Q. ベースアップ（ベア）とはなんでしょうか？分かりやすく教えてください。

A．ベースアップ（ベア）とは、社員全員の給与を一律で上げることです。

ベースアップとは、賃金表の改定により、給与の水準を引き上げることです。賃金表とは、学歴・年齢・勤続年数・職務・職能などにより、賃金がどのように定まっているかを表にしたものをいいます。

一方で定期昇給とは、あらかじめ労働協約、就業規則などで定められた制度に従って行われる昇給のことで、一定の時期に毎年増額していくことをいいます。年齢、勤続年数による自動昇給のほかに、能力、業績評価に基づく昇給があり、毎年時期を定めて査定を行っている場合も含みます。

「定期昇給」って何？「ベースアップ（ベア）」との違いは？

賃金表の改定は、主に以下のような事情・目的で行われます。

• 企業の業績
• 労働力の確保・定着
• 雇用の維持
• 物価の動向
• 世間相場

ベースアップが行われるようになった背景として、少子高齢化による人材不足が挙げられます。日本の企業は、これまで年功序列で給与を決めるのが一般的でしたが、人材不足を背景に優れた人材を獲得するため、ベースアップを実施する企業が増え始めました。

また、ベースアップが行われる要因として「賃上げ促進税制」の改正も考えられます。「賃上げ促進税制」とは、企業が得た収益を従業員に還元するための賃上げの促進を目的とした制度です。賃上げを行った企業は、増額した一部を法人税・所得税から税額控除することができます。この制度による後押しも、ベースアップが増加している要因の一つでしょう。

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ベースアップ（ベア）の種類と計算方法

ベースアップには「一律の金額」を賃金に足す方法と、「昇給率」を賃金に掛け合わせる方法の2種類があり、それぞれ計算方法が異なります。それぞれの計算方法を見ていきましょう。

「一律の金額」を上乗せする方法

賃上げ対象の社員全員に同じ金額が一律で基本給に上乗せされます。計算式は以下のとおりです。

例えば、月給25万円で一律5,000円アップする場合、「25万円＋5,000円」になります。現在の給与に足すだけで求められます。

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「昇給率」を掛け合わせる方法

昇給率を掛け合わせる方法では、賃上げ対象の社員全員の給与に一律の昇給率を乗じます。これにより賃上げ後の給与が算出されます。昇給率を使ったベースアップ後の給与の計算式は以下のとおりです。

例えば、月給25万円で昇給率が3％だった場合は、以下のように求められます。

25万円 ＋ （25万円 × 3％）＝ 25万7,500円

ベースアップ（ベア）と「昇給」との違いは？

質問者様が気になっていたワードである「昇給」とは「定期昇給」のことです。企業が定めた時期に賃上げが行われ、昇給頻度は企業によって年1回や年2回などと異なります。また、定期昇給は、個人の能力や成果、勤続年数などに応じて決定します。

一方、ベースアップは企業全体の給与水準が上がるため、個人の評価で賃上げされるわけではありません。昇給は個人の賃上げ、ベースアップは企業全体の賃上げと考えると、両者の違いが理解しやすくなります。

「定期昇給」って何？「ベースアップ（ベア）」との違いは？

ベースアップ（ベア）によってボーナスは上がるの？

ボーナスは基本給をもとに計算される場合が多いため、ベースアップが行われるとボーナスも増える可能性は十分にあります。ボーナスが「基本給の○カ月分」という形で支給される場合、基本給の上昇に伴ってボーナスも増額されます。

例えば、基本給20万円でボーナスが基本給の2カ月分の場合は、ボーナスの金額は40万円です。ベースアップで基本給が21万円になった場合、ボーナスは「21万円 × 2カ月」になるため、42万円となり、2万円の増加になります。

ベースアップ（ベア）はどのタイミングで実施される？

ベースアップは、業績向上や人材確保のために年に一度実施されるのが一般的です。しかし、すべての企業が必ず実施するわけではありません。

毎年2月から3月にかけて、大手企業を中心に労働組合が経営陣に対し、賃上げや労働時間などの改善を要求する「春季生活闘争（春闘）」が行われます。春闘で労働組合からベースアップの要求があり、企業側が要求を受け入れた場合にベースアップが実施され、4月からの給与に反映されます。全企業が必ずベースアップを行うわけではないので、注意してください。

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【監修】宮崎貴美子税理士事務所（みやざききみこぜいりしじむしょ）／代表　宮崎　貴美子（みやざき・きみこ）

熊本県在住。平成2年熊本国税局に入局し法人の調査事務、審理事務に従事。出向先の熊本国税不服審判所で、納税者の声を聴き、税法をもっと知ってもらいたいと令和2年に税理士事務所を開設。執筆やセミナーを通して、税の不公平不平等をなくしたいと活動中。代表する書籍として『国税で29年働いて見えた真実 税金を取られる人税金を取られない人』がある。