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労働条件通知書とは?労働条件通知書をもらったら確認したいポイントと受け取るタイミングを解説
#内定
更新日:2025/1/31

内定または入社のタイミングに渡される「労働条件通知書」。労働条件通知書とはどんな書類でしょうか? また雇用契約書との違いはなんでしょうか?
労働条件通知書をもらったら確認したいポイントも解説します。
もくじ
労働条件通知書とは?
労働条件通知書とは、会社が労働者を雇うときに、「あなたをこの条件で採用します」と労働条件を明示するために交付される書類のことです。労働基準法第15条第1項に基づいて企業側に作成・交付が義務付けられており、企業と労働者の間でトラブルを防ぐ役割を果たしています。
労働条件通知書には、労働時間や賃金、業務内容など具体的な労働条件が記載されており、もらった際には事前に聞いていた内容や求人情報と異なる点がないかなど十分確認する必要があります。
なお、基本的に労働条件通知書は書面で交付されますが、労働者が希望した場合は電子メールなどでの交付も認められています。
労働条件通知書と雇用契約書の違いは?
労働条件通知書と似た書類に「雇用契約書」があります。労働条件通知書と雇用契約書は、どちらも雇用条件を明示する文書ですが、その役割や法的な意味合いには違いがあります。
労働条件通知書は、労働基準法によって企業側が労働者に交付することが義務付けられている書類です。一方、雇用契約書は法的な発行義務がないものの、企業と労働者が交わす労働契約を証明する重要な書類です。
つまり、労働条件通知書は「労働条件の通知」が目的であるのに対し、雇用契約書は「雇用契約の成立と証明」を目的とする違いがあります。
労働条件通知書はいつもらえる?受け取るタイミングは?
労働条件通知書は、内定日または入社日に渡される書類です。一般的には、会社から「内定」をもらったタイミングで交付され、内定通知を受けた際に、書面または労働者が希望した場合はメールなどで渡されます。また、企業によっては、内定時に口頭で条件を伝えられ、入社日に労働条件通知書が交付されることもありますが、入社後に「聞いていた話と違う」「よく確認すればよかった」と後悔しないためにも、内定承諾の前に書面でもらえるように依頼しましょう。どうしても難しい場合は、採用時の労働条件をメールなどの残る形で送ってもらうことをおすすめします。
なお、労働条件の明示は会社の義務です。会社に依頼したもののどうしても交付してもらえない場合は、労働基準監督署に相談する方法もあります。詳細は以下の記事で解説しています。
労働条件通知書に記載してある内容
労働条件通知書に記載してある内容は大きく以下の2つに分かれています。
それぞれの内容を詳しく解説します。
【絶対的明示事項】必ず書かれている内容
絶対的明示事項は書面などでの明示が義務付けられています。明示される事項は、以下のとおりです。
労働条件 | 詳細 |
---|---|
労働契約の期間 | 期間の定めの有無、契約期間 |
期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準 | 更新基準・更新上限の有無・無期限転換申込機会・無期転換と労働条件 |
就業する場所 | 採用直後の場所だけではなく、将来の配置・出向なども含めて明示 |
業務の内容 | 採用直後の業務だけではなく、将来の配置・出向なども含めて明示 |
始業・終業時刻 | 所定労働時間を明示。変形労働時間制やシフト制、フレックスタイム制の適用がある場合は適用される時間を明示 |
時間外労働の有無 | 所定労働時間を超える時間や休日の労働の有無 |
休憩時間 | 所定の休憩時間 |
休日・休暇 | 休日の日数や曜日、有給休暇日数、夏季休暇、年末年始休暇など |
賃金の決定・計算・支払い方法 | 給与や諸手当の金額、締め日、支払日、支払い方法など |
退職に関する規定(解雇の事由含む) | 定年や退職の手続きなど |
なお、有期雇用やパートタイム労働者の場合は、追加で以下の事項が明示されます。
- 昇給
- 退職手当
- 賞与
- 相談窓口
【相対的明示事項】別途条件を設けている場合に明示される内容
相対的明示事項は、書面での明示は義務付けられておらず、設けている場合は口頭や就業規則で明示が義務付けられている事項です。ただし、トラブル防止のためにもできるだけ書面での明示が求められています。
相対的明示事項は以下の事項です。
労働条件 | 詳細 |
---|---|
退職手当に関する事項 | 一般的には退職手当がないときは「なし」と書面で明示される |
賞与に関する事項・最低賃金額に関する事項 | 一般的には賞与がないときは「なし」と書面で明示される |
労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 | 該当する場合のみ明示 |
安全および衛生に関する事項 | 安全衛生管理の体制や災害が発生した場合の措置など |
職業訓練に関する事項 | 社員教育なども含む |
災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項 | 福利厚生制度なども含む |
表彰および制裁に関する事項 | 表彰・懲戒の種類など |
休職に関する事項 | 制度がある場合のみ明示 |
労働条件通知書を受け取ったときのチェックポイント
労働条件通知書を受け取ったときは以下のポイントをチェックしましょう。
必要事項がきちんと記載されているか
これまで述べてきたとおり、労働条件通知書には法令によって明示される項目が定められています。例えば、契約期間や業務内容、就業場所、労働時間、休憩・休日、賃金、退職に関する事項などです。
これらの項目が明記されていない場合は、後々に労働条件についてトラブルが発生する可能性があるため、労働条件通知書を受け取ったら十分に確認しましょう。
諸条件が求人情報や面接の内容と相違していないか
労働条件通知書を受け取ったときは、求人情報や面接時に聞いた情報と相違がないか確認しましょう。
労働条件通知書には、労働条件が詳細に書かれています。詳しくチェックすべきポイントを解説します。
契約期間と入社日
契約期間は、期間の定めの有無と、期間の定めがある場合は契約期間を確認する事項です。
正社員の場合、「期間の定めなし」と書かれることが一般的です。「期間の定めあり」とあった場合は、以下の3つのポイントを注意して確認する必要があります。
- 契約の更新の有無
- 更新の上限の有無
- 更新の上限回数
労働条件通知書に契約の更新が「なし」と明示されているケースでは、明示されている契約期間をもって契約満了により退職することになります。一方、契約の更新が「あり」と明示されている場合は、「更新の上限の有無」と「更新の上限回数」の確認が必要です。
更新の上限が「ない」と明示されている場合は、回数に上限がなく更新される可能性があることを示しています。一方、更新の上限が「あり」と明示されている場合は、明示されている更新回数で契約満了することになります。例えば、1年契約で「更新上限回数4回」と明示されていれば、通算で5年経つと契約満了により退職になるということです。有期雇用で契約する場合は、必ず契約更新について確認しておきましょう。
あわせて、入社日(契約締結日)が求人情報や面接などで聞いた情報と合っているか確認することをおすすめします。また、勤務中の会社に対しては入社日に合わせて退職交渉をするようにしましょう。
就業場所
求人情報や面接のときに転勤の可能性について言及されている場合には、就業場所を必ず確認しましょう。
労働条件通知書には、入社直後の就業場所と将来変更の可能性がある場所が明示されます。
例えば、「雇い入れ直後:東京本社 変更の範囲:大阪支店」などです。この例の場合、将来大阪に転勤する可能性があることを示しています。変更の範囲が「なし」と明示されている場合は、転勤の可能性はありません。
もし「転勤なし」または「エリア限定の職種」に応募したのにもかかわらず、全国転勤ありのように記載されている場合は、記載が誤っている可能性があるため会社の担当者に確認しましょう。
業務の内容
業務内容も就業場所と同様に「雇い入れ直後の業務」と「変更の範囲」が明示されています。
例えば、「雇い入れ直後:営業 変更の範囲:すべての業務への配置転換あり」と記載されている場合、人事異動によって営業以外の業務に就く可能性があることが示されています。
職種限定で採用されたにもかかわらず、「変更の範囲:すべての業務への配置転換あり」と記載されている場合は会社の担当者に確認しましょう。
始業・終業時間と想定残業時間
始業・終業時間は所定労働時間が記載されています。休憩時間が何分あるか、フレックスタイム制の場合はコアタイムが何時から何時までかなど、自身の働く時間が求人情報や面接などで説明された情報と相違ないか確認しましょう。
ただし、勤務形態がシフト制の場合は基本的な始業・終業時間のみ明示されており、その他は「シフト表による」とされている場合もあります。具体的なシフトの時間は確認しておきましょう。
また、所定時間外労働が「あり」と記載されている場合は、残業が発生する可能性があります。会社によっては想定残業時間が記載されていますが、記載がない場合はどのくらいの残業時間が発生するのかを確認しておきましょう。
休日
休日は月や週の休日日数や曜日が記載されている場合など、記載方法は会社によって異なります。なお、「週休2日制」と記載がある場合、必ず毎週2日休みがあるとは限りません。法律上、年間を通して1カ月に1回以上、週2日の休みがあれば「週休2日制」となるからです。毎週2日の休みが約束されるのは、「完全週休2日制」と記載があるケース限定されます。ただし、土日休みとは限らず、祝日が休日になるかどうかも企業によって異なります。
「週休2日制」とは? 「完全週休2日制」との違いは何ですか?
また、シフト制は「月8日 シフト表による」など具体的に記載がないこともあります。もし「シフト表による」とされている場合は具体的な内容を確認しておきましょう。
休暇
休暇には、有給休暇が付与されるタイミングや特別休暇の種類が記載されています。会社によっては詳細を就業規則で確認するよう明示されている場合があります。内定時に労働条件通知書が交付された場合は入社後に就業規則で詳細を確認しましょう。
賃金
賃金には、基本給や諸手当の具体的な金額が記載されています。まずは面接などで聞いたとおりであるか確認しましょう。
また、基本給とは別に固定残業代が支給される場合は、何時間分の残業代が固定残業代として支給されるのか確認することをおすすめします。加えて、固定残業時間を超える時間外労働や休日労働、深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨が記載されているかも確認しましょう。
退職に関する事項
退職に関する事項では、定年の年齢や定年後に適用される制度を確認しましょう。例えば、「定年を60歳とし、それ以降は継続雇用制度で再雇用する」など定年後の制度についても記載されている場合があります。
その他
その他の欄には、多くの会社が社会保険の加入状況を記載しています。自身が雇用保険のみの適用なのか、社会保険に加入するのかなど、加入する保険について確認しておきましょう。
労働条件通知書の内容について確認したい場合は?
労働条件通知書を受け取ったときに「聞いていた内容と違う」というケースもあるかもしれません。もし内容に相違がある場合は、以下のどちらかで確認しましょう。
担当者に確認する
労働条件通知書の内容について確認が必要な場合は、まず担当者に連絡を取ることをおすすめします。
確認する際は、具体的にどの項目について質問があるのかを明確にして伝えるとよいでしょう。その際は、求人票などの提示されている内容と照らし合わせていることを伝えるとスムーズです。また、内定通知のタイミングでは口頭で言われていたといった場合もあるので、「口頭だけでなく、労働条件の詳細を念のためメールでもお送りください 」と頼んでおくと安心です。
オファー面談で確認する
オファー面談とは、内定が出た後に行う面談のことです。雇用条件を説明した上で疑問がないかを確認し、内定者に不明な点があればそれをクリアにしてもらうことを目的にしています。
内定時に労働条件通知書を受け取った場合は、オファー面談で確認するのもひとつの方法です。当日までに労働条件に関して疑問点や不明点をまとめておけばスムーズに進められます。また、オファー面談で変更が出た場合は、必ず労働条件通知書の修正を依頼しましょう。
すべての企業がオファー面談を実施しているわけではないものの、もしオファー面談の実施を希望する場合は、企業の担当者に一度相談してみるとよいでしょう。
入社前に労働条件通知書の内容を隅々までチェックしよう
これまで述べてきたとおり、労働条件通知書は、入社後どのような労働条件で働くかを確認する重要な書類です。
内定承諾する前に隅々まで内容を確認し、分からない点や疑問点は担当者に確認するようにしましょう。
【要注意】労働契約上の「内定」とは?
本記事内では「企業から採用条件通知書が発行されたタイミング」を内定と呼んでいます。 しかし、労働契約上は採用条件通知書が発行されただけでは「内定」とはなりません。
企業から「採用条件通知書」が送付され、転職希望者が求人企業に対し、入社日・年収など重要な条件を踏まえ、就業することの意思表示をした状態が労働契約上の内定となります。
ですから、退職交渉の開始や他社選考の辞退は、労働契約が成立してから 行ってください。
dodaエージェントサービスを利用している場合は、キャリアアドバイザーに相談しながら、慎重に進めてください。また、ご自身で企業と直接やりとりしている場合は、エビデンスが残る形で進めていただくのが安全です。
記事で参照した法律など
e-Gov法令検索:労働基準法
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
e-Gov法令検索:労働基準法施行規則
https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023#Mp-At_5
厚生労働省:企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!