医療事務とはどんな職種? 仕事内容/年収/転職事情を解説
医療事務は病院やクリニックなど、各種医療機関で事務処理を担当する職種です。医療事務に興味はあるものの、「具体的にどんなことをするの?」「未経験でも大丈夫?」と疑問に思う人もいるかもしれません。本記事では、医療事務の主な仕事内容や求められる能力、なり方について解説していますので、医療事務への転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
医療事務の仕事データ
収入
年収
285.5万円
「事務/アシスタント」系職種の平均年収は333.1万円
年間ボーナス
50.1万円
残業・休日
月間残業時間
10.5時間
年間休日
116.8日
医療事務とは?
医療事務とは、病院・診療所・クリニックなどの医療機関で働く事務職のことを指します。一般事務はデータの入力作業や書類作成、電話対応などが主な仕事ですが、医療事務の仕事ではカルテの準備など、医療機関特有の業務が含まれます。
来院した患者さんに対して診療の案内をしたり、会計や診療報酬の請求を行ったりするのも医療事務の仕事です。医療事務の現場では専門用語が使われることもあるほか、薬の種類・病名、医療事務専用のソフトウェアの使い方も覚える必要があるなど、専門性が求められます。
患者さんと直接話す機会も多く、感謝の言葉を述べられたときにはやりがいを感じることもあるでしょう。また、未経験歓迎の求人も多いためチャレンジしやすく、医療の需要が高いため安定して働き続けられることや、手に職をつけられることから、医療事務への転職を検討する人も少なくありません。
医療事務の仕事内容
医療事務の仕事内容は、大規模な医療機関では業務が細分化されることが多く、中小規模の医療機関では全般的に対応するなど、規模によって担当範囲が異なります。ここでは、医療事務の主な仕事内容を3つ紹介します。
受付・会計業務
「受付・会計業務」は患者さんと接する機会が多いため、病院の顔ともいえます。受付では、患者さんの保険証を確認し、記入された問診票を基にカルテを作成します。
会計時には、保険適用の有無や診療内容などを基に、診察料金を計算し、領収書を発行。計算自体はコンピュータで行い、領収書や明細書といっしょに処方箋なども手渡します。
受付・会計業務では、患者さんが安心して診療を受けられるような、コミュニケーションスキルも求められます。
レセプト業務
レセプトとは「診療報酬明細書」のことで、医療費のレシートのようなものです。患者さんの氏名、かかった医療機関名、診療の内容などが記載されています。保険診療の場合、患者さんは診療費用の全額ではなく一部を支払います。残りの費用は、保険証を交付している健康保険組合などから請求する仕組みとなっており、その際にこのレセプトが必要なのです。
数多くの医療機関が個別の健康保険組合に一つひとつ請求すると、膨大な手間と時間がかかります。そこで、「審査支払機関」と呼ばれるところに一括してレセプトを提出し、健康保険組合に代わって診療費用を支払ってもらいます。
「レセプト業務」はレセプトの作成、内容の確認、審査支払機関への提出を担当します。医療機関の収支を左右する重要な業務の一つです。
クラーク業務
医師や看護師などの事務作業をサポートする業務を「クラーク業務」と呼びます。忙しい医療スタッフに代わって事務作業を行うことで、医療機関の運営をスムーズにすることが主な目的です。大きく2つの種類に分けられており、病院のナースステーションで勤務する「病棟クラーク」と、外来受付で勤務する「外来クラーク」があります。
病棟クラークは入院患者にまつわる事務業務を担当します。主な業務内容は、入退院の手続き、患者さんと家族への説明、カルテの整理、転院の紹介状手配などです。また、手術・検査データの準備、レントゲンの準備など、一般的な事務業務よりもさらに医療現場に踏み込んだサポート業務もあります。
外来クラークは、外来診療(通院)の患者さんにまつわる事務業務を担当します。入退院の手続き以外は病棟クラークとほぼ同じで、医師から指示を受けてカルテを代行作成したり、診断書や検査結果などの文書作成をしたりと、書類やデータ関連業務がメインです。
メディカルアシスタントとの違い
医療事務に似た職種として、「メディカルアシスタント」があります。大きな違いは、医療事務は対患者さん、メディカルアシスタントは対医師や看護師、という点。メディカルアシスタントの役割は医師の事務作業をサポートすることで、仕事中は医師とのやりとりが中心となり、ナースステーションや診察室で勤務することがほとんどです。
<メディカルアシスタントの主な仕事内容>
- ・データ入力の代行(診療予約、検査・処置内容・診療記録の入力 など)
- ・入院患者の診療記録の代行作成
- ・各種診断書や意見書などの代行作成
医療事務に求められる能力・素質
医療事務に必要な能力や素質は、主に下記の3つです。
コミュニケーション能力
医療事務は、病院やクリニックの顔ともいえる役割があり、患者さんとのやりとりではていねいな接遇や言葉遣いを心がける必要があります。病気やけがなど、身体の不調を抱えている患者さんに対し、痛みや不安を理解した上で接することが重要です。また、医師や看護師からの指示を正確に理解する、医療機関のスタッフと協力して仕事を進める、といった協調性も求められます。
正確な処理能力
医療事務の仕事では、ほぼ毎回といっていいほどPCを使用します。病院やクリニックでは電子システムを利用しているところが多く、ミスなく、スピーディーに処理するPCスキルが求められます。
診療内容や医療保険の知識
医療行為に携わらないとしても、診療内容や医療保険制度についても知っておいたほうがよいでしょう。特にレセプト業務では、診療・検査の内容に基づいてデータを入力し、間違いがないかチェックする必要があります。診療・検査内容と医療保険を理解していれば、その分スムーズに業務を進めることができ、効率アップにもスキルアップにもつながります。
医療事務のやりがい
医療事務への転職を検討するに当たって、仕事のやりがいについても知っておくとよいでしょう。やりがいを感じられると、仕事のモチベーションにもつながります。
医療に貢献できる
医療事務が医療機関の事務仕事を担うことで、診療に集中できる環境が整えられたり、限られた時間内で効率良く診療を進められたりと、間接的に患者さんや医療関係者を支えられます。また、インフラとして社会を支えている医療機関で働くことにやりがいを感じている人も多いでしょう。
患者さんの笑顔を見られる
入院・通院で何度も顔を合わせる患者さんはもちろん、初診の方ともコミュニケーションを取る機会が多々あります。患者さんやその家族から、「ありがとう」「助かったよ」と言ってもらえると、その人の助けになれた実感を持てるでしょう。患者さんの笑顔を見ることができる機会があるのは、仕事の一番のやりがいと言えるかもしれません。
医療事務の厳しさ
医療事務はやりがいのある仕事ですが、大変さを感じることも少なくありません。医療事務の厳しさについて紹介します。
拘束時間の長さ、月末・月初の繁忙
実働時間は8時間ほどですが、中抜けや残業の時間を含めると拘束時間が長い傾向があります。医療事務の大まかなスケジュールは、開院前の準備・午前診療・昼休み・午後診療・翌日の準備、という流れです。医療機関によっては、午前と午後の診療の間(昼休みを含む)を2~3時間ほど空けているところがあり、これによって1日のトータルの拘束時間が長くなるのです。また、月末・月初は1日当たり1~2時間程度の残業が発生する場合があることを把握しておきましょう。
定期的に知識のアップデートが必要
医療事務の仕事は覚えなければならないことがたくさんありますが、医療事務ならではの専門性が求められるのがレセプト業務です。保険診療では料金の一部を患者さんが負担し、残りを健康保険組合などが負担するため、健康保険組合に診療報酬を請求するシステムになっています。診療報酬は通常2年に1度改定が行われますので、その都度改定内容をしっかり理解しなければならず、それが大変に感じる人も多くいます。
医療事務になるには?
医療業界の仕事であるため、未経験では仕事に就くのが難しいと考える人もいるかもしれません。しかし、未経験歓迎の求人も多く、コミュニケーションスキルなど、資格・経験をカバーするアピールポイントがあればチャレンジできる職種です。
資格は必須ではありませんが、保有していることで転職の評価材料になるケースもあります。有利になる資格としては、医療事務認定実務者、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)があります。
医療事務のキャリアパス
医療事務のキャリアパスとしては、役職を上げていく道と、ほかの職種へキャリアチェンジする道の2つが考えられます。
医療事務の中で役職を上げる
未経験から医療事務のキャリアをスタートした場合でも、何年も経験を積んでマネジメントスキルを身につければ、ゆくゆくはリーダーや主任、課長などの役職へキャリアアップできる可能性があります。総合病院に勤務する場合は、医事課や総務課など、管理に関わる役職に就ける可能性も見込めるでしょう。
ただし、医療事務を続けながら役職を上げていきたい場合は、管理や運営に関わるスキルなど、医療分野以外の専門知識が求められるため、経験を積みながら知識と技術の両方を幅広く習得していく必要があります。
ほかの職種への転職
一般事務や営業事務など、ほかの事務職へ転職する人も多くいます。また、身につけたスキルを活かして、まったく違う職種に就く場合もあります。例えば、PCスキルを活かして事業会社に転職したり、コミュニケーションスキルを活かして、コールセンターや販売職に転職したりする人もいます。
医療事務への転職に役立つ関連コンテンツ
ここまで医療事務という職種の実態について解説してきました。自分が医療事務として働く姿をより具体的にイメージしやすくなったのではないでしょうか。
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医療事務の年収
平均年収
平均年収
285.5万円
「事務/アシスタント」系職種の平均年収は333.1万円
「医療事務」の平均年収は285.5万円で、「事務/アシスタント」系11職種中11番目です。
年収分布
- この職種の平均
- 「事務/アシスタント」系職種の平均
未満
万円未満
万円未満
万円未満
万円未満
万円未満
万円未満
万円未満
以上
最も多い年収帯は300万円未満の59%で、次いで300万円台が32%、400万円台が7%となっています。
年間ボーナス
年間ボーナス
50.1万円
夏のボーナス…23.0万円
冬のボーナス…27.1万円
「医療事務」の年間ボーナスは50.1万円で、「事務/アシスタント」系11職種中11番目です。前年(2019年7月~2020年6月の1年間)のボーナスよりも1.8万円アップしました。
医療事務に転職した人はどんな人が多い?
転職年齢
転職年齢
28.2歳
「事務/アシスタント」系職種の平均年齢は29.2歳
- この職種の平均
- 「事務/アシスタント」系職種の平均
「医療事務」に転職した人の平均年齢は28.2歳です。「事務/アシスタント」系11職種中最も年齢が低くなっています。年齢の内訳を見ると最も多い年齢層は25~29歳で50%となっています。
前は何の仕事をしていた?
順位
職種
割合
-
1
20.0%
-
2
12.0%
-
2
12.0%
-
4
8.0%
-
4
8.0%
-
4
8.0%
転職前の職種も同じ「医療事務」が20.0%で最多ですが、「事務/アシスタント」系職種以外に転職したケースも見られます。
何回目の転職だった?
「医療事務」に転職したのがはじめてだった人が60%で最多となりました。
どんな資格を持っている?
順位
資格
割合
-
1
秘書技能検定2級
2.6%
-
2
医療事務技能者
2.3%
-
2
診療報酬請求事務能力認定
2.3%
-
4
日商簿記検定3級
2.2%
-
5
医療事務管理士
1.8%
「医療事務」になるために必須の資格はありませんが、さまざまな資格を取得している傾向が見られました。
TOEIC(R)スコアの平均は?
TOEIC
651.4点
「医療事務」におけるTOEIC(R)受験者の平均点は651.4点で、「事務/アシスタント」系11職種中11番目です。
医療事務からの転職
次に就いたのはどんな仕事?
順位
職種
割合
-
1
10.7%
-
2
8.9%
-
2
8.9%
-
4
7.1%
-
5
5.4%
「医療事務」の次に就いた職種は「テレマーケティング/カスタマーサポート/コールセンター」が10.7%で最多で、「事務/アシスタント」系職種以外に転職するケースも見られます。
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■平均年収、男女比、転職希望者の年齢
- 調査対象
- dodaサービスに登録した
ビジネスパーソン
- 調査期間
- 2020年7月~2021年6月
- 有効回答数
- 約700,000人
■TOEIC(R)テストの点数、持っている資格
- 調査対象
- dodaサービスに登録した
ビジネスパーソン
- 調査期間
- 2019年7月~2020年6月
- 有効回答数
- 約310,000人
■転職後の職種、転職した人の年齢、転職回数
- 調査対象
- dodaエージェントサービスを利用して転職した
ビジネスパーソン
- 調査期間
- 2020年7月~2021年6月
- 有効回答数
- 約26,000人
■冬のボーナス・夏のボーナス、残業時間、年間休日
- 調査対象
- 20~59歳、正社員のビジネスパーソン
- 調査方法
- ネットリサーチ会社を利用した
インターネット調査
(ネットリサーチ会社保有のデータベースを
元に実施、doda会員登録は不問)
- 調査期間
- 2021年8月
- 有効回答数
- 15,000人