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Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜

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掲載日:2016年1月25日
更新日:2020年8月24日

仕事も、人生も、発信するほど豊かになる
プライベートでも興味を持ったことにはどんどん手を出してほしい

「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」など、女性から支持を集めるポータルサイトを企画・運営するアイランド株式会社の粟飯原理咲さん。「こんなサービスがあったらいいな」というアイデアを20代の会社員時代から個人で次々と形にし、28歳のときには本業以外に6つの個人プロジェクトを抱えていたといいます。一方で、会社では提出する企画がことごとく却下され、涙した日もあったとか。そこから得たものや、生み出したアイデアを実現してきた方法を伺いました。

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アイランド株式会社 代表取締役社長粟飯原 理咲(あいはら りさ)さん

1974年生まれ。筑波大学第一学群社会学類を卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。勤務の傍ら個人活動としてグルメメルマガ「OL美食特捜隊」や、読書サイト「くちコミ読書カフェ『Hon-Cafe』」などを手掛ける。2000年に株式会社リクルートに転職し、次世代事業開発室、事業統括マネジメント室を経て、情報サイト「All About」に出向しマーケティングプランナーを経験。03年7月よりアイランド株式会社代表取締役社長。「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」などのポータルサイトを立ち上げる。日経WOMAN誌選出「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2000年度ネット部門第1位、03年度同賞キャリアクリエイト部門第6位受賞。

~28歳の時~ 2000年代前半のインターネットを舞台に
悩み、苦しみながらも“適想適所”を意識してさまざまなアイデアを実現

これまでに転職、出向、そして独立と、働く環境は何度か変わっていますが、「インターネットサービスの新規事業を考える」という仕事に携わっている点は、社会人になってから今日まで一貫しています。やりたいサービスを実現するために、そのサービスに合う場所を選んできたと言うこともできるかもしれません。私は会社員時代からプライベートでいくつかのサイトを運営していたのですが、それは会社で新規事業の企画提案がなかなか通らずに苦戦していた時に、「企業が手掛けないような小規模のプロジェクトなら、個人ですればいいんだ」と気付いたのがきっかけです。

インターネットの良さは、少ない投資でも新しいサービスをスタートできるところ。20代半ばから食べ歩き情報を配信するメルマガ「OL美食特捜隊」や、オンラインで寄せ書きをするサイト「よせがきコム」(後に楽天株式会社に売却)、読書の感想をアップするサイト「くちコミ読書カフェ『Hon-Cafe』」などを運営していました。

事業規模の大きな企業では、おのずと新規事業への予算も大きくなるため、企画を通すまでに1〜2年かかることも少なくありません。特にリクルートでの1年目だった26歳のころは新規事業の部署にいたのですが、出す企画にことごとくダメ出しを受けていました。もちろん大変ではあったのですが、なぜ通らないのかを突き詰めて考えていくと、通る企画にするために必要な要素や、効果的なプレゼンの仕方などが見えてくるようになりました。あの時、苦しみながらも企画を考え続けたことが、後に会社を立ち上げてから、サービスで大きな失敗をしないでいられる理由かもしれません。

28歳は、自分史上、一番忙しかった時期です。本業では、2社目であるリクルートで総合情報サイト「All About」のマーケティングプランナーとして働き、個人では「OL美食特捜隊」を含む6つのプロジェクトを同時進行させていました。会社でもプライベートでも、新しいサービスをひたすらつくる毎日。夜遅くに会社から帰った後、個人で手掛けるサービスのユーザーから届いているメールに返事をし、さらに朝は出社前にメルマガの原稿を書いて…。今思い返すと、よくあんなに頑張れたなと思いますが、やりたいことを片っ端からしようという気持ちが強かったんです。とにかく企画を立てて実行するということが好きで、20代前半には友達とイベントの運営もしていました。その舞台がWebとなったということです。このころから、会社でできるアイデアは会社で、個人ですべきアイデアは個人で実現するという意味で、「適材適所」を応用した「適想適所」を意識するようになりました。

「大学は文系の学部で、インターネットに初めて触れたのは1996年、社会人になってからでした。以来ずっとインターネットの世界でサービスを手掛けていますが、インターネットにこだわってきたというよりも、自分がやりたいことを実現しやすいのがこの世界だったという感じです」

~28歳から今~ おとりよせのサービスを実現するために独立
オンラインにとどまらない「リアルな場」を大切に

リクルートを辞めて独立したのは29歳のときです。もともと起業を目指していたわけではなく、自分がやりたいサービスを実現するために必要なステップが独立だった、というのが率直なところですね。それまで準備を進めてきたおとりよせの口コミポータルサイト「おとりよせネット」を本格的に立ち上げるにあたって、全国の事業者さんとやりとりをする上で、法人であった方が良いだろうと判断したのです。

最初は本業としてサービスに携わっているのは私1人で、他のスタッフは休日などを使って関わってくれていました。「全部の時間をサービスづくりに使えて幸せ」と喜んでいたのですが、3年ほど経ち、スタッフも増えたある日のランチで、「私はサービスだけではなく、会社の制度や文化もつくらなければならないのだ」と気付きました。スタッフと社外の人との会食の場だったのですが、私が自分の運営しているサービスの話ばかりに熱中していた一方で、スタッフは「アイランドの社員として」という言葉を使って話していたのです。それまではサービスには夢中だったけれど、会社自体を強く意識したことがなかったので、驚いたのを覚えています。それからは、スタッフが気持ちよく仕事ができるよう、会社としての文化や制度を育てていくことを意識するようになりました。

「おとりよせネット」に続いて2005年、31歳の時に料理レシピのブログを集めたポータルサイト「レシピブログ」を、06年には朝時間の充実をテーマにした「朝時間.jp」をスタート。現在もこの3つのサービスを軸に事業を展開しています。今特に力を入れているのは、ユーザーの方々と実際にお会いしコミュニケーションをしながら新しいサービスを一緒につくっていくこと。そこで12年に「外苑前アイランドスタジオ」というキッチンスタジオを構え、お料理イベントをはじめとするリアルなコミュニケーションの場づくりを進めています。

自分から情報を発信することが貴重な財産になる

私がこれまでのキャリアを通して強く実感しているのは、「仕事も、人生も、自分から発信をすればするほど豊かになっていく」ということです。食べ歩き情報のメルマガをしていたとき、いろんな人から「ネタが尽きてしまわないの?」と尋ねられました。でも実際は全くの逆。メルマガが話題になったことで、社内で面識のなかった人からおすすめの店を教えてもらえたり、メルマガの読者と食材生産地を訪ねる機会を持てたりと、食を通じた知り合いがどんどん増え、それはおとりよせネットの立ち上げにつながる貴重な財産になりました。また、読書のサイトを手がけたことで作家さんや出版社とのやりとりができ、それが今の会社での広報活動にも活きています。仕事でもプライベートでも、自分の興味があることを日常的に発信することを大切にしています。

「レシピブログから生まれた雑誌『レシピブログmagazine』(扶桑社)はシリーズ累計で45万部を突破しました。Webコンテンツと違い、紙媒体やリアルなイベントは後から修正がききません。その怖さを感じたことで、Webコンテンツに対しても覚悟のようなものが生まれ、クオリティを高める機会になりました」

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 仕事でつらいことや落ち込むことがあっても
周りの評価ばかり気にせずに「ゆるく自分を認め続ける」ことが大切

仕事をする上ではつらいことや落ち込むこともありますが、そんなときこそ、自分を客観的に見る視点が大切です。私もリクルートでの1年目は上司によく怒鳴られ、そのたびにショックを受けて泣きそうにもなりましたが、まず周りの同僚に「また怒られちゃいましたよ 笑!」と明るく振る舞い、後からこっそり怒られた理由を考えるようにしていました。一度笑いに変えることで、自分を客観視できて、状況を冷静に捉えられるからです。今も経営者として何かトラブルや困難に直面したときには、いったん状況を笑いに変えることを意識しています。

上司に叱られてばかりいた時期も、企画を考えること自体が楽しかったから、やっていけた気がします。「これがあるから頑張れる」というポイントが見つかるのなら、それを指針にして、他の大変なことは「大したことではない」と割り切ってしまうことも必要ではないでしょうか。周りの評価ばかり気にしていては苦しくなってしまいます。自分自身が少しでも成長していると感じるのであれば、「ちゃんと私は前に進めているんだ」と、ゆるく自分を認め続けてあげることも大切です。

キャリアについてストイックになりすぎる人は多いですが、自分の経験から言えるのは、28歳前後の時期こそミーハーになって、自分がやりたいことにどんどん手を出してほしいということです。私の座右の銘は「地に足のついたミーハー」なのですが、今の仕事と一見関係のなさそうなことでも、実際に始めてみることで、新しい仲間に出会えて世界が広がったり、自分の新しい可能性に気付けることがあります。振り返ってみると、食べ歩きや読書など、それぞれ全く関係のないジャンルをプライベートで手がけてきたことが、後になって全部つながりました。28歳というのは、自分の世界を広げるきっかけとして、興味を持ったことをやってみるのに適した時期だと思います。

「仕事で大切にしているのは、自分の感情を一定に保つこと。感情的に波があるトップの下では、メンバーも揺れてしまいます。20代のころは作業に没頭すると話しかけられても気付かないこともありましたが、今はできるだけ、没頭する作業は自宅にして、オフィスではみんなが話しかけやすいような状態でいようと心掛けています」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

企画が全然通らなかったことも含め、20代はとにかくたくさん失敗しました。でも失敗の原因をきちんと自分で分析することができれば、それは次に活きて、もっと大きな失敗をせずにすむ。だから当時の自分には「失敗ばかりでも気にすることないよ。将来きっと糧になるよ」という言葉をかけて、安心させてあげたいですね。失敗は成功のもと、という言葉は本当にその通りだと思います。私もたくさん失敗したことで、企画書の書き方や、失敗しないサービスのつくりかたが見えてきて、それは会社を立ち上げてからとても役立っています。

編集後記

「正直なところ、今までキャリアアップというのは考えたこともなくて」と笑う粟飯原さん。「目の前にあるやりたいサービスにひたすら打ち込み、それに合う場所を探し続けてきた感じですね」と語るその表情は生き生きとして、粟飯原さんの座右の銘である「地に足のついたミーハー」そのままの魅力的な人柄が伝わってきました。

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