Q 「無期契約社員」とは?契約社員なのに無期雇用?「限定正社員」との違いは?
応募したい求人の雇用形態は「契約社員」なのですが、契約を5年継続すると「無期契約社員」になれると聞きました。「無期契約社員」って何ですか?契約社員なのに無期雇用?「限定正社員」との違いは?転職活動の選考のときに確認しておいたほうがよいことを教えてください。(25歳/女性)
A 「無期契約社員」とは、労働契約の期間の定めのない契約社員のことです。
これまでは一般的に、会社と「無期(期限なし)」の労働契約を結ぶ人は「正社員」、「有期(期限あり)」の労働契約を結ぶ人は「契約社員」などと呼ばれてきました。
しかし、2012年8月に労働契約法が改正され、「無期転換権」が新設されました。新しいルールでは、契約社員などの有期労働契約者が、更新を重ねて通算5年を超える場合に、会社に対して「契約を無期にしてください」と申し入れると、会社は無期の労働契約に切り替えなければならないと定めています。
この改正法にのっとって契約社員が「無期転換権」を行使すると、「有期の契約社員」が「無期の契約社員」になるため、「無期契約社員」という雇用形態が生じるというわけです。
「限定正社員」は、無期の労働契約を前提とするという意味では「正社員」ですが、一部、勤務地や職務内容、労働時間などが限定されている正社員のことを言います。
いずれの場合も、いわゆる「普通の」正社員とは、待遇や職務などに何らかの違いがありますが、何が違うかは労働契約の内容によります。転職活動の選考の際、または内定後の処遇面談などで詳細を確認しましょう。

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「無期契約社員=正社員」ではない
これまでの一般的な定義で考えると、有期契約から無期契約に変わったら、それはすなわち正社員なのではないかと思われるかもしれません。
労働契約法の改正によって定められているのは、「正社員にしなければならない」ということではなく、あくまでも「それまで有期だった契約を無期の契約にしなければならない」ということ。待遇や勤務地、労働時間、職務内容などの「労働契約の内容」はそのままでも構わないのです。だから、一般の正社員と同じとは言えない場合があります。
この法改正に対する企業の応じ方はさまざまです。
有期契約社員の時とまったく条件を変えずに、契約期間だけを無期にするケース。あるいは、有期契約社員の時に比べて労働条件を改善した上で無期契約社員とする場合もあるでしょう。また、これを機にすべての契約社員を「正社員」に、あるいは「限定正社員」にするケースもあり得ます。
契約の更新上限に注意
もう一つ、企業の対応として、有期契約が5年を超えないようにするケースがあります。有期契約社員として採用する際に、あらかじめ「契約期間更新の上限は5年まで」というただし書きをつけている場合があるので、無期契約社員への転換を期待して契約社員の求人に応募する場合は注意が必要です。
ここで扱った法律
有期契約社員からの無期転換については、労働契約法の第18条で規定されています。ただし、有期契約で働いていて通算の契約期間が5年を経過する場合でも、本人が無期契約にすることを希望しなければ、それまで通り有期契約の更新を継続することも可能です。
「無期転換権」を行使する場合は、現に締結している有期契約の満了日に通算期間が5年を超えていることを前提に、その有期契約の満了日までに、会社に対し期間の定めのない労働契約を締結したい旨を伝えなければなりません。
弁護士:藥師寺正典(やくしじ・まさのり)
中央大学大学院法務研究科修了。弁護士登録後、石嵜・山中総合法律事務所にて執務を開始し、現在弁護士法人第一法律事務所(東京事務所)所属。使用者側の人事労務管理のほか、民事・商事について、多岐の分野に対応。主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。