
転職Q&A(お金)#給与
Q. 深夜手当(深夜割増手当)とは?計算方法を教えてください。
現在、深夜帯の勤務がある会社への転職を検討しています。求人票に「深夜手当あり」と記載があるのですが、深夜帯に働けば基本給などに上乗せがあるということですか? どのような計算で給与につながるのでしょうか。また、夜勤手当もよく見かけるのですが、意味の違いは何でしょうか?(24歳・男性)
A.深夜手当(深夜割増手当)は、午後10時から午前5時までの間に勤務した場合に支払われる、基本給や手当の金額に所定の割合を上乗せした賃金です。
労働者が午後10時から午前5時(深夜時間)に労働した場合、企業側は深夜時間に労働した時間に対して、通常の賃金の25%以上の割増率を加算しなければならないと、労働基準法第37条の④で定められています。地域または期間によっては深夜とされる時間帯が午後11時から午前6時までの場合もあります。
質問者の方は問題ありませんが、以下の条件に当てはまる方は深夜労働ができません。
- 満18歳未満
※交代制によって勤務する満16歳以上の男性は適用外(労働基準法第61条の①) - 妊産婦
※本人が深夜労働の免除を会社に請求した場合に適用(労働基準法第66条の③)
上記は、労働基準法第60条により、成長期である労働者や妊娠・出産にかかわる女性の健康を守るために定められた条文により規定されたルールです。以上に該当する方は、勤務形態や勤務時間などの見直しを会社に相談しましょう。
夜勤手当との違い
質問者の方も気にしていた「夜勤手当」は、「深夜手当(深夜割増手当)」とは意味が異なります。深夜手当は労働基準法で定められた割増賃金で、会社は対象となる労働者に必ず支払わなければなりません。一方、夜勤手当は、会社が任意で設定している賃金で、会社によっては支給されない場合があります。夜勤手当は法律上の支払い義務がないため、就業規則でしっかりと把握しておくことが大切です。
ただし、夜勤手当であっても、深夜手当と同じ意味で採用している会社もあります。支給パターンも会社によって異なり、深夜手当と同様の25%の割増率で計算した金額を別手当で支給する場合や、夜勤勤務の回数や時間に応じて回数額(時間額)を支給する場合もあります。
求人票の一律手当や条件などの欄に夜勤手当と記載がある場合は、金額や対象となる時間帯を求人票の記載内容から確認しましょう。前述のように、深夜手当と同じ意味で使われていたり、基本給とは別に割増された手当を支給したりする場合など、会社によって、異なるためです。
深夜手当は管理職も受け取れる
管理職は、時間外手当や休日手当は発生しませんが、深夜手当(深夜割増手当)は必ず受け取れます。労働基準法第41条で、労働時間と休憩、休日に関する適用はしないとありますが、深夜手当は含まれていないためです。
しかし、管理職の給与には一定の深夜手当がすでに含まれている場合があります。その場合は、すでに含まれている金額分以上に深夜労働した場合に限り、深夜手当が支給されます。
時間外手当と深夜手当(深夜割増手当)の違い
時間外手当とは、定められている労働時間の延長または休日に労働した場合に支払われる賃金です。労働基準法第32条により、労働者は休憩時間を除いて1日8時間、1週間で40時間を超えて労働させてはならないと定められています。
時間外労働をした場合は労働基準法第37条により、会社は通常の労働時間または労働日の賃金の25%以上、1カ月で60時間を超えた場合は50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。つまり、時間外労働に加えて深夜労働をした場合、25〜50%の時間外手当と25%の深夜手当が支払われます。また、休日に働いた場合は35%の割増率が休日手当として支給されますが、振替休日を提供された場合は支給対象にならないため、注意してください。
深夜手当、時間外手当、休日手当の割増率を表にまとめました。改めて3つの手当の支払い条件や割増率を確認してみましょう。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
---|---|---|
深夜手当 | 午後10時から午前5時(地域または期間によっては午後11時から午前6時)に勤務させたとき | 25%以上 |
時間外手当 | 法定労働時間(1日8時間、1週間で40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が1カ月で60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日手当 | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
【状況別】深夜手当(深夜割増手当)の計算方法
深夜手当(深夜割増手当)の計算方法をはじめ、残業や休日出勤した際の時間外手当が含まれる場合の計算方法を紹介します。自分の想定されるケースに当てはめて考えてみましょう。
ただし、前述のとおり、企業の就業規則によっては割増率が異なる場合があるので、ご注意ください。不明な点がある場合は、ご自身の企業の担当部署や労働基準監督署に問い合わせることをおすすめします。
深夜手当の計算方法
深夜手当(深夜割増手当)の計算は、まずは以下のように賃金を1カ月の労働時間で割り、平均所定労働時間を算出します。所定労働時間とは、会社が労働者に定めている労働時間のことで、休憩時間は含まれません。次に、賃金を平均所定労働時間で割り、割増率と深夜労働時間をかけると深夜手当を算出できます。
【計算方法】
(365日 ― 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12カ月 = 平均所定労働時間
(賃金 ÷ 平均所定労働時間)× 割増率125% × 深夜労働時間 = 深夜手当
実際に数字を当てはめて計算してみましょう。以下の条件をもとに深夜手当を算出します。
- 賃金:25万円
- 年間休日:125日
- 1日の所定労働時間:8時間
- 深夜労働時間:8時間
【計算例】
(365日 ― 125日)× 8時間 ÷ 12カ月 = 160時間
(25万円 ÷ 160時間)× 1.25 × 8時間 = 15,625円
深夜手当の計算で1円未満の端数が出た場合の処理方法は、50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げます。深夜労働時間の合計で1時間未満の端数が生じた場合は、30分未満は切り捨て、以上は1時間に切り上げるという処理方法です。
休日出勤で深夜手当が発生した場合の計算方法
休日出勤で深夜手当が発生した場合は、休日手当と深夜手当のどちらも受け取れます。休日手当は1時間当たりの賃金を算出し、その賃金に該当する労働時間と割増率をかけることで求められます。また、算出された休日手当を深夜手当に加算することで、実際の受け取り金額を算出可能です。
【計算方法】
賃金 ÷ 1カ月の平均所定労働時間 = 1時間当たりの賃金
1時間当たりの賃金 × 割増率135% × 該当する労働時間 = 休日手当
1時間当たりの賃金 × 割増率25% × 該当する労働時間 = 深夜手当
休日手当(割増率135%) + 深夜手当(25%) = 手当の合計
実際に休日出勤で深夜労働を5時間した場合の合計の手当額の計算をしてみましょう。
【計算例】
25万円 ÷ 160時間 = 1,562.5円
1,562.5円 × 1.35 × 5時間 = 休日手当10,547円(端数切り上げ)
1,562.5円 × 0.25 × 5時間 = 深夜手当1,953円(端数切り捨て)
10,547円 + 1,953円 = 12,500円
深夜に労働して残業も発生した場合の計算方法
深夜労働をして残業も発生した場合の計算方法は、1時間当たりの賃金に割増率と残業時間をかけて算出します。ここでは、時間外労働が1カ月で60時間を超えた場合の割増率(50%)での計算方法を紹介します。
【計算例】
1時間当たりの賃金 × 割増率150% × 残業時間 = 残業手当
残業手当 + 深夜手当 = 手当の合計
深夜労働の残業が5時間だった場合の手当の計算をしてみましょう。
【計算例】
1,562.5円 × 1.50 × 5時間 = 11,719円(端数切り上げ)
11,719円 + 1,953円 =13,672円
固定残業時間制や裁量労働制の場合
勤務先によって、深夜手当(深夜割増手当)や残業代の支払いに、固定残業時間制や裁量労働制を採用している場合があります。固定残業時間制は、想定される深夜手当や残業時間分の賃金をあらかじめ固定給とあわせて支給する制度です。裁量労働制は、あらかじめ会社と労働者で規定している時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支給することです。
どちらの制度を採用している場合でも、定められた時間より少ない残業時間でも深夜手当は支給されます。また、所定の時間を超えて残業した場合も、追加で深夜手当は支給されます。ただし、夜勤手当が支給される場合は、会社によって定められている内容が異なる場合もあるため、入社後に就業規則を把握しておくと、自分で計算するときに分かりやすくなります。
【監修】ゆめみ労務管理事務所(ゆめみろうむかんりじむしょ)/代表 関口 恵太(せきぐち・けいた)
平成3年群馬県生まれ。学生時代に社会保険労務士の存在を知り、開業を目指すため資格を取得。社会保険労務士法人に勤めた後、27歳でゆめみ労務管理事務所を開業。クラウドを活用した人事・労務の課題解決、給与設計、助成金申請を得意とする。埼玉県熊谷市を拠点としながらも全国に多数の顧問先を抱え持つ。うた行政書士事務所 代表行政書士も兼任。
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