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連載【弁護士監修】知らなきゃ損する!転職と仕事の法律のQ&A

「無期契約社員」とは何ですか?正社員とはどう違うのでしょうか?

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Q.「無期契約社員」とは何ですか?正社員とはどう違うのでしょうか?

応募したい求人の雇用形態は「契約社員」ですが、契約を5年継続すると「無期契約社員」になれると聞きました。「無期契約社員」とは何でしょうか? 契約社員なのに無期雇用なのでしょうか? また、「正社員」や「限定正社員」とはどう違うのでしょう? 知っておくべきポイントを教えてください。(28歳/女性)

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A.「無期契約社員」とは労働契約の期間を定めない雇用形態の社員のことです。

「無期契約社員」とは、雇用期間に定めのない労働契約を結んでいる契約社員を指します。

従来、「無期雇用」は正社員、「有期雇用」は契約社員などと呼ばれることが一般的でした。
しかし、2012年の労働契約法改正により、有期雇用者が一定の条件を満たせば、無期雇用への転換を申し込むことができるようになりました。
この改正により、有期雇用の労働者が、同一の使用者との間で通算5年を超える契約更新を重ねた場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換することが可能となりました。

上記の制度を「無期転換ルール」(※)といい、派遣社員、契約社員、パート、アルバイトなどの労働者を対象としています。

つまり、「無期契約社員」とは、有期雇用から無期雇用へと転換した場合の新たな雇用形態といえます。

無期契約社員は、正社員と同様に雇用の安定性というメリットがある一方で、職務内容や待遇面では正社員とは異なる場合があります。転職活動の際は、無期転換後の労働条件について詳細を確認しておくことが重要です。

出典:厚生労働省「無期転換ルールについて

無期雇用とは?

無期雇用とは、労働契約において雇用期間を定めない雇用形態のことです。つまり、雇用契約の終了時期があらかじめ決まっていない状態で働くことを指します。

一方の有期雇用は、雇用契約に明確な契約期間が定められており、契約更新がない限り、その期間が満了すれば雇用は終了します。

無期雇用には雇用の安定性が高いというメリットがありますが、無期雇用への転換には一定の条件があります。

無期雇用への条件を見る

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そのほかの無期の雇用形態

無期契約社員のほかに、期間の定めがない雇用形態として、正社員や限定正社員があります。それぞれの雇用形態には特徴があり、労働条件や職務内容が異なります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

正社員とは?

正社員とは、無期雇用が一般的な雇用形態です。労働契約に期間の定めがなく、また原則として職務内容や勤務地にも制限がないため、さまざまな業務に従事することが求められます。

正社員は組織の中核を担う存在であり、雇用が安定している一方で、役割や責任も大きいといえます。福利厚生や研修制度が充実している場合も多いですが、その分、異動を求められることがあるなど、企業の采配に左右される可能性があります。

限定正社員とは?

限定正社員とは、無期雇用を前提としながらも、職務内容、勤務地、労働時間などが限定されている正社員のことを指します。一般的な正社員と比べると、職務の範囲が限られている分、転勤や残業が少ないなどのメリットがあります。ワークライフバランスを重視する方や、専門性を活かしたい方に適した雇用形態といえるでしょう。

ただし、限定正社員の待遇は企業によって異なるため、賃金や昇進・昇格の機会などについては、個別の労働条件を確認する必要があります。

無期転換ルールとは?

無期転換ルール 無期転換ルール

前述したとおり、無期転換ルールとは、有期雇用者が同じ雇用主の下で勤務を続け、通算契約期間が5年を超えた場合に、無期労働契約への転換を申請できる制度です。2012年の労働契約法改正により導入され、このルールにより有期雇用者の雇用の安定化が図られました。

無期転換の条件は以下の通りです。

【無期転換の条件】

・同一の雇用主との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新されている(※)

・労働者本人が雇用主宛に無期転換の申し込みを行っている

・無期転換の申し込みが、現在締結している有期労働契約の期間満了日までになされている

・有期雇用特別措置法の適用を受ける労働者(高度専門的知識等を有する有期雇用労働者や定年後に再雇用された有期雇用労働者など)でない

※大学・研究開発法人等の研究者、教員の場合は特例として、無期転換申し込み権発生までの期間が10年

出典:厚生労働省「無期転換ルールについて

上記の無期転換の条件は「労働契約法」第18条に定められています。しかし、一部例外も存在し、高度な専門知識を持つ有期雇用労働者や、定年後に再雇用された有期雇用労働者などは、無期転換の対象外となる場合があります。また、継続雇用制度の対象となる高齢者も一定の条件の下で無期転換は適用されません。無期転換の条件に該当するか判断がつかない場合は、労働局や労働基準監督署に相談しましょう。

また法律上、無期転換の申し込みを口頭で行っても問題ありませんが、証拠として残しておくために書面で申し込むことをおすすめします。

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「無期契約社員=正社員」ではない

無期契約社員は正社員と似ていますが、必ずしも同じではありません。労働条件は雇用元が設定できるので、無期転換後も職務内容や勤務地、労働時間などの労働条件は、有期契約時と基本的に同じです。

無期契約社員の中には、正社員に近い待遇の方もいれば、有期契約時とほとんど変わらない方もいるため、一概に「無期契約社員=正社員」とはいえません。
設定条件によっては、正社員との間に差が生じる可能性があり、無期雇用になったからといって、自動的に正社員と同じ待遇になるわけではないといえるでしょう。

契約の更新上限に注意

無期転換ルールが導入されたことで、企業の中には有期労働契約の更新上限を設ける動きがあります。例えば、あらかじめ有期労働契約の更新上限を5年未満に設定しているケースなどです。このような場合、有期雇用者は無期転換申込権を行使できないため、無期雇用への転換を期待して契約社員の求人に応募する際は注意しましょう。

2024年4月からは、労働条件明示の際に、更新上限の有無や無期転換後の労働条件もあわせて明示されることが義務づけられています。そのため、労働条件通知書や労働契約書を事前によく確認することで入社後のトラブルを防げるでしょう。

ここで扱った法律

無期転換ルールは、2013年4月に施行(2012年8月に公布・一部施行)された改正労働契約法第18条で定められています。この改正により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できるようになりました。
ただし、無期転換には一定の条件があり、労働者が希望しない場合は無期転換の対象外となります。

また、無期転換後の労働条件は、基本的に直前の有期労働契約の内容と同じです。ただし就業規約等に別で定められている場合は、労働条件が変更になることがあります。もちろん、責任の重さや仕事量と比例しない形で待遇が悪化する、勤務時間が長くなったのに待遇の変化がないなど、合理性のない変更は認められません。不安な場合は事前に就業規約を確認しておきましょう。

弁護士:藥師寺 正典(やくしじ・まさのり)

弁護士法人第一法律事務所 パートナー(社員弁護士)。経営法曹会議会員。企業の顧問業務をはじめ、労働審判・労働訴訟などの係争案件や、ユニオンなどとの団体交渉対応、労災対応、M&Aにおける労務デューデリジェンス対応など、経営者側での労働法務案件を数多く手掛ける。

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