Q 年俸制とは?給与は月給制とどう違う?毎月給与はもらえるの?
これから応募を予定している会社の給与形態が「年俸制」ということが分かりました。月給制とどう違うのですか?内定をもらったら確認すべきことを教えてください。(26歳/男性)
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A 年俸制は「成果主義型」の賃金体系。成果を測るための目標設定や評価の仕方を確認しておきましょう。
年俸制の特徴は、まず、文字通り「1年」ごとに年俸額を決めるということです。
月給制は月に1回給与が支払われるのだから、年俸制は年に1回、1年分の給与が支払われるのか…というと、そうではありません。会社は最低月に1回、期日を定めて賃金を支給しなければならないことが法律で決まっています。
ボーナスは、ない会社もあれば、業績に応じて年俸とは別途支給される場合もあります。また、会社によっては年俸額の中にあらかじめボーナス分を含んでいるケースも多く、その場合は、例えば年俸の額を16等分し、12を毎月に分けて支給、残りの4を、6月に2カ月分、12月に2カ月分、というように分けてボーナスの名目で支給します。
もう一つ、年俸制の大きなポイントは「成果主義型」の賃金体系だということです。年俸制の場合、次年度の年俸額を、業績などに関する目標の達成度を社員ごとに評価して決められます。評価によっては、上がることも下がることもあります。そのため、評価制度の詳細、何が評価の対象となり、達成度合いがどのように年俸に反映されるのかは確認しておく必要があるでしょう。
詳しく知りたい
会社がなぜ年俸制を採用するのかを理解しよう
年俸制について、法律的な定義はありません。
年俸制は、一般的に「成果主義型」の賃金体系だと言われます。会社が設定した制度や評価基準を前提に、会社と社員との間で年1回〜複数回にわたり実施される面談などで、業績などに関する目標の設定や達成度合いの評価を行い、最終的に会社が年俸額を決定します。
そのため、年俸制を採用する会社から内定をもらった場合は、目標の設定や人事評価の方法、評価に対して苦情や異議を申し立てる機会の有無など、制度の内容を確認しておくことをおすすめします。
会社が年俸制を採用する背景には、賃金を成果に応じて配分したいという目的があります。
月給制の場合は、職務遂行能力や職務内容等を考慮して給与額が決定されることが多いので、基本的には給与は下がりにくい傾向にありますが、年俸制では、成果に対する評価に応じて増額することもあれば、逆に減額する可能性もあります。ただし、過去の裁判例も踏まえると、減額の場合の下落幅は10%程度が穏当といえます。
年俸制だと残業代は付かないの?
年俸制は1年の給与額が決まっているので、残業代(時間外労働に対する賃金)が付かないと思われる人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。
年俸制の場合でも、労働基準法における時間外労働に関する規制が及ぶため、会社は残業代を支払わなければなりません。
ただし、年俸制は、労働時間の長さではなく社員の成果に着目した制度なので、法律上の労働時間規制が及ばない管理監督者、高度プロフェッショナル制度の適用対象者、みなし時間制である裁量労働制の適用者と親和的な制度といえます。
また、年俸額に残業代が含まれている場合もあります。例えば「年俸額の10%相当分を、1カ月当たり25時間分相当の時間外勤務手当とする」というような形です。この場合は、その取扱いの範囲を超える時間外労働にのみ、別途残業代が生じることになります。
このように、転職先が採用する労働時間制度や賃金制度によって残業代の算出の仕方は違ってくるので、就業規則等で確認しておきましょう。
ここで扱った法律
年俸額を減額する場合の変動幅について、法律での定めはありません。ただ、過去の裁判例をみてみると、減額が有効とされる場合の減額幅は、前年の年俸額の10%程度と考えられます。それを超えて減額幅が大きくなるほど、減額の有効性が認められにくくなるでしょう。
弁護士法人第一法律事務所 パートナー(社員弁護士)。経営法曹会議会員。企業の顧問業務をはじめ、労働審判・労働訴訟などの係争案件や、ユニオンなどとの団体交渉対応、労災対応、M&Aにおける労務デューデリジェンス対応など、経営者側での労働法務案件を数多く手掛ける。