失業手当(失業保険)をもらいながら職業訓練は受けられる?延長や給付制限解除など仕組みを解説
監修者:社会保険労務士 北 光太郎(きた・こうたろう)氏 (きた社労士事務所 代表)
職業訓練は、失業中の人が再就職に必要な知識やスキルを原則無料で習得できる公的制度です。条件を満たせば失業手当(失業保険)を受給しながら通うことができます。また、職業訓練の受講中は給付期間の延長や給付制限期間の解除といった優遇措置も用意されています。本記事では、職業訓練を活用して失業手当(失業保険)を受け取るための条件やメリット、申し込みの流れを分かりやすく解説します。
なお、本記事内の「職業訓練」は、失業手当(失業保険)を受給している方へ向けた「公共職業訓練」を指します。
この記事のまとめ
- 職業訓練は失業手当(失業保険)を受給しながら通うことができ、条件を満たせば訓練修了まで給付期間が延長される。
- 自己都合退職に適用される給付制限期間が解除され、すぐに手当がもらえる。
- 職業訓練の受講中は求職活動実績とみなされる。
職業訓練(公的職業訓練)は失業手当(失業保険)をもらいながら受講できる
職業訓練(公的職業訓練)は、失業手当(失業保険)の受給資格がある方であれば、失業手当(失業保険)をもらいながら受講することができます。
また失業手当(失業保険)は通常、あらかじめ決められた日数分までしか受け取れません。しかし、職業訓練を受講している場合は本来の給付日数が終了した後も訓練が修了するまで支給が延長されます。
経済的な不安を軽減しながらスキルアップに専念できるため、未経験の分野に挑戦したい方や就職に有利な技能を身につけたい方にとって有効な制度といえるでしょう。
職業訓練(公的職業訓練)とは?概要と種類
職業訓練(公的職業訓練)とは、就職に必要な知識や技能を原則無料(テキスト代などは自己負担)で受講できる公的制度です。事務やIT、介護、Webデザインなどコースは多岐にわたります。
また、職業訓練は受講者の失業手当(失業保険)の受給状況によって、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類に分類されます。主な違いは以下のとおりです。
| 種類 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 対象者 | 失業手当(失業保険)をもらっている方 | 失業手当(失業保険)の受給資格がない方 |
| 受講料 | 無料(テキスト代などは自己負担) | 無料(テキスト代などは自己負担) |
| 給付金 | 失業手当(失業保険)(離職時の平均給与や年齢に応じて算出された金額) | 職業訓練受講給付金(月10万円) |
| 受講期間 | 2カ月~2年 | 2カ月~6カ月 |
ここでは、公共職業訓練と求職者支援訓練の違いや教育訓練給付金との違いについて解説します。
公共職業訓練|失業手当(失業保険)をもらっている方が対象
公共職業訓練は、現在失業手当(失業保険)を受給している方を対象とした職業訓練です。
公共職業訓練は失業手当(失業保険)を受けながら再就職に必要な知識や技能を習得することを目的としており、訓練が修了するまで失業手当(失業保険)が支給されます。
訓練期間は比較的長く、数カ月から1年、場合によっては2年に及ぶコースもあり、訓練内容も事務やIT、建設、介護、製造など多岐にわたる分野があります。
なお、本記事内で解説する「職業訓練」は、主に「公共職業訓練」を指します。
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求職者支援訓練|失業手当(失業保険)の受給資格がない方が対象
求職者支援訓練は、失業手当(失業保険)の受給資格がない方(受給終了者、自営業廃業者、専業主婦(専業主夫)、フリーランスなど)を対象とした制度です。例えば、勤続年数が短く、雇用保険の加入期間が不足しているために失業手当(失業保険)の受給条件を満たせない方も対象となります。
本人や世帯の収入・資産などの一定要件を満たせば、月額10万円の「職業訓練受講給付金」を受け取りながら受講が可能です。なお、職業訓練受講給付金を受給できるのは収入や資産が一定以下の方に限られますが、要件に該当せず給付金が受給できない場合でも、求職者支援訓練の受講自体は可能です。受講料も公共職業訓練と同様に無料(テキスト代等は自己負担)です。
訓練期間は公共職業訓練より短いコースが多いものの、訓練内容は事務やIT、介護など多岐にわたります。
失業手当(失業保険)を受給できない方が経済的な支援を受けつつ、就職に直結するスキルを基礎から習得できるため、未経験の職種にチャレンジする方にも適しています。
教育訓練給付金との違い
職業訓練とよく混同される制度で「教育訓練給付金」があります。教育訓練給付金は、主に在職者や離職後1年以内の方が対象となる給付金です。自ら民間のスクールに受講料を支払い、修了後に費用の一部がハローワークから支給されます。
一方、職業訓練は主に離職者を対象としており、受講料は原則無料(テキスト代などは自己負担)です。
職業訓練と教育訓練給付金の主な違いは以下のとおりです。
| 種類 | 職業訓練 | 教育訓練給付金 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 離職者 |
在職者(雇用保険に加入中の方) または離職して1年以内の方 |
| 受講料 | 無料(テキスト代などは自己負担) | 自己負担 |
| 給付内容 | 受講中に失業手当(失業保険)が支給される |
受講修了後に支払った費用の 20%~最大80%が支給される |
教育訓練給付金についての詳しい内容は下記の記事でご確認ください。
失業手当(失業保険)をもらいながら職業訓練を受けるための条件
職業訓練を受けるにはハローワークから受講の承認をもらう必要があり、この承認を「受講指示」といいます。受講指示をもらうための主な要件は以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
ハローワークに求職の申し込みをしていること
受講指示をもらうには、まずハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みを行う必要があります。離職票を提出する前(求職の申し込み前)に公共職業訓練を受講してもハローワークから受講指示をもらうことはできません。
受講開始日に失業手当(失業保険)の残日数が一定以上あること
職業訓練の受講開始日の時点で、失業手当(失業保険)の所定給付日数が一定数以上残っていることも受講指示をもらうための条件です。基準になる残日数は以下を参照してください。
| 所定給付日数 | 受講開始日の時点で必要な残日数 | |
|---|---|---|
| 給付制限あり (自己都合退職)の場合 | 給付制限なし (会社都合退職)の場合 | |
| 90日 | 31日以上 | 1日以上 |
| 120日 | 41日以上 | 1日以上 |
| 150日 | 51日以上 | 31日以上 |
| 180日 | 61日以上 | 61日以上 |
| 210日 | 71日以上 | 71日以上 |
| 240日 | 91日以上 | 91日以上 |
| 270日 | 121日以上 | 121日以上 |
| 330日 | 181日以上 | 181日以上 |
※参考:ハローワーク三沢「職業訓練制度のご案内」
所定給付日数は、退職理由(自己都合・会社都合のどちらか)や雇用保険の被保険者期間など複数の要素の掛け合わせで決まります。
自分の所定給付日数を知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
失業手当(失業保険)とは?もらえる期間(所定給付日数)を確認する
また、dodaでは失業手当(失業保険)シミュレーションツールも用意しています。所定給付日数のほか、受給できる金額の目安も分かります。ぜひ利用してみてください。
ハローワークから職業訓練の受講が必要と認められていること
職業訓練の申し込みには、ハローワークの職業相談を受け、受講が必要だと認定される必要があります。認定されるには就労の意欲だけでなく「希望する職種と訓練内容の整合性」や「現状のスキルとのギャップ」が考慮されます。
例えば、現在の経験・能力だけでは希望職種への就職が難しい場合に、職業訓練を受けることでキャリアの可能性を広げられるかなどが判断基準になります。
詳しい認定要件や判断基準を知りたい場合は、ハローワークに問い合わせてください。
前回の公共職業訓練の修了から1年以上経過していること
前回の公共職業訓練を修了した日の翌日から起算して1年間は原則として職業訓練を受講することはできません。
ただし例外的に、ハローワークが必要性を認める場合のみ、求職者支援訓練から公共職業訓練へと連続して受講することができます。
失業手当(失業保険)をもらいながら職業訓練を受けるメリット
失業手当(失業保険)をもらいながら職業訓練を受けるとさまざまなメリットが得られます。
主なメリットは以下のとおりです。
失業手当(失業保険)の給付期間が延長される(訓練延長給付)
前述のとおり、職業訓練期間中に失業手当(失業保険)の残日数がなくなった場合でも、職業訓練を受講していれば、訓練修了日(退校日)まで給付期間が延長されます。
上記のケースでは、本来は7月29日で所定給付日数がなくなりますが、職業訓練修了日の8月31日まで給付が延長されます。
給付制限期間が解除される
転職など自己都合で会社を退職した場合は、失業手当(失業保険)が受給できない「給付制限期期間」がハローワークへの求職の申し込み後7日間の待期期間を経て原則1カ月設けられます。
しかし職業訓練を受講すれば、給付制限期間が職業訓練開始日の前日で解除され、開始日以降は失業手当(失業保険)が受給できます。
各種手当(受講手当・通所手当)が支給される
職業訓練では、失業手当(失業保険)に加え、条件に当てはまる場合は以下の手当が支給されます。
詳しい申請条件や手続きの方法は、ハローワークにお問い合わせください。
職業訓練が「求職活動」として認められる
通常、失業手当(失業保険)をもらい続けるには、原則月に2回以上の求職活動実績が必要です。しかし、職業訓練の期間中は「訓練を受けること」自体が求職活動と見なされるため、別途求人に応募したり、セミナーに参加したりする必要はなく、失業認定日にハローワークへ行く必要もありません。職業訓練校が出席報告を行うことで失業認定の手続きが自動で行われ、4週間に1回、指定口座に失業手当(失業保険)が振り込まれます。
セミナー受講のみで求職活動実績になる?オンラインも対象になるか解説
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詳しく見る職業訓練の申し込みから受講開始までの流れ
職業訓練の申し込みから受講開始までは以下の手順で行う必要があります。
※それぞれのSTEPをタップすると詳しい説明に遷移します
ハローワークで職業相談を受ける
まずは退職後にハローワークへ行き、求職の申し込みを行って失業手当(失業保険)の受給資格者となる必要があります。その後、職業訓練の申し込み前にハローワークで職業相談を行いましょう。職業相談の中で、希望の職業や職種を明確にします。
職業訓練の受講を申し込む
希望する職業や職種が明確になってきたら、受講する職業訓練のコースを決定します。ハローワーク窓口での案内のほか、ハローワーク施設内に置いてあるパンフレット、ハローワークインターネットサービス(職業訓練検索・一覧)でもコースを探すことができます。
希望するコースが見つかったら、職業訓練施設の募集時期に合わせて申し込みを行います。職業訓練施設によっては見学できるので、一度見学をしてからコースを決定しても構いません。
選考試験(筆記・面接)を受ける
職業訓練は申し込めば誰でも受講できるわけではなく、選考に合格する必要があります。選考試験の内容は、一般的に国語や数学などの基礎的な筆記試験です。加えて、個別またはグループでの面接が行われる場合があります。
合格後、受講を開始する
選考試験から数日後、自宅に合否が郵送されます。無事に合格通知が届いたら、再びハローワークへ足を運びましょう。
合格後、ハローワークでの手続きを経て、正式に受講生としての資格が得られます。ハローワークの手続き後は、指定された日から受講が開始され、訓練修了まで失業手当(失業保険)が受給できます。
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職業訓練の受講期間中に注意すること
職業訓練は再就職するために通うものです。自由に休んだり、生活の中心をアルバイトに置いたりすることはできません。訓練受講中は以下の点に注意しましょう。
8割出席が絶対条件
多くの職業訓練では、修了証書を得るための要件として「訓練時間の8割以上の出席」を求めています。
出席率が満たないと退校処分となる可能性があり、退校になるとその翌日以降の失業手当(失業保険)の継続が打ち切られます。
なお、体調不良や就職活動(面接や入社試験)で欠席した場合は、診断書や会社の証明書などを提出する必要があります。無断欠席が続く場合は出席率が8割以上でも退校となる場合があるため、注意しましょう。
アルバイトに制限がある
訓練受講中のアルバイトは、原則として禁止ではありませんが、週の労働時間が20時間以上になると「就職した」と見なされ、失業手当(失業保険)が受給できなくなります。また雇用契約上、週20時間の契約でアルバイトすると職業訓練校を退校(中途終了)になる可能性があります。
よくある質問
職業訓練中に内定が決まったらどうすればいい?
職業訓練受講中に内定をもらったら、速やかにハローワークと通っている訓練校に報告をします。内定が出た段階では、職業訓練は引き続き受講できます。入社日が決まった時点で退校日を相談しましょう。
なお、入社日によっては最後まで訓練を受けられるため、訓練スケジュールとの兼ね合いで、手続きが異なる場合があります。
倍率が高いコースは受からない?
職業訓練の倍率が高いコースは受かりにくく、受講できない可能性も考えられます。
合格を勝ち取るためには、選考試験や面接の対策をより念入りに行い、転職意欲や希望するコースへの適性を面接官にしっかりと伝えましょう。
職業訓練を受けたことは履歴書・職務経歴書に書いてもいい?
職業訓練の受講は履歴書や職務経歴書に記載して問題ありません。むしろ履歴書や職務経歴書に書くことによって、「スキルを身につけたこと」を証明できるため、積極的にアピールしましょう。
履歴書・職務経歴書に記載する場合は職業訓練校の名称(○○職業能力開発センターなど)と受講したコース名を記載します。あわせて習得した技術(PC操作、Web制作、CADなど)や、授業で作った成果物を詳しく書くのがポイントです。
履歴書・職務経歴書の基本的な書き方は、以下の記事で詳しく解説しています。
職業訓練はeラーニングも可能?
可能です。近年では、ITスキルや事務系スキルを中心にeラーニング(オンライン)形式のコースが増えています。自宅で受講できるため、通学時間を気にせず効率的に学べるのがメリットです。
一方で、安定したネット環境とPCは自分で用意する必要があります(貸し出しがある場合もあり)。また、オンラインでも通学と同様に「8割以上の出席」が条件なので、自己管理を徹底する姿勢が求められます。
まとめ
失業手当(失業保険)を受給しながら職業訓練に通うと、訓練修了まで給付が延長されたり、給付制限期間が解除されたりと多くのメリットがあります。受講料も原則無料で、金銭的な不安を解消しつつスキルを習得できるため、再就職を目指す方には有効な手段です。
ただし、職業訓練の受講には要件があります。自分が要件を満たしているか分からない場合は、ハローワークに確認しましょう。
なお職業訓練を受けながらの転職活動は、限られた時間の中で効率的に進めることが重要です。そこでおすすめなのがdodaエージェントサービスの活用です。
dodaエージェントサービスは、プロのキャリアアドバイザーに相談が可能です。未経験の職種への転職を希望する場合も、職業訓練で学んでいる内容や前職での経験をどのようにアピールすればよいか、的確なアドバイスをもらうことができます。職業訓練とあわせてdodaも活用しながら、新たなキャリアの実現を目指していきましょう。
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この記事を監修した社会保険労務士
北 光太郎(きた・こうたろう)氏
きた社労士事務所 代表 大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士資格を取得し、不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善などさまざまな取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者に分かりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。
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