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転職Q&A(お金)#退職一時金・企業年金

Q. 確定拠出年金は、転職・退職後どうなりますか?

来月転職することになりました。現在の勤務先で確定拠出年金に加入しています。これまでに積み立てた分は60歳まで引き出せないとも聞きますが、ここで積み立ててきた資産は、転職に伴ってどうなりますか?何か手続きは必要でしょうか。退職金やiDeCoとの違いもよく分からないので、確定拠出年金について詳しく教えてください。(27歳/男性)

A.退職後の進路によって移管手続きが必要です。原則として60歳まで引き出し不可ですが、脱退一時金を受け取れるケースもあります。

確定拠出年金には企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)と個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)の2種類があり、質問者さまが加入している制度は企業型DCです。

現在勤務している会社を退職した場合、転職先の会社に企業型DCがあるかないかで手続き内容が変わります。また、公務員や自営業者、専業主婦(夫)になる場合や再就職しない場合でも手続きが異なります。

年金資産を引き出すのは60歳まで原則不可となっていますが、60歳未満でも一定の条件を満たしている場合は積み立てた年金資産を、脱退一時金として受け取ることができるケースもあります。

詳しく見ていきましょう。

転職・退職後の確定拠出年金手続きの図

退職後の確定拠出年金の手続き

確定拠出年金(企業型DC)加入者が退職する際、その後の進路によって手続きが変わってきます。主に以下3つのケースがあります。

  • 転職先に企業型DCがある場合
  • 転職先に企業型DCがない、または加入しない場合
  • 再就職しない、または公務員・自営業者・専業主婦(夫)になる場合

順番に見ていきましょう。

転職先に企業型DCがある場合

転職先に企業型DCがある場合は、その会社の企業型DCに加入することができます。ただし、会社によっては企業型DCの加入範囲に制限をかけている場合もあります。加入可能な範囲を職種・勤続期間・年齢などで限定していることもあるため、ご自身が加入できるかを転職先に確認してください。

転職先の企業型DCに加入する場合、これまでに積み立てていた資産は転職先が指定した商品に自動的に配分されます。ご自身が運用したい商品への買い替えが必要になるため、転職前に運用していた商品に掛金を拠出できるとは限りません。転職前と転職後で掛け金を拠出する商品が変わる可能性があることを覚えておきましょう。

転職先の会社が企業型DCのみの運営をしている場合、拠出できる金額は月額55,000円までです。ただし、転職先の会社が企業型DCのほかに、確定給付企業年金を運営している場合は、月額12,000円までの拠出となるため注意してください。

これまでの積立額を転職先の企業型DCに移し替える手続き(この手続きを「移換」という)は会社が主導で行ってくれることがほとんどですが、商品は会社が指定する中からご自身で選ぶことができます。ご自身にとって最適な商品を選びましょう。

転職先に企業型DCがない、または加入しない場合

転職先に企業型DCがない、または加入しない場合は、iDeCoに移換することができます。

iDeCoへの移換手続きは、企業型DCの資格喪失の通知を受け取ってから6カ月以内に行わなければなりません。期限内に手続きが完了しなかった場合は、これまでに積み立ててきた資産が国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまいます。自動移換されると資産が運用されなくなるだけでなく、管理手数料も発生するため、別途費用が必要になってしまうのです。ご自身に不利益とならないよう、できるだけ早めに手続きをしておきましょう。

iDeCoへの移換手続きは、次の書類を用意しておくとスムーズに完了します。

  • 基礎年金番号
  • 確定拠出年金の加入者資格喪失のお知らせ
  • 掛金引き落としに登録している口座の情報

書面またはオンラインで申し込みができ、審査から移換手続きが完了するまでは2カ月ほどかかります。iDeCoで掛金の拠出を継続するか、資産を移すだけにするかは、ご自身で選択可能です。

再就職しない、または自営業者・公務員・専業主婦(夫)になる場合

中途退職後に職を持たないまたは自営業を営む場合、公務員になる場合、専業主婦(夫)になる場合は、企業型DCからiDeCoに移換することができます。手続き内容も前項と同様です。しかし、掛金の拠出限度額がそれぞれ異なります。
再就職しない・自営業を営む場合のうち、海外に住んでいる方や国民年金保険料の免除を受けている方は、新たな掛金の拠出ができないため注意してください。

退職後の進路 拠出限度額(月額)
再就職しない・自営業を営む場合 68,000円
公務員になる場合 12,000円
(2024年12月(2025年1月引き落とし分)からは、
限度額が20,000円に引き上げられます)
専業主婦(夫)になる場合 23,000円

退職して確定拠出年金の手続きを何もしないとどうなる?

企業型DCは、加入資格喪失の翌月から6カ月以内に手続きをしないと、自動移換されてしまいます。自動移換とは、これまで積み立ててきた資産が現金化され、国民年金基金連合会に自動的に移されてしまうことです。

自動移換された際は、以下のようなデメリットが生じます。

  • 資産運用がされない
  • 自動移換されると管理手数料を請求される
  • 老齢年金の受給可能年齢が遅くなることがある

請求される管理手数料の金額は以下のとおりです。

請求項目 手数料額
自動移換されるときの手数料 3,300円
自動移換中の管理手数料 52円/月(自動移換して4カ月以降からの請求)
iDeCo・企業型DCへの資産移換 1,100円(移換先の機関により手数料が別途かかる場合もある)
脱退一時金・死亡一時金の受け取り 4,180円

上記とは別に、国民年金基金連合会から「自動移換される際の手数料」として1,048円、「iDeCoに資産移換する際の手数料」として2,829円がかかります。

せっかく積み上げた資産を減らしてしまうことになるため、自動移換されるまでの6カ月の間に必ず手続きを行いましょう。

企業型DCと退職金・iDeCoの違い

企業型DCと退職金・iDeCoの違いについて解説します。

企業型DCは、退職金やiDeCoと同じような意味合いに取られてしまうことが多いですが、それぞれ異なる意味を持っています。3つの制度の意味を理解し、将来の自助努力による資産形成の手段として、うまく活用することが大切です。

企業型DCと退職金の違い

企業型DCと退職金は、受給した金銭を「老後の生活資金に役立てることができる制度」という観点では同じ意味を持っています。簡単にまとめると、企業型DCの主導権を握っているのは個人、退職金の主導権は会社です。詳しく見ていきましょう。

【企業型DC】

企業型DCは老後資金の形成が目的の制度で、60歳以降に一時金または年金形式で受給できる制度です。掛金の拠出は加入者か会社、もしくは共同で行い、共同の場合は全額が所得控除の対象になります。そのため、利息・配当・運用益が非課税になる点が特徴です。

受給する際は、一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金形式で受給する場合は公的年金等控除の対象になります。会社が倒産しても積立金が社外にあることから、安全性が高いといえるでしょう。

【退職金】

退職金は、会社を退職する際に金銭を一括で受け取るため、退職後の生活資金として活用できます。退職金を受給した際は、退職所得控除の対象となる点が特徴です。

掛金を会社が負担するため、万が一会社が倒産してしまった場合は退職金を受け取れないという、恐れがあります。また、勤続年数で退職金額が増えていくため、年数が5年未満などと少ない場合は、受給金額が少ないかまったくない可能性があります。

企業型DCとiDeCoの違い

冒頭にも登場した確定拠出年金の個人型がiDeCoです。20歳から65歳までの方が加入対象となり、掛金の拠出は加入者本人が行います。掛金の上限は会社員や自営業者、公務員などで異なりますが、掛金の全額が所得控除の対象です。

一方、企業型DCは会社員が加入対象になります。掛金の拠出は会社か加入者本人、もしくは共同で行います。掛金を会社と加入者で共同負担している場合は「マッチング拠出」といい、この場合の掛金は全額所得控除の対象です。

つまり、iDeCoは自助努力で企業型DCは福利厚生の一つといえるでしょう。iDeCoと企業型DCは併用することができるため、老後のリスクをより軽減することができます。ただし、会社員で勤務先が企業型DCに加入していない場合は併用ができないため、注意してください。

iDeCoについての詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。

iDeCo加入中に転職した場合、手続きが必要ですか?

60歳未満であっても脱退できるケース

企業型DCは、原則60歳まで脱退することができません。しかし、転職先に企業型DCがあるものの、好みの商品が見つからなかったなどの理由があり、転職先の企業型DCに加入しない場合は脱退することができます。脱退した場合は、積み立てた年金資産を「脱退一時金」として請求可能です。

しかし、脱退一時金を受給するには、以下の条件すべてに該当していなければなりません。

  • 確定拠出年金の加入者もしくは運用指図者(掛金の拠出を行わず、運用の指図のみを行う人)でないこと
  • iDeCoに加入できない者であること
    (第2号被保険者を除く20歳未満・日本国内に住所がない外国籍の者・国民年金保険料免除者)
  • 日本国籍を持つ海外移住者であること
  • 障害給付金の受給者でないこと
  • 合計の拠出期間が5年以内もしくは個人別管理資産が25万円以下であること
  • 企業型年金加入者資格を喪失した月の翌月から6カ月以内であること

脱退一時金を請求する際は、国民年金基金連合会もしくは企業型記録関連運営機関に行います。どちらに請求すべきかを、事前に確認しておきましょう。

【監修】社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

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