日常生活やビジネスシーンで欠かせないスキルの一つが、コミュニケーション能力です。
良好な人間関係を保ちビジネスを円滑に進めるために、企業もコミュニケーション能力を重視しています。ただし、コミュニケーション能力は非常に抽象度が高いため、強みとしてアピールするには注意が必要です。
そこで今回は自己PRでコミュニケーション能力をアピールする方法に焦点を当て、具体的なアピールにつながる言い換え方やポイントについて解説します。
職種別で活用できる自己PRの例文も紹介していますので、これから転職活動を進めようと考えている人はぜひ参考にしてみてください。
もくじ
コミュニケーション能力とは? 強みとして伝えるのはNG?
コミュニケーション能力とは、他者との意思疎通を円滑にするための能力のことです。自ら情報を共有したり相手から話を聞いたりする際に、相手の気持ちや理解に応じた対応ができる人はコミュニケーション能力が高いといえます。
いくら社交性があっても、自分の話ばかりで相手の話を聞かない人はコミュニケーション能力が高いとはいえません。
ビジネスではリモートワークや非対面型の営業など、働き方の多様化によりビジネス上でのコミュニケーションの重要性がいっそう増しています。また、職務経歴が短い場合や未経験の職種へ転職する場合も、コミュニケーション能力を重視されるでしょう。
コミュニケーション能力を書類選考や面接で伝えることはNGではありません。しかし、転職活動において、コミュニケーション能力の高さをアピールするには注意が必要です。コミュニケーション能力は抽象度が高く、強みとしてアピールしても採用担当者が評価しづらいためです。
企業としては、自社に合ったコミュニケーション能力を発揮して、結果を出してくれる人材を求めています。コミュニケーション能力を強みとして伝えるときには「応募先企業がどのような形でコミュニケーション能力を欲しているか」という点に着目して言い換えることが大切です。
コミュニケーション能力に含まれる3つの要素
コミュニケーション能力は、以下の3つの要素に分けられます。
それぞれ詳しく解説するので、自分がアピールすべきはどの能力なのか以下を読んで考えてみましょう。
聴く能力
聴く能力とは、相手の話をしっかりと聞き、相手の伝えたいことを正確に理解する力のことです。聴く能力があると、相手に対する敬意が伝わりやすくなるため、スピーディーに信頼関係を構築できます。
ビジネスシーンにおいては、相手の言葉を把握することで、取引先のニーズの引き出しにも活用できるでしょう。
相手の話を最後まで聞くのはもちろんのこと、時には質問して、積極的に理解しようとする姿勢を示すのも重要です。質問をするには、相手の話をしっかり聞いて深く理解しなければなりません。相手を理解した上で質問ができると、クレーム対処やトラブル防止にもなります。
伝える能力
伝える能力とは、自分の伝えたいことを相手に正確かつ効果的に伝える力のことです。伝える能力があると、自分の意見や提案が通りやすくなるため、仕事の生産性が上がります。
内容を正確に伝えるためには、相手が理解しやすい表現で伝える工夫が求められます。また、相手に対して適切な表現で伝えることや、PREP法(*)のようなフレームワークを自然に用いて順序立てて話す能力も重要です。
*PREP法とは「結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)→結論(Point)」の流れで伝えるフレームワークのこと。
相手のことを考えていないと、話の前提を省略したり、特殊な専門用語を使ったりしがちになるので注意しましょう。その表現で相手に正しく伝わるのかどうか、いったん頭で整理することが重要です。
非言語能力
非言語能力とは、相手の表情や声のトーン、身振り手振りなどから、言葉には表れない感情をくみ取る能力のことです。
非言語能力が高いと相手の感情の機微を察知しやすくなるため、臨機応変な対応ができるようになるでしょう。
相手の感情を読み取るには非言語能力が重要といわれており、とくに表情やしぐさ、声のトーンなどは欠かせないポイントです。
非言語のコミュニケーションの重要性は研究でも実証されています。
心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」では、視覚・聴覚・言語のコミュニケーションがそれぞれ相手に影響を与える割合を研究しました。
その結果、以下のような法則を導き出しました。
- 視覚(表情・身振り手振り・目線)…55%
- 聴覚(声のトーン・大きさ・話すスピード)…38%
- 言語(会話の内容)…7%
この法則からも視覚や聴覚といった非言語能力の重要性が分かります。
「コミュニケーション能力がある」を具体的に言い換える
ここまで、コミュニケーション能力を構成する3つの要素について説明しました。次にそれをさらに具体的な言葉に言い換えてみましょう。ポイントは応募先の企業に合わせて、「自社で活躍してくれそうだ」と思ってもらえる言い換えを選ぶことです。
「聴く能力」の言い換え
「聴く能力」の言い換え例として、下記のものが挙げられます。
- 相手の潜在的なニーズをくみ取って、利害を調整できる
- 相手の主張を受け止められる
- 質問力や共感力が高く、相手の本音を引き出せる
上記の点を踏まえて、自己PRを作成してみましょう。以下の具体例もぜひ参考にしてみてください。
「住宅販売の営業でお客さまのニーズを引き出すために、お客さまが話す内容に対して「なぜ」を常に考え質問することを心掛けています。質問して相手の話を深掘ることで、お客さまに適した間取りの提案ができ、最適な住宅を紹介したことで大変喜んでもらえました」
このエピソードからは「質問力や共感力が高く、相手の本音を引き出せる」ことを伝えられます。
「伝える能力」の言い換え
「伝える能力」の言い換え例として、下記のものが挙げられます。
- 目的や背景などを的確に伝えて、合意を得られる
- 相手に合わせて説明方法を変えられる
- 会話を通して相手の興味を引ける
上記を参考に自己PR文を作成しましょう。また、以下で自己PR文の具体例も紹介します。
「学生への会社説明会で、自社のBtoB向け製品の説明をする際に、専門用語をかみ砕いて伝えることを意識しました。結果として多くの学生に興味を持ってもらい、説明会に参加した学生のうち7割の方に選考へ進んでいただくことができました」
このエピソードからは「相手に合わせて伝え方を変えられる」ことを自己PRできます。
「非言語能力」の言い換え
「非言語能力」の言い換え例として、下記のものが挙げられます。
- 相手の反応・表情・声のトーンなど様子を見て、臨機応変に提案内容を変えられる
- 相手が多忙な様子を把握して、業務を先回りしてサポートできる
- 相手の心を開くために相手をよく観察し、それに合わせた対応ができる
上記の言い換えを活用して自己PR文を作成してみましょう。以下の自己PRの例文も参考にしてみてください。
「保険の営業担当者として、お客さまの反応をうかがいながら、提案内容を変更したり、話し方を変えたりすることで、お客さまのニーズに合う商品を提案することを心掛けました。その結果、成約率が10%向上し、現在では3年連続で社内営業成績1位を獲得しています」
このエピソードからは「相手の表情を見て、それに合わせた対応ができる」ことを採用担当者に伝えられます。
これらの言い換えを一言で「●●力」といえる準備をしておくとよいでしょう。「私の強みは臨機応変な対応力です」「私の強みは相手に合わせた提案力です」「私の強みは傾聴力です」と一言で切り出すことで、より的確に伝えられます。
なお、アピールする能力は一つに限定する必要はありません。応募先の企業が求める人物像を描いて、複数の能力を組み合わせてもよいでしょう。
自己PRで「コミュニケーション能力」を伝える4つのポイント
自己PRで「コミュニケーション能力」を伝えるポイントは、以下の4つです。
上記のポイントを意識して、相手に分かりやすく説明することで、自己PRの内容により説得力を持たせられます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
結論から話す
結論から話すことは、すべての会話において大切なポイントであり、ビジネスシーンにおいてはとくに重要です。なぜなら、ビジネスでは正確性と時間が非常に重視されるからです。結論から話すと、シンプルかつ明確に相手に伝わる上に、短時間で相手に必要なことを伝えられます。自己PRを伝える際は結論から話せるよう準備しましょう。
エピソードを盛り込む
コミュニケーション能力をアピールする際は、面接官から聞かれる前に自分なりの言葉で事例を交えて具体的に表現することが重要です。
その際に意識したいのが「5W1H」です。いつ(When)・どこで(Where)・だれが(Who)・なにを(What)・なぜ(Why)・どのように(How)の6つに分けて情報を整理する方法です。
例えば、以下のように5W1Hを記入します。
5W1H | 具体例 |
When(いつ) | 半年前に |
Where(どこで) | 取引先で |
Who(だれが) | 私が |
What(なにを) | 弊社の製品を紹介した |
Why(なぜ) | 先方からの要望があったため |
How(どのように) | 資料を用意し、実際の製品を目の前で紹介しながら プレゼンテーション形式で伝えた |
5W1Hはシンプルですが、それゆえに職種やアピールしたい能力を問わず、具体性を持って伝えられるでしょう。
新しい仕事でどのように活かすか話す
熱心な自己PRだとしても、ただ過去の事実を述べるだけでは、面接官も実際に働いている姿のイメージが湧かないでしょう。コミュニケーション能力をアピールする際は、その能力を活かして、実際にどのような貢献ができるのか話すことも重要です。
例えば、「前職のコンサルティング業で培った相手の本音を聞き出す能力を活かして、顧客のニーズを読み取り、売り上げアップに貢献したい」というように、自分を採用することのメリットについても言及しましょう。
背伸びをして過大に伝えようとしない
コミュニケーション能力は、背伸びをして伝えようとしたところで、面接時の言動である程度分かってしまいます。職務経歴書に書いた自己PRとの落差が激しいと、面接官からの印象も悪くなるため、誇張せずに等身大の自分のコミュニケーション能力をアピールすることが重要です。
また面接官は、応募者の面接での話しぶりや表情などからコミュニケーション能力の有無を判断します。相手の目を見て笑顔で話すなど、対人の印象を意識することを忘れないようにしましょう。
自己PR「コミュニケーション能力」の事例
選考で「コミュニケーション能力」をアピールするための事例を6つご紹介します。
自己PRを書く際の参考にしてみてください。
【ソフトウェア製品の営業職に応募した例】
私の強みは「傾聴力」と「相手に応じた伝え方ができる伝達力」です。前職では開発職とクライアントの間に入り、真摯な姿勢で聴くことに注力しながら信頼関係を構築し、互いの要望や意思疎通が図れるよう尽力してまいりました。開発職の説明は専門用語が飛び交う難しいものでしたが、相手の話をよく聞いて、分からない部分は質問し、自分自身が理解できるように努めました。また、自身も用語の勉強をするなどして製品についての知識を深めました。クライアントに質問をされた際も、難しい専門用語を相手に伝わる言葉に言い換えながらの回答を意識したことで、「信頼できる」というお言葉をいただきました。自身の受注数もさることながら他社を担当するメンバーから質問を受けることも多々ありました。
貴社でもこの強みを活かして製品の特長を正確に理解し、クライアントに伝わる言葉を選ぶことで販売につなげたいと考えております。
【提案型営業に応募した例】
私の強みは「相手の悩みを引き出す能力」です。前職では会計コンサルタントとして、顧問先企業の経営戦略にかかわる提案などに尽力してまいりました。経営者の方とお会いするときは、私のほうが年下であるケースが圧倒的に多く、信頼してもらうのは非常に大変でした。ですが、私は相手の悩みを引き出すために、経営者の方に寄り添う形でのヒアリングを繰り返しました。結果として、多くの経営者の方から信頼を得られ、昨年は5件の契約更新に成功しました。貴社でもこの強みを活かし、お客さまの悩みを引き出すことで要望に沿う商品提案につなげ、売り上げに貢献したいと考えております。
【小売業の営業事務職に応募した例】
私の強みは、「状況を把握する能力」です。前職では50人規模の販売会社の営業事務として、請求書や資料作成などを行ってきました。営業スタッフは常に多忙で外出も多かったため、以前は請求書の発行ミスなどが多発していました。そこで私は、全営業スタッフの1週間ごとのスケジュールを把握し、予定がたてこんでいるスタッフには、私から声を掛けてサポートを行うようにしました。その結果、営業部から感謝されるだけでなく、取引先からのクレームも前年比で70%削減させることに成功しました。貴社でもこの強みを活かして、営業の方々の生産性を上げられるサポートをしていきたいと考えております。
【エステティシャンに応募した例】
私の強みは「お客さまに寄り添う傾聴力」です。現職はエステティシャンをしており、お客さまの抱える悩みを解決できる施術を心掛けています。事前カウンセリングでヒアリングした内容をもとに、施術計画を立てて進めていきます。しかし、お客さまの抱えるお悩みは日々変化します。そのため、私は初回に決めた計画にこだわるのではなく、毎回エステをはじめる前に5分ほど話を聞かせてもらい、今後の方針を続行するのか変更するのかを決めるようにしています。また、エステサロンに寄せられている期待を理解するために、何気ない会話から潜在的なニーズを深掘りしています。結果として、ていねいなカウンセリングやお客さまに合った施術が評価され、指名数で店舗内1位を達成しました。貴社でも、お客さまの声に耳を傾けられるエステティシャンとして、活躍したいと考えています。
【IT企業のSEに応募した例】
私はコミュニケーション力を活かして、チームをサポートすることに自信があります。現職のSEの業務では、客先に常駐して定期点検やシステムの設定をしていますが、ほかにも支援できる業務はないかと客先にヒアリングをしています。客先の複数の部門と積極的にコミュニケーションをとって要望を洗い出していくうちに、客先のメールシステムのセキュリティ対策が不十分なことが分かりました。そこで、上司に連絡し自社のセキュリティチームと連携したサポートができるよう客先へ提案しました。結果、セキュリティ対策の受注ができ、自社の売り上げに貢献できました。貴社でも顧客の課題改善を第一に考えて行動することで、日々の業務に付加価値を生み出していきます。
【人事職に応募した例】
私の強みは「他者との関係構築力」です。現職は自動車メーカーの新卒向け採用活動をしており、学生が自社に興味を持ってくれるよう意識して行動しています。学生は人柄も重視して企業を選ぶため、会社の顔となる人事の対応がよくなければなりません。そこで、できるだけ自社の印象をよくするためにも学生に寄り添い、不安に感じているように見受けられたらフォローして、一人ひとりの学生に合わせてていねいな対応を続けました。自分が学生のときを思い出し、相手に共感しながら伝えることで、学生から信頼されるようになり、結果として応募人数が前年比の10%、内定承諾率が20%向上し、例年よりも多く人材を獲得できるようになりました。貴社でも社内外の人とうまく関係を構築して、スムーズに業務を遂行できればと思います。
まとめ:自分の強みを具体的な言葉で伝えることが重要
強みが言語化できたら、応募先企業でその力をどう発揮できるのかイメージしましょう。その企業が自分の能力を評価してくれそうなのか、客観的に見極めることも大切です。また、自分の強みが評価されそうだと判断しても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。具体的なエピソードも用いて、説得力のある自己PRを作成しましょう。
前述のとおり、「コミュニケーション能力が高い」というアピールは抽象度が高いため、「とくに強い力はこれ」と落とし込んでアピールすることが重要です。その強みを活かして、入社後に貢献できる部分まで具体的に説明できれば、魅力的な自己PRになるでしょう。
なお、自分にどのようなアピールポイントがあるか分からない人は「自己PR発掘診断」を利用してみてください。直感的に答えられる16個の質問に回答するだけで、自分の強みを見つけるのに役立ちます。
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