新卒時の就職では総合職として採用されることが多いため、希望と違う仕事に配属されたというケースはよくあるでしょう。あるいは、「やりたい仕事ではないけれども、まずは社会人経験を積む」と割り切って就職した人も多いかもしれません。何年かの仕事経験を経て、「やっぱり自分はあの仕事をやってみたい」と転職で職種を変えたい人のために、今回は「異職種転職のかなえ方」を解説します。
もくじ
異職種からの転職を受け入れるのはどんな求人?
中途採用では基本的に即戦力が求められるため、就きたい職種の求人があっても、「自分には経験がないから難しいのではないか」と尻込みする人もいるかもしれません。しかし、採用担当者のホンネ「異業種転職は難しい?異業種転職の実態調査」で年代別に異業種転職の割合を調査してみたところ、全年代で「異業種からの転職」の割合は60%を超えており、幅広い年代の人が異業種に転職していることが明らかになりました。
では、異職種からの転職が可能な求人にはどういった特徴があるのでしょうか。
基本的には、営業職や販売・サービス職など、労働市場の中で就業者数が多い職種は、未経験可のポジションが多くあります。IT系ではインフラエンジニアの運用・保守業務などの職種で未経験可の募集が少なくありません。一方で、専門性の高い職種、例えばモノづくり系の電気・機械系エンジニア、IT系でも開発に携わるエンジニア、経営企画やマーケティングといった企画系、金融専門職などは、わずかです。
業種では、「新しい」業種や「新しい」会社が、共通して異職種からの転職を受け入れる傾向にあります。例えばインターネットに関わる業種や、斬新なビジネスモデルで売上が伸びているベンチャー企業などでは、職種未経験者を比較的多く受け入れています。これは、そもそもビジネスが「新しい」だけに、同じ業種でその職種の経験を持つ人がまだ転職市場に多くないという理由があります。
「新しい」業種や会社そのものが持つ志向も背景にあります。過去に得た経験や知識よりも、仕事を進めるスピードや、未知の仕事にも挑戦できる姿勢などを評価する傾向があるのです。例えば、経理職を募集していて経験者から応募があっても、「スピード感が当社とは合わない」と判断すれば、経験者ではなく、未経験者を採用することがあります。
異職種からの転職で陥りがちなポイント
ここで言えるのは、異職種からの転職を受け入れる場合、「職種に即した実務経験」が最優先の条件ではない、ということです。しかし、だからと言って「誰でもいい」わけではありません。では、どんな人が異職種への転職を成功させるのでしょうか。
異職種転職を考える人は、ある種の「憧れ」をもってその職種に就きたいと考えている人が大半です。それは、「小さい頃からなりたかった」という憧れもあれば、尊敬する先輩がやっている職種という憧れもあるでしょう。
ただ、その「憧れ」が、その職種の表面的なイメージによる思い込みで、実態とかけ離れていれば、転職を成功させることは難しくなります。逆に、その職種の実態を正しく把握していれば、異職種転職へのハードルを一つクリアしていると言えます。
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就きたい“異職種”に求められるには
異職種転職を受け入れる企業は、募集に際して「職種に即した実務経験」以上に、そのポジションの業務を遂行できるための「専門知識」や「ポータブルスキル」があるかどうかを重視しています。「ポータブルスキル」とは、「仕事の進め方」や「仕事をする際の考え方」「人との関わり方」などの汎用性のある能力・行動特性のことです。
「専門知識」と「ポータブルスキル」を活かして、営業職から経営コンサルタントへ転職した実際の事例があります。
Aさんは、新卒で都市銀行に入社し、支店で法人営業をしていました。中堅中小企業の社長や経理・財務部長などに対して、財務のアドバイスや融資をする仕事です。Aさんは、入社時から「まだ携わっていない業務にも早く携わりたい」と考えて、与えられた仕事を効率的に行うために、仕事の納期管理とスケジュールの設計を徹底して行っていました。2年目には所属する課の中でもっとも業務量が多くなっていたそうですが、納期に遅れたことは一度もなかったと言います。そのため、支店の中でも重要な顧客を任せてもらえるようになっていました。
こうした「基本的な財務分析ができる」という専門知識と、「迅速な業務処理・管理能力」「経営層との折衝力」というポータブルスキルが評価され、Aさんはコンサルティングファームで業務効率の改善や、収益管理能力の向上などのコンサルティングを行う仕事に転職したのです。
いきなり異職種が難しい場合の対応
そうはいっても、自分のキャリアを棚卸しした結果、就きたい職種に見合う「専門知識」が足りず、いきなり希望職種へ転職することが難しい場合もあるでしょう。人によっては、二段階で異職種転職を実現する方法もあります。
Bさんは、新卒で就職した会社で地域のフリーペーパーの広告営業をしていました。Bさんはマーケティングの仕事をしたいと考えていたのですが、紙媒体だけをやってきたBさんにとって、Webの知識が求められるマーケティング部門へいきなり転職することは難しかったのです。
そこで、段階を踏んで、まずは営業職としてインターネット広告の代理店へと転職しました。そこでなら、紙媒体の広告営業の経験を活かすことができたからです。そこで数年経験を積み、実務を通じてWebの「専門知識」を身につけたところで、満を持して二度目の転職活動を行い、大手旅行会社のマーケティング部門へ転職を遂げました。
遠回りに見えるかもしれませんが、このように、一度目の転職で足りない要素を補い、二度目の転職で異職種に転職するという考え方もあるのです。
その仕事をやりたいという「意志」が大事
異職種への転職だからといって諦める必要はないどころか、やりたい仕事があるなら積極的にチャレンジするべきです。ただ、動き始めるなら、少しでも早く動き出すほうがよいでしょう。それは、年齢が上がってキャリアが長くなるほど、募集職種に即した実務経験が問われるようになり、専門知識やポータブルスキルだけでは評価がされにくくなるケースが増えてくるからです。
異職種転職を成功させるには、就きたい職種の実態を正しく把握していることが必要ということは先に述べました。自分のキャリアを棚卸しして、自分が持つ「専門知識」や「ポータブルスキル」がどう活かせるか、足りないものは何かを把握することが、転職実現へのステップになります。
そして、最終的に必要なのは、その仕事をやりたいという「意志」です。今は違う職種に就いていても、仕事を通じてポータブルスキルを身につけることはできますし、仕事以外で専門知識を身につけることも可能です。自分に足りないものを認識して、それを得るための努力を積み重ねられるかどうかが、異職種への転職成功を左右します。