
転職Q&A(お金)#給与
Q. 給与(給料)明細の見方が分かりません。用語の意味や見るべき項目を教えてください。
「勤務先から給与(給料)明細をもらいましたが、内容がよく分かりません。用語の意味や見るべき項目を知りたいので、給与明細の見方を具体的に教えてください。(23歳・男性)」
A. 給与(給料)明細は「勤怠・支給・控除・差引支給額」の項目で構成され、収入をどれだけ得て、何が天引きされているのかを把握できる書類です。さまざまな項目があるため、知りたい情報によって見るべき項目が異なります。
給与(給料)明細は、自分の収入がどのくらいで、何にいくら支払っているかを確認できる書類です。大きく分けると「勤怠・支給・控除・差引支給額」の4つで構成されています。

給与明細は所得税法第231条により発行が義務づけられていますが、書類の形式は法定されていないため、会社ごとにフォーマットが異なります。各社が必要事項を自由に記載できるため、項目名も異なります(例:「勤怠」と「勤務欄」など)。
給与(給料)明細を構成する4つの項目
給与明細の見るべき項目は、知りたい情報によって異なります。ここでは、給与明細を構成する「勤怠・支給・控除・差引支給額」を詳しく掘り下げていきます。
①勤怠
勤怠欄には、勤務日数・時間や残業時間など、給与計算の根拠となる1カ月分の勤怠情報が記載されています。例えば締め日が20日の場合、前月21日から当月20日までの勤怠情報が記載されます。勤務先の締め日を確認してから内容を確認しましょう。
勤怠欄に記載されている主な項目は以下のとおりです。
項目 | 概要 |
---|---|
出勤日数 | 実際に出勤した日数 |
欠勤日数 | 休んだ日数 |
休日出勤日数 | 会社の定める休日に出勤した日数 |
有休消化日数 | 有給休暇を取得した日数 |
総労働時間 | 実際に働いた時間の合計 |
普通残業時間 | 会社の定める所定労働時間を超えて働いた時間 |
休日労働時間 | 労働基準法に規定された休日に働いた時間 |
深夜残業時間 | 深夜(午後10時から午前5時)に働いた時間 |
遅刻早退時間 | 遅刻や早退で働くことができなかった時間 |
②支給
支給欄では、基本給、残業手当、深夜手当、通勤手当など会社から受け取る総支給額を把握できます。前項の「①勤怠」で解説したような項目をもとに算出されており、健康保険料や所得税などが差し引かれる前の金額が記載されています。
支給欄に記載される主な項目は以下のとおりです。ほかにも、役職手当や資格手当といった各種手当、欠勤控除が含まれることもあり、会社ごとに記載項目が異なります。支給欄に記載がない場合でも、「その他」という欄がある場合はそちらに記載されている場合もあるので、確認してみてください。
項目 | 概要 |
---|---|
基本給 | 会社から毎月固定で支払われる給与 |
残業手当 | 所定労働時間を超えて働いた分に対する手当 |
深夜手当 | 深夜(午後10時から午前5時)に働いた分に対する手当 |
住宅手当 | 従業員の家賃や住宅ローンの補助が目的の手当 |
通勤手当等 | 通勤に必要な公共交通機関の利用費やガソリン代などの手当 |
そのほか、住宅手当については以下の記事が参考になります。
住宅手当とはどのような制度ですか?家賃補助との違いはなんですか?
③控除
控除欄には、社会保険料や所得税など給与から差し引かれる金額が記載されています。会社は従業員に代わって源泉徴収を行い、給与から必要な金額を差し引きます。
控除欄に記載されている主な項目は以下のとおりです。ほかに、会社独自の控除として「労働組合費」や「互助会」などの項目が記載されている場合もあります。また、欠勤したときに本来支払う予定だった給与を差し引くための「欠勤控除」や、制服代や資格試験の費用などが載っているケースもあります。
項目 | 概要 |
---|---|
健康保険料 | 事業主と従業員が折半して支払う公的医療保険料。 健康保険料を支払うことで医療費の自己負担は1〜3割で済む |
厚生年金保険料 | 事業主と従業員が折半して支払う公的年金制度にかかる保険料。 国民年金に上乗せして支給される年金になる |
介護保険料 | 介護が必要な人とその家族にかかる費用の負担を軽減する保険で、 40歳から65歳の人が負担する |
雇用保険料 | 雇用継続等に関する保険の制度で、 求職者給付、就職促進給付、雇用継続給付、教育訓練給を行うために、負担する |
所得税 | 勤務先からの給与や副業などで稼いだお金に対してかかる税金(給与の支給方法や「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出の有無に応じて「給与所得の源泉徴収税額表」によって求める) |
住民税 | 給与を支払う事業者が税金などを代わって預かり、 その徴収すべき税金などを納入させる特別徴収により天引きされた地方税 |
そのほか、社会保険や健康保険については以下の記事が参考になります。
転職先の健康保険の給付内容はどこをチェックするべきでしょうか?
④差引支給額
差引支給額は、実際に受け取ることができる金額、いわゆる「手取り金額」です。支給額から控除が引かれた金額が記載されています。簡単に計算できるので、念のため金額に誤りがないか、確認するようにしましょう。
差引支給額(手取り金額)は、銀行振込みや手渡しで受け取るのが一般的ですが、近年はキャッシュレス化が進み、電子マネーで支払う会社もあります。
【早見表つき】手取りとは?額面との違いとは?月給・年収の手取り計算の方法
給与(給料)明細を受け取ったら内容に誤りがないか確認する
給与(給料)明細を受け取ったら、勤務日数や有給残日数などの各日数に誤りがないか、実際に働いた時間よりも少なく記載されていないか、金額が誤りでないかなどを確認してください。誤りがあれば、上司や経理担当者に連絡し、過不足分を精算してもらいましょう。
実際より多く支給された場合は超過分を返還する必要があります。逆に少なく支給された場合は、不足分を受け取ることができます。差額の返還手続きや支払い方法は、会社からの指示に従って対応しましょう。
もっと詳しく知りたい
給与(給料)明細の見方に関するよくある疑問を事前に解消しておくことで、スムーズに書面を理解することができます。さらに詳しく知りたい方は、以下の項目の解説をご覧ください。
給与(給料)明細の「その他」に記載されている内容
給与明細の「その他」には、資格手当や食費補助、書籍購入代などの支給欄には含まれていない手当が記載されています。残業代の調整額や休日出勤の特別手当なども載っている場合もあります。また、自転車通勤手当やバーステー手当など、会社独自の手当が記載されることがあります。
また、給与明細はフォーマットが決まっていないため、支給欄に記載されがちな通勤手当や住宅手当などが記載されることもあります。
給与(給料)明細は捨ててもよい?
給与明細は、社員側に保管義務がないので捨てても問題ありません。しかし、賃貸住宅や住宅ローンの契約などで提出を求められる可能性もあります。
また、給与明細は基本給や残業代の未払い分を請求する際にも必要です。ただし、給与明細だけでは根拠不十分とされる場合もあるため、勤怠管理表や基本給が記載されている書類や、実際の振込金額が分かる書類なども準備しておきましょう。
給与明細が電子化されている場合は、会社所定のツールからダウンロードしておくと、紛失の恐れもなく場所を取らずに保管できます。
年末調整のときに記載される項目
年末調整で源泉所得税が還付された際は、支給欄に「年末調整還付額」や「所得税還付額」などと記載されています。この金額は、毎月の給与から差し引かれている所得税および復興特別所得税(※)の合計額と、その人が1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税の額よりも多かった場合に還付されるものです。
反対に、追加で納めなければならない場合は、控除欄に「年末調整追加徴収」や「年調不足税額」などと記載され、給与から差し引かれます。扶養親族が減ったときや業績が良くボーナスを多くもらったときなどに、追加徴収が発生します。

※年末調整については、会社や個人によって表記が異なります。当給与明細は年末調整還付金を受けるケースとして作成。
【監修】宮崎貴美子税理士事務所(みやざききみこぜいりしじむしょ)/代表 宮崎 貴美子(みやざき・きみこ)
熊本県在住。平成2年熊本国税局に入局し法人の調査事務、審理事務に従事。出向先の熊本国税不服審判所で、納税者の声を聴き、税法をもっと知ってもらいたいと令和2年に税理士事務所を開設。執筆やセミナーを通して、税の不公平不平等をなくしたいと活動中。代表する書籍として『国税で29年働いて見えた真実 税金を取られる人税金を取られない人』がある。
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