を押してくれる力になると思うのです。日々の仕事や生活のあらゆる場面に自分の意志を注ぎ込み、「今の私」は過去の自分がつくり上げてきたものだと責任を持つこと。そうすることで、自分の人生を動かすのは自分自身にほかならないと実感できるのではないでしょうか。
2017年夏に出産を控えて仕事をセーブ中。「かつて結婚式に感じたのと同様に、医療や保育に関しても『そのフォーマットは本当に必要?』と疑問を感じることは多い。この先、必然的に育児に関連した事業に挑むことになる気がしています」
大好きな会社を辞めることに、当時はすごく悩んだし苦しみました。でも今となっては、心に生じた違和感を無視せず、行動に移した自分を褒めたいですね。もしあの時、理屈を優先していたなら、義理も愛着も責任も感じている会社を辞める選択にはならなかった気がします。理屈ではなく直感を信じて行動したから今がある。理論で考えると、どうしても妥協案や折衷案になりがちですが、「理屈ではそうかもしれないけど、それじゃあ自分に嘘をつくことになっちゃうよね」
約60名のスタッフの大部分はブライダル業界以外の出身で、うち2割は、新郎新婦として「CRAZY WEDDING」で式を挙げたことを機に仲間に加わった人たちだそう。自らの意志で人生を切りひらく山川さんの、トレードマークであるはじけるような笑顔が周りに広がり、思いを共有する仲間が増えていく様子が伝わるエピソードです。
「自分らしいキャリアを生きる」先輩からのメッセージ
Age28 28歳から、今の私につながるキャリア Indexへ
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#35
何が正解かなんて誰にも分からない
大切なのはとにかく精いっぱい考えて悩んで、自分自身で決断すること
長野 智子さん 報道キャスター/ハフィントンポスト日本版編集主幹 -
#34
どんな仕事にも「私が関わる意味」を刻み続けたい
その積み重ねが信頼やチャンスをもたらしてくれる
山川 咲さん「CRAZY WEDDING」創設者 -
#33
価値観や優先順位はみんな違って当たり前
「自分の物差しを持てているか」を問い続ける
中根 弓佳さん サイボウズ株式会社 執行役員・事業支援本部長 -
#32
未知への挑戦を繰り返してこられたのは“人に有益な情報を伝えたい”という変わらない思いがあったから
千田 絵美さん 株式会社フロントステージ 代表取締役 -
#31
「やったことがない」は、「やらない」理由にはならない
何歳になっても仕事こそが私を成長させてくれる
平田 静子さん
株式会社サニーサイドアップキャリア 代表取締役社長 -
#30
働くママにとって、地域のつながりはセーフティネット
当事者として実感した28歳は私のキャリアのターニングポイント
尾崎 えり子さん
Trist 代表/株式会社新閃力 代表取締役 -
#29
過去4社での経験を糧に「フルグラ」の事業戦略に尽力
大切なのは、悩んで考え抜いたその先にアクションを起こすこと
藤原 かおりさん
カルビー株式会社 マーケティング本部 フルグラ事業部 事業部長 -
#28
「同じ女性」「同じ28歳」でも一人ひとりはみんな違う
他人と比べて苦しむのではなく、違いを楽しみ面白がる発想を
深澤 真紀さん
コラムニスト/淑徳大学人文学部客員教授/企画会社タクト・プランニング代表取締役社長 -
#27
20代も今も、変わらず悩み続けている
違うのは、壁を越えた先に成長があると今は思えること
今井 道子さん 「PRESIDENT WOMAN」編集長 -
#26
28歳の時の転職でキャリアの軸が定まった
その後も迷わず進めたのは、あの決断があったから
鈴木 貴子さん エステー株式会社 取締役 兼 代表執行役社長 -
#25
自分という限られたリソースの中で目的(What)と手段(How)を磨き
前に進んでいくことこそが、私にとってのキャリア
槌屋 詩野(つちや・しの)さん 株式会社HUB Tokyo 代表取締役 -
#24
肩書にとらわれず、自分が果たすべき役割に集中
見えてきたのは“自分らしい”リーダーシップのあり方
井川 沙紀さん ブルーボトルコーヒージャパン合同会社 取締役 -
#23
過去の自分が何に悩み、どんな思いで決断したのか
その記録の積み重ねが、未来へ向かう支えになる
佐藤 友子さん 「北欧、暮らしの道具店」店長 -
#22
仕事とは、本当の自由を手に入れるための手段
自分の可能性を信じて、チャレンジすることをあきらめないで
柴田 文江さん プロダクトデザイナー -
#21
「WANT」に根ざした選択の方が人は力を発揮できる
自分が「やりたい」と思う気持ちを大切に
藤本 あゆみさん 一般社団法人at Will Work 代表理事 -
#20
真剣に打ち込んだものには、またいつでも戻っていける
だから安心して、その瞬間に一番ワクワクすることに素直に
奥田 浩美さん 株式会社ウィズグループ 代表取締役社長 -
#19
「仕事は長距離走」と覚悟を決めて
築いたキャリアは人生の危機を脱する力になる
川崎 貴子さん 株式会社ジョヤンテ 代表取締役 -
#18
仕事によって「自分という人間」がつくられていく
女性版「週刊文春」発売に至る道
井﨑 彩さん 「週刊文春」編集部次長 -
#17
自分自身で「どう歩くか」を意識し、大切にすることで、
道順は違ってもやがて目指していた場所へと近づいていける
山崎 直子さん 宇宙飛行士 -
#16
仕事も、人生も、発信するほど豊かになる
プライベートでも興味を持ったことにはどんどん手を出してほしい
粟飯原 理咲(あいはら りさ)さん アイランド株式会社 代表取締役社長 -
#15
21世紀のキャリアは「山歩き」のように
どう生きるのかを考えながら人生を味わって
安藤 美冬さん 株式会社スプリー代表 -
#14
人生の分岐点は繰り返し訪れるもの
軌道修正は利くはずだから、「自分が選択した道が一番正しい」と信じて
片山 裕美さん 株式会社幻冬舎 女性誌事業部 部長 -
#13
自らの経験をきっかけに『「育休世代」のジレンマ』を執筆
「発信する人」として多彩な活動を続けていく
中野 円佳さん 女性活用ジャーナリスト/研究者(株式会社チェンジウェーブ) -
#12
チャンスは思いがけない時に、思いがけないところからやってくる
それをつかむかどうかは自分次第
大門 小百合さん 株式会社ジャパンタイムズ 執行役員編集担当 -
#11
28歳のころには想像できなかった仕事をしている
すべてが将来へのプロセスだから、今を悔いなく
甲田 恵子さん 株式会社AsMama 代表取締役社長・CEO -
#10
ビジョンやロールモデルはあえて持たない
「先が見えないこと」を楽しんでいたら発想が自由になり、可能性も広がった
閑歳 孝子(かんさい たかこ)さん 株式会社Zaim 代表取締役 -
#09
もがいていても目の前の仕事と真正面から向き合う
その経験の意味は、後から必ず実感できる
太田 彩子さん 一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事 -
#08
キャリアとは自分の「好き」を探す旅
選択肢を増やすためにも前倒しで挑戦を
岡島 悦子さん 株式会社プロノバ 代表取締役社長 -
#07
「やるなら一番素敵に」 という野心を持ち続けよう
経沢 香保子さん 株式会社カラーズ 代表取締役社長 -
#06
“あらゆる沼”に足を踏み入れて、今がある
幸せの見つけ方は一人ひとり違っていいはず
羽生 祥子さん「日経DUAL」編集長 -
#05
まったく興味がなかった社長業が私にとって天職だった
無駄な経験はないと信じて、一歩を踏み出して
太田 光代さん 株式会社タイタン 代表取締役社長 -
#04
遠回りや失敗だと感じていたことが目指すキャリアへの扉を開く鍵に
田島 麻衣子さん 国連職員 -
#03
思い描いたビジョン通りになる人はほとんどいない
目の前の仕事の延長線上にキャリアはできていく
浜田 敬子さん 株式会社朝日新聞出版 アエラ編集長 -
#02
仕事をする上で譲れないものとは?その“物差し”は人それぞれ違っていい
篠田 真貴子さん 株式会社東京糸井重里事務所取締役CFO -
#01
昨日よりも今日、会社の役に立っているか?「やり遂げたい」という“志”を強く持つ
佐々木 かをりさん 株式会社イー・ウーマン代表取締役社長 - more