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コラム・事例・インタビュー

連載【弁護士監修】知らなきゃ損する!転職と仕事の法律のQ&A

未払い賃金があるのですが、退職した後に受け取ることはできますか?

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Q 給料が未払いのことがありました。未払い賃金を退職した後に受け取ることはできますか?

業績不振で、ときどき給料が振り込まれず、賃金の未払いがあります。会社が倒産するのではないかという不安もあり、転職を考えていますが、未払い賃金を退職後に請求することはできるのでしょうか。(29歳/女性)

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A 未払いの賃金は退職後も請求できます。ただし、請求できる期限があります。

未払いの賃金は、退職した後にも請求できます。ですから、「退職後は請求できないのではないか」との考えから転職をためらっているのであれば、その心配はいりません。

ただし、在職中・退職後にかかわらず、未払い賃金の請求が有効とされる期間があり、「給与をもらう権利が発生してから5年以内」(但し、当分の間は猶予措置として3年間)と法律で定められています(※)。つまり、給料日から3年以上経って会社に請求しても、会社は時効を援用すれば未払い分の給与の支払いを拒否することができるということです。

※2020年4月1日施行の労働基準法改正により、2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権についての消滅時効期間が賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長されました。ただし、当分の間は猶予措置としてその期間は3年とされています。

また、裁判外で未払い賃金の支払いを求めても、会社が支払わずに一定期間が経過してしまうと時効が成立してしまいます。そこでよくあるケースとしては、会社に対して内容証明郵便を出して催告します。そうすると、時効の完成が6カ月間猶予されることになるので、その期間中に裁判を起こすのが一般的です。請求手続きは、計算などが複雑なので、弁護士に相談するのがよいでしょう。

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会社が倒産してしまった場合

勤めていた会社が倒産してしまい、未払い賃金の請求先がなくなってしまう場合もあります。

会社が倒産した場合の手続きは、破産、民事再生、会社更生という裁判所の監督の下で行われる法律上の倒産手続きと、裁判所の関与がなく、会社と債権者との間の個別交渉で行われる任意整理手続きがあります。たとえば破産手続きでは、裁判所から選任された弁護士が「破産管財人」となり、倒産した会社の債権や債務を処理していくこともあります。その際に、破産管財人は「誰にいくら支払われていないか」を整理して、未払いのあった社員・元社員に対して支払いを行っていきます。

ただし、倒産した場合は、その会社の取引先などが持っているさまざまな債権も保護の対象となります。法律では、それらの債権の優先順位が定められており、未払い賃金もその優先順位にのっとって処理されます。基本的には、未払い分の賃金は手厚く保護されますが、全額の支払いが保証されているわけではありません。

倒産した会社に対する未払いの賃金や退職金を確保するための制度として、「未払賃金立替払制度」が使われるケースもよくあります。この制度は、国が会社に代わって元社員の未払い賃金の一部を立て替えて支払う制度です。ただしこの場合も、もらえたはずの給与の全額がもらえるわけではありません。

ここで扱った法律

労働基準法の第115条で、賃金の請求を5年間行わない場合は時効によって消滅すると定められています。ただし、第143条の第3項で、この5年間については「当分の間」は「3年間」にすると定められています。

弁護士:藥師寺 正典(やくしじ・まさのり)

弁護士法人第一法律事務所 パートナー(社員弁護士)。経営法曹会議会員。企業の顧問業務をはじめ、労働審判・労働訴訟などの係争案件や、ユニオンなどとの団体交渉対応、労災対応、M&Aにおける労務デューデリジェンス対応など、経営者側での労働法務案件を数多く手掛ける。

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